東芝は、2009 International CESの会場で今後発売が予定されているテレビやPCに加え、将来的な方向性を示す技術展示も行っていた。
東芝は、新型テレビとして、Cellプロセッサを使ったテレビ「Cell TV」を秋にも発売する予定だが、さらに会場では56型のCell TVを展示。これは解像度をフルHDの1920×1080(2K1K)から3840×2160(4K2K)に変換して映像を表示する技術を投入している。
この技術は「Resolution+」と呼ばれ、フルHDの映像を4K2Kにアップコンバートする超解像技術によって、従来よりも細部の解像感などが向上する。さらに、LEDバックライトを用いた55型のCell TVも展示。テレビのさらなる高画質化をアピールしている。
Cell TV向けのチューナーユニット |
Resolution+を使ったリアルタイムのアップコンバートのデモ。DVDの映像を、同社の「クアッドコアHDプロセッサ」を使ってHD解像度にアップコンバートしている。左がアップコンバートしたもの。写真では分かりづらいが、解像感は向上している |
テレビのネットワークに関しては、テレビとプレイヤーを組み合わせた提案も行っている。PCのWindows Media Centerを使い、PC内のコンテンツをネットワークプレイヤーで参照してテレビに表示したり、テレビウィジェットを使ってネット上のビデオコンテンツや写真共有サイトの画像などをネットワークプレイヤーが受信して表示する、という仕組みになっている。
インタフェースの部分では、「Spatial Motion Interface(空間モーションインタフェース)」を参考出展。テレビ上に置かれたボックスから赤外線を照射して手の動きを認識し、テレビの操作性を向上させることを狙っている。
3D空間上に映像コンテンツを表示して、それが手の動きに合わせて拡大縮小、再生、早送りなどの操作が行えるようになっており、直感的に操作できるのが特徴だ。
ポイントは、赤外線で「手を認識していない」という点。以前から同社は、手の動きを検知させて、そのジェスチャーで操作を行うUIのデモを行っており、2008年の2008 International CESではPC向けで出展していた。
それに対して今回は、赤外線で手までの距離を測っており、実際には赤外線照射器から最も近いものを検出しているため、体の前に出したものなら、例えばノートやペンなどでも操作ができるようになっている。人の手を認識する必要がないため、処理が容易になっているのだという。手を動かすだけでなく、前後左右に体ごと動かすだけでも操作できるようだ。
ただ、通常の赤外線のように、照射器から手までの距離を測っているが、一般的なTime of Flight(TOF)と呼ばれる方法ではなく、別の手法を使っているということで、その手法については明らかにされなかった。
また、製品化を目指して開発を続けるが、現時点ではテレビと操作者の間を人が横切ると認識が中断するなどの問題があり、そうしたノイズの除去やもっと小さなモーションでも認識できるようにするなど、改良を加えていく考えだという。
UI関係では、テレビ番組やインターネットテレビ、録画したコンテンツの検索ナビゲーションのデモも行われていた。このデモでは、例えばEPGから番組を選択し、「Navigate」を選ぶと、EPGから取得したテレビ番組情報や録画した番組の情報などからサムネイルの形で番組を網羅。番組表から選択した番組を中心に置き、ジャンル、タイトル、人、キーワードの4項目から関連した番組をより中心に並べることで、興味のある番組を素早く探せるようになっており、さらにそこから別の番組を選ぶと、さらにその番組に関連する番組が近くに表示し直される仕組みとなっている。
EPGから番組を選択する |
ここでNavigateを選択 |
すると関連する映像が一覧表示される。サムネイルの画像がないのはまだ録画していないコンテンツで、それ以外は録画されたコンテンツ。テレビ放送もインターネットテレビも網羅される |
ほかにも、近接無線転送規格の「Transfer Jet」を使ったデモも展示。同規格は、3cm以内の距離で2つの機器を接続し、物理層で560Mbps、最大実効レートは375Mbpsの速度でデータを転送できる規格となっている。
デモでは、Windows Mobileを使ったビューワーとPCを組み合わせており、例えばPCに表示した地図をキャプチャーして取り込んだり、携帯内の画像を転送してスライドショー再生したりといった使い方が提案されていた。
ビューワーをリーダーに近づけるだけという簡単操作がメリットとされているほか、高速なので大容量データの送受信も気軽にできるのが特長。ただ、現時点では製品化などは明らかにされていない。
6,000回以上も充放電できる新型二次電池「SCiB」
東芝といえば燃料電池をしばしば出展していたが、今回は新型の二次電池「SCiB」を出展していた。
まだモックアップ段階のSCiBの外部電池。6,000回も繰り返し充放電してもなかなか「へたらない」のが特徴。将来的にはPCの内蔵バッテリへの導入を狙う。ちょっとした時間に、ほぼ満充電の90%まで充電できる |
SCiBは、リチウムイオン電池の一種だが、負極材を変えるなどしてパフォーマンスを向上させたもの。今回出展されていたのはノートPCの電源として利用することを想定したもので、10分間の充電で90%の充電が可能になっているという。従来、90%まで充電するためには90分必要だったとのことで、バッテリ切れの際も素早く充電できるというのがウリだ。
また、劣化にも強く、従来のリチウムイオンが500回の充放電で能力が30~50%も落ちるのに対し、SCiBでは6,000回の充放電を繰り返しても20%減に抑えられる。
急速充電と長寿命というメリットがあるのだが、課題は「容量が取りづらいこと」(同社)。容量を確保するためにはサイズが大きくならざるをえないというのが問題だそうだ。現時点では、10分で90%まで充電できた段階で、約4時間のバッテリ駆動時間を確保するのが目標だという。
そのほか同社のブースでは、防水性能を備え水につけても動作するインターネットビューワーや、画面とキーボードが分離したビューワー、手帳のリフィルに収まるネットワークステーショナリー、マルチタッチを利用したプレイヤー、SDカードにコンテンツを保存して再生するプレイヤーなど、さまざまな研究開発分野のデモも行われていた。