どこのテレビ局でも特別編成を組む年末年始。中でもWOWOWでは、今年も例年と同じように映画を重点的に放送する。最大の売りは、『メガヒット・セレクション~70時間大放送~』。その規模は、地上波とは比べようもないボリュームとラインナップである。WOWOWの制作局、映画部の河津孝宏氏に、そんな年末年始の編成戦略などを聞いてみた。
河津孝宏 |
WOWOWは、年末年始という期間を最重要期と捉えている。視聴者の在宅率が高い年末年始を考えると、番組の質によって加入者の増減が直結するWOWOWのようなペイテレビは、その傾向が顕著に現れるのだ。
河津孝宏氏(以下、河津) : 「普段お忙しくて観れないお客様にしっかりとWOWOWに楽しんでいただくためにも年末年始は重要な時期。歴代の年末年始編成は、特に力を入れています」
そんなWOWOWの年末年始特別編成で、開局以来、力を入れているジャンルが映画だ。映画部の河津氏も、年末年始の話になると自然に熱が帯びてくる。
河津 : 「WOWOWはある意味映画のデパート。どんな作品もWOWOWにあるというのが、開局以来変わらぬ軸としてあります。WOWOWのラインナップの一番いいところを年末年始に凝縮してお届けするというのが、年末年始の編成の柱ですね」
今年のおススメは、12月27日から1月4日にわたっておくる『メガヒット・セレクション~70時間大放送~』だという。かつては100時間もあったという年末年始の恒例企画だが、今年は『トランスフォーマー』(1日17:30~19:57)や『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』(31日17:20~20:20)などの豪華なラインナップでおくる。
河津 : 「その年のヒット作を中心に、ズラっと集めて一気に観せるのが『メガヒット・セレクション~70時間大放送~』。1本2時間と見積もって、30本ぐらいを放送する計算になります。単純に30本の映画を編成するだけなら簡単ですが、全国公開された大作・話題作から厳選したヒット作を投入できるのは日本でWOWOWだけ。他とは一番違うサービスを年末年始企画としてお届けします」
『メガヒット・セレクション~70時間大放送~』以外にも、『アイ・アム・レジェンド』(28日20:00~21:50)、『花よりもなほ』(1日20:00~22:10)や『母べえ』(4日20:00~22:15)といった邦画の注目作も目白押しだ。
河津 : 「メガヒット特集は毎年やっていることなので、今年ならではというと、『アイ・アム・レジェンド』が前半の盛り上がり。去年の洋画系では指折りのヒット作で、WOWOW初放送ですから。また、『新春日本映画スペシャル』としてお届けする日本映画も今年は目玉ですね。最近は、邦画が異常に強い傾向にあり、WOWOWのバランスも若干変わって、メジャー系の洋画とともにトップクラスの邦画も随時揃えるようになりました。後半の盛り上がりが、『母べえ』などの新春に放送する邦画になりますね」
映画部に配属して6年、映画の環境もここ数年で激変してきたと河津氏は語る。
河津 : 「今は邦画の調達が厳しいですね。他のメディアさんが出資しているので、そこを突破して年末年始の時期に獲得するのは大変なんですよ。なので、単体だけでなく、+αで交渉する訳です。他社さんが目的の作品+2、3作のパッケージを考えるとしたら、うちは作品+過去の作品20本を提示するとか。そういう感じである程度ビジネスのディールとして、膨らませてくというか、そういう部分も必要になってきます。膨らませ方もセンスというか、膨らませて買う以上、最終的にお客さんが楽しんでいただく作品を買わないと意味がないわけで、その辺がバランスとして両方必要ですね」
対する洋画のメジャー系は、深刻な問題も抱えているようだ。
河津 : 「メジャー系の映画は若干小粒になってきて、新しい洋画で注目するような作品がなかなか出てこない環境にあります。いかにWOWOWらしさや豪華さを出していくかということは、今年の場合、特にきつかったですね。この1、2年の洋画は本当に不作。邦画が元気なのでその分助かりますが、当初のWOWOWらしさを出すのは洋画系ですから。今のハリウッドは、余りにもお手軽にそこそこのヒットを狙うような空気が蔓延しています。今年のアメリカでは、『ダークナイト』が凄く大ヒットしました。日本では難しかった部分もありましたが、アメリカの興行ではかなりインパクトがあり、歴代1位にもなりました。ああいうのが出てくると攻めるマインドも出てくるとは思いますね」
そんな洋画メジャー系の新作は、メディアの規模が大きくなるごとに権利の時期が遅くなるという。つまり、公開から数カ月後にDVDリリース。そこから数カ月後にオンデマンド、その数カ月後でようやくWOWOWのようなペイテレビ、その後に地上波という順番だ。
河津 : 「洋画については他者とラインナップが重なる部分が出てきますが、WOWOW独占で調達している新作もかなりあります。今後もそういう作品を効果的にアピールして、「映画最強のWOWOW」というブランド構造をめざしたいですね」
気になる来年のおススメなども聞いてみた。
河津 : 「2月はアウォード月間で、アカデミー賞、グラミー賞の2大アウォードを生中継するという絶対他では放送できないスペシャル企画があります。すっかりWOWOWで人気ジャンルとなった海外ドラマも今年以上にご注目して下さい。サスペンスものばかりでなく、来年はよりバラエティーに富んだ作品を準備中です」