演劇界の巨匠・蜷川幸雄が井上ひさしの初期の傑作戯曲を演出した上川隆也主演の舞台『表裏源内蛙合戦』。昨年11月9日から12月4日まで東京・渋谷Bunkamuraシアターコクーンで公演されたステージから、WOWOWでは11月26日に行われた公演の模様を1月12日(10:30~14:40)に放送する。
1970年に初演された井上ひさし原作の『表裏源内蛙合戦』は、"エレキテル"の発明や"土用の丑の日"、"キャッチコピー"の発案で知られる江戸時代の天才・平賀源内の一代記。奔放な才能を開花させながら、当時の社会からは"奇人"と呼ばれた源内の才気や葛藤を、"表"と"裏"に二分されたキャラクターによる喜劇的合戦にのせて展開していく。出演は "表の源内"に、蜷川作品初出演となる上川隆也、"裏の源内"には蜷川作品に欠かせない存在の勝村政信。その他、高岡早紀、豊原功補、大石継太、六平直政、篠原ともえ、高橋努といった個性溢れるキャストが脇を固める。ちなみに主演の上川は、意外にも本作でシアターコクーン初登場。最高のスタッフとキャストが集結し、上演困難といわれてきた大作を、蜷川幸雄の演出によって甦らせた話題作だ。
時は享保14年、足軽の家に生まれた四方吉(上川隆也)は、松平藩の若君・頼恭(高橋努)の鬼役を命じられ、遊びや勉学の相手を務めることに。成長した四方吉は、名を平賀源内と改名し、官費で長崎に留学し、遊女・花扇(高岡早紀)と出会う。オランダ語や医学を学んだ源内は、本草学を究めるために今度は江戸へ留学。日本初の物産会を開いて大成功を収めた源内は、若手第一の本草学者となるが、幕府に仕官するために高松藩辞任を願う源内に、頼恭は源内の願いを受諾するものの、他藩への仕官を禁じる。出世の道を断たれた源内は蟄居の身となりながら、人々の考えも及ばないような新たな開発・発明を続けるのだが…。
平賀源内の生涯を舞台で描いたとあって、同作は4時間にも及ぶ超大作だ。そんな同作を一言で表すならば『時代劇ミュージカル』。江戸時代という時代背景をベースにしながら、ミュージカル風に音楽に載せて言葉遊びをする出演者たちは、実に優雅である。そんな舞台を通して、江戸の文化や世相などを垣間見ることができるのが、時代劇という堅苦しさはあるはずもなく、至るところで笑いを魅せるのも、蜷川作品の真骨頂。下ネタもスマートに見せ、大人が楽しめる作品に仕上がっている。キャスト陣の奮闘ぶりも見逃せない。特に主役を務めた上川は、舞台出身で演劇集団キャラメルボックスの看板俳優。蜷川作品に初挑戦した同作で、水を得た魚の如くその演技が随所で輝きを見せた。また、高岡早紀にも注目したい。遊女・花扇、妾の青茶婆を演じ、化粧を施して着物に身をまとった姿は、実に可憐で妖艶だ。