RIAが企業にもたらす価値
ティーゲル氏は、国内においては、政府関連、金融、製造、サービスなどを中心に、Livecycle ESを利用してPDFをベースとしたデータ管理基盤を構築するケースが増えているとする。また、最近では「紙からWeb、Webから動画」というコンテンツ市場のトレンドを受けて、放送局を中心としたビデオ・プロダクツ / ビデオ・コンテンツ関連企業がCreative Suiteを採用する動きも進んでいる。
その背景について、同氏は、「企業内で、ドキュメントに対する期待事項が変わってきた。最近では、情報を正確にリアルタイムに提示できるかということに加えて、情報を使いやすく、しかも、リッチでインタラクティブ性に富んだかたちで提示できるかが問われるようになってきた」と説明する。
そうしたなかでは、「いかに顧客やパートナーとエンケージし、顧客満足度を高めていくことができるかが課題」となる。ティーゲル氏によると、SAPと協業し、SAPのアプリケーションのフロントエンドでPDFフォームを利用する「Adobeインタラクティブフォーム」などを提供していることは、企業向けソリューションに対する同社の取り組みを示す典型例の1つとなっている。
そして、今後の展開の中心になるのが、FlashやAIRといったRIAソリューションだ。同社のRIAについては、これまで、経営コクピットへの採用や、顧客向けのネット・サービスのフロント・アプリケーションの提供など、導入事例が相次いで報告されている。FlashとPDFというプラットフォームの汎用性に加え、クリエイティブ関連のコミュニティとのつながり、開発・編集・配信のための環境の充実などが同社のRIA環境の大きな強みと言える。
ティーゲル氏は、「AIRは、エンタープライズ・システムに存在する数多くのコンテンツを、よりエキサイティングで、魅力的なかたちで、エンドユーザーに伝えることを可能にするものだ。当社にとっても、ユーザーにとっても、顧客中心の考え方をより一層進めることができるようになる」と話す。
"Write Once, Publish Anywhere"
また、ロイアコノ氏は、Flash / AIRをあらゆるスクリーン上で閲覧可能にするプロジェクト「Open Screen Project(OSP)」に触れながら、企業のコンピューティング環境にも影響を及ぼすことを示唆する。
OSPは、今年5月に発表され、現在は、プロジェクト参加企業内で仕様の検討が進められている段階だ。OSPでは、"Write Once, Run Anywhere"という標語が用いられているが、ロイアコノ氏によると、正確には「Javaで用いられた、Run Anywhereではなく、Publish Anywhereだ」という。
同氏は、JavaとFlashの違いとして、「Javaはできることが多すぎて、複数のプラットフォームの互換性、統一性を保つことが難しい」点を挙げ、そのため、OSPでは、過大にならずに、シンプルに実行できる環境を作ることを心がけているとする。
このことは、デスクトップPCから、ノートPC、モバイル機器、携帯電話など、さまざまな環境をサポートしなければならなくなった企業情報システムの開発を軽減することにつながる。また、リッチな表現を複数環境に展開することを容易にするということも期待できるというわけだ。
ティーゲル氏は、「モバイル機器や携帯電話の利用については、日本は先駆的な状況にある。OSPに対しては今後も引き続き力を入れていく。そうしたなかで、コンシューマー、企業ユーザー、パートナーと連携しながら、企業および組織におけるマルチメディア、コミュニケーション基盤の構築を提案していきたい」と語る。