米NVIDIAは17日(現地時間)、Intel Atomプロセッサ向け小型プラットフォーム「Ion Platform」(コードネーム)の投入を発表した。グラフィックス統合型チップセット(mGPU)「GeForce 9400M G」に、Atomプロセッサのサポートを追加することで実現した。詳細を同社ノートブックGPU担当ジェネラル・マネジャーのRene Haas氏より伺っているので、その内容をお届けしたい。
プラットフォームの概要
Atomを搭載したNetbookやNettopが好調であることは周知のとおり。ただ、価格やサイズとのトレードオフということもあり、その性能が必要最低限の水準でしかないというのも、よく知られている事実。Haas氏は「チップセットは(Atom)プロセッサほど良くない。不十分だ」と、特に現行チップセットのIntel 945GSE Expressの内蔵GPUが非力であることを指摘する。
Ion PlatformのGeForce 9400M Gは、チップ自体の機能は現在ノートブックPCなどに提供されている同一名称のチップと同等とされる。DirectX 10対応のかなり高い水準の3D性能を持つというだけでなく、デコードエンジンの充実やCUDAを利用した汎用コンピューティング処理の高速性から、CPUの性能を補う場面も期待できる。
NVIDIAによれば、Ion Platformは、3Dグラフィックスおよびビデオエンコーディングで従来比10倍の処理能力を備え、1080pのフルスペックHDビデオの再生、次世代クライアントOSであるMicrosoft Windows 7のフルサポートが可能とされている。
一方で、NetbookやNettopへの搭載となれば、高い性能を持つとはいえど、やはりサイズや消費電力、なによりコストが問題となる。まずサイズや消費電力についての細かい比較は以下に示すが、そこからNetbook向けを例に挙げると、1チップ構成の9400M Gは、ノースブリッジ+サウスブリッジ構成のIntel 945GSE比で55%のトータル実装面積を実現しており、消費電力の上昇は4%ほどに抑えられている。
あとは最大のポイントであろうコストだ。Haas氏は「魅力的な価格設定だ」と紹介する。Ion Platformでは、現在のAtom搭載のコンピュータが実現しているのと同様の399ドル付近の価格帯も可能だという。
さて、Ion Platformの性能や機能については非常に興味深いものがあるのだが、問題はその部分だけではないのかもしれない。Haas氏も「Intelの価格戦略は私も知っている」と語っていたが、Atom搭載の製品については、Intelがシステムに関するすべてを定義しいる。それはシステムの制約であり、システムの価格設定にも及ぶと見られる。
これまで、Atomを搭載したミニノートで、ディスクリートのGeForce GPUを追加したために、価格がいわゆるNetbookの価格帯から大きく外れてしまった製品があった。399ドルも可能という説明はあったのだが、Ion Platformの製品がNetbookと同一の価格帯で販売されるのかといえば、それは難しいことだろう。どうしても製品の価格は一段違ったものになるだろうと予想できる。そして、現状のAtom製品の盛り上がりの要因で大部分を占めているのは、"価格こそ全て"という考え方だ。
Haas氏は、それでも、「パフォーマンスは武器」と強調する。Ion Platformのリッチな体験に対するコストには妥当な範囲であり、ユーザーも納得するはずだというのだ。また、「Atomは良いプロセッサだ。メーカーは様々なやり方で、Atom製品のポジショニングを上げたり、さげたりできる」と述べる。ビジネスのひろがりからも、マーケットはIon Platformをプッシュするという見解だ。
また、Ion PlatformはNetbookやNettopだけではなく、All-in-oneデスクトップやフルサイズノートといったものまで、幅広いセグメントに向けて提供されることが説明されている。Celeronを搭載する599ドル~499ドルの低価格ノートパソコンのセグメントを、コストパフォーマンスに優れたIon Platform搭載ノートパソコンが置換してしまう可能性も視野に入っているのだとされた。
Ion Platformの投入は、現在のAtomのいくつかの制約に対して、「プレッシャーを与えるいい機会」なのだと、Haas氏は言う。同氏は「AtomとNVIDIAのチップセットが一緒になることによって、ダイナミクスが生まれる。それが大きな変化をもたらし、現在の制約はすべてクラッシュするかもしれない」と語っている。