ヤマダ電機LABI品川大井町店 電子文具担当・欅尾慎二さん |
電子辞書の売り上げが毎年大きく伸びている。既に市場規模では紙の辞書を抜いており、電子辞書を片手に勉強したり本を読んだりする人の姿を街中の喫茶店となどでも見かけるようになったが、最近では授業に電子辞書の持ち込みを認める中学校や高校も少しずつ出てきており、辞書を引くという行為そのものが「ページをめくる」から「キーを押す」に変化しつつあると言える。
特に最新の機種は、単にキーを押して単語を調べる機能だけにとどまらず、さまざまな付加機能を備えているのが特徴だ。電器店の電子辞書売り場に行くと何十種類もの製品が並んでおり迷ってしまうが、売れ筋の機種はどんな点が人気を集めているのか、ヤマダ電機LABI品川大井町店で電子文具コーナーを担当する欅尾慎二さんに聞いた。
勉強で、ビジネスで、あるいは生活の中で電子辞書を活用し、2009年は一歩上の知的なデジタルライフを目指す年にしてみてはいかがだろうか。
価格には収録辞書の種類が大きく影響
単機能の機種なら1万円以下で手に入るものもある一方、高級機では5万円を超えるものもある電子辞書。ただ、何度も買い替えるものではないだけに単純に安い物が売れるということはなく、店頭で注目されるのも2万円台・3万円台の機種が中心だという。
価格を大きく左右するのが、収録されている辞書の種類だ。高校生向け機種の中での売れ筋商品として欅尾さんが紹介してくれた「エクスワード XD-SP4850」(カシオ計算機)は、2万円台半ばから3万円前後で販売されているモデルで、広辞苑の最新版である第六版をはじめ、ジーニアス英和辞典第4版、プログレッシブ和英中辞典第3版、英文法の参考書や各社会科教科の用語集など、全90コンテンツを収録している。
大学やビジネスで高度な英語学力を身につけようとしている人に人気というのが「XD-SP9500」(同)。収録本数は全50コンテンツとXD-SP4850に比べ少ないが、販売価格は1万円ほど高くなっている。これは、英語学習者の間で定評のあるオックスフォードの新英英辞典、類語辞典(第2版)、連語辞典や、口語や科学用語などに強いとされるリーダーズ英和辞典など、より専門性の高い辞書を収録しているためだ。
カシオの外国語電子辞書の最上級モデル「XD-GP9700」は、研究や翻訳などで英語を扱う専門家が必要とするランダムハウス英和大辞典第2版などを収録しており、価格は5万円前後と高額。しかし、紙の書籍では大型で扱いにくい大辞典をいつでも持ち歩くことができるため、このクラスの電子辞書の需要も決して小さくはない。
辞書の種類に応じて価格にかなりの違いがあるのに対して、これらの3機種では検索や発音といった機能はほぼ共通だ。いずれも、最近の電子辞書での人気機能となっている手書き入力用タッチパネルを搭載しているほか、内蔵スピーカーまたはヘッドフォンを利用したネイティブ発音機能はもちろん対応している。2万円以上の売れ筋機種の中から選ぶなら、どれを選んでも一通りの機能は搭載していると言えるだろう。
カラー液晶が売りのシャープ
最近の売り場で来店客の目を引いているのが、カラー液晶ディスプレイを搭載したシャープの「Brain」シリーズだ。ディスプレイのサイズや解像度は他社の売れ筋製品と同等だが、メニューや見出しなどが色分けされて表示されるので、見やすさが大幅にアップしている。また、紙の辞書を使っていたとき、覚えたい単語のところにマーカーで線を引くという使い方をした人は多いだろうが、カラー液晶とタッチパネルを活かし、画面を緑・黄・ピンクの3色でマーキングすることも可能になっているなど、白黒画面ではできない使い勝手を実現している。
白黒の機種に比べ、値段は当然高めになる。シャープのカラー電子辞書自体は2004年から販売されており、以前の製品が店頭に残っていれば比較的安価で購入できるが、同価格帯の白黒モデルに比べるとやはり収録コンテンツに物足りなさを感じることもある。また、白黒モデルに比べるとバッテリー駆動時間がかなり短いというのが従来の弱点だった。
2008年8月に新シリーズとして発売されたBrainの「PW-AC880」は100コンテンツを収録、バッテリーも同社従来製品の約3倍となる約80時間の連続表示が可能となり、一般的なユーザーが求める水準を十分上回る仕様となっている。PW-AC880は3万円前後で販売されており、競争力のある価格も実現した。
さらに、2008年12月に発売された最新製品の「PW-TC980」は、価格は4万円台と高いもののワンセグ受信機能を搭載している。ワンセグは最近の携帯電話なら多くの機種で見られるが、画面が5インチと携帯電話より大型で、卓上テレビ感覚で使うことができる。電子辞書なら、常に待ち受けにしておく必要のある携帯電話ほど電池切れを心配する必要がないこともメリットだ。
コンパクト機や、中国語特化モデルも人気
学校の勉強や資格取得のための学習に使うのではなく、ビジネスや生活の中でわからない言葉が出てきたときにちょっと調べたい、という目的の場合、持ち歩きが苦にならないサイズであることが求められる。とはいえ、特にビジネスシーンでは専門的な言葉を調べる必要があることも多く、サイズがコンパクトでも収録内容は充実している必要がある。
ビジネスパーソン向けの人気商品として紹介してもらったのが「SR-G7000M」(セイコーインスツル)。幅は12cm以下、奥行きは8cm以下、厚みは最厚部でも18.5mmと、ポケットやハンドバッグにもすっぽりと収まるコンパクト設計ながら、リーダーズ英和辞典第2版、オックスフォード現代英英辞典第7版など英語学習者向け専用モデルにも劣らない内容となっている。また、小型ながらVGA(640×480ドット)解像度の液晶を搭載しており、画面表示は精細で美しい。
これまで紹介してきた機種は、いずれも英語が外国語辞書の中心となっていたが、ここ数年ビジネスや観光で重要度の上がっている言語が中国語だ。それに伴って中国語の学習人口も増えているという。キヤノンの「wordtank」には中国語に特化した「Vシリーズ」が用意されており、最新機種の「wordtank V903」は、中国語関連の辞書・用例集だけでも15コンテンツを収録し、中国語向け電子辞書としては随一の内容となっている。
中国語・英語・日本語それぞれに大辞典クラスの辞書を収録し、中中辞書の現代漢語詞典第四版(2002年増補版)も備えるなど、中上級者の学習にも使用できる。また、一般的に中国語の学習は北京語が中心となることが多いが、上海語・広東語・台湾語の会話集も収録されており、北京語以外の中国語の入門書としても活用できる。