太陽光発電の設置は、屋根に載るだけ載せればよいといった大ざっぱな感覚で扱えるものではない。菱田さんは、「屋根の形状やメーカーの違いなどによっても微妙に設置できる太陽電池の容量が違ってきますし屋根の角度や方角によっても発電量が違ってきます。ですから事前にきちんとした設計と発電シミュレーションを行う必要があります。そのうえで経済メリットをきちんと算出してもらい、導入の判断をするべき」という。せっかく高額な機器を導入するのだから、複数業者の見積もりやシミュレーションを比較し、メリットを最大化してくれる業者に依頼したいものだ。

太陽光発電システム業者の無料見積もり比較サイト「見積もり工場」

比較検討するにはまず、候補となる業者を複数集めなければならない。菱田さんによれば、現在のところ、太陽光発電システムを取り扱う会社の営業スタイルは、インターネットでの宣伝や、訪問販売が中心になっているという。 つまり、家の近所で店舗を見つけられる状況は多くはないということ。そんな中、まっとうな業者に接触する方法として、機器メーカーに特約店を紹介してもらうという手がある。ただしこの場合、メーカー側が特約店同士を競争させるのを嫌い、基本的には地域で1店舗しか紹介してもらえない。複数業者の見積もりやシミュレーションを比較する機会が極端に少ないといえるだろう。

太陽光発電の導入を望む消費者にとって利便性がよいとはいえない環境の中、有効と思われるのが太陽光発電システム業者の無料見積もり比較サイトだ。たとえば、「見積工場」は、匿名で複数の会社に問い合わせをしたり、概算見積もりを取ったりする場を提供している。200社を超える太陽光発電の販売・施工会社と提携しており、消費者からの依頼があれば、最多で5社まで紹介する。紹介を受けた消費者は業者と会うことなく、自宅の図面を郵送するだけで、概算見積もりや発電シミュレーションが得られる。

複数の会社のシステム設計プランを比較検討することで、不適切な価格での導入を回避しやすくなる。その安心感から同サイトは好評で、発足6年で1500件の成約が同サイトを介して行われたという。

どんな住まいにしたいのか、トータルで考えよう

既築住宅の場合、販売会社選びのほかに、気をつけなければならないのは屋根の重量が増えることによる耐震性への影響だ。古い家では太陽電池を載せる以前に耐震性に問題のある家が多く、その場合、耐震診断に基づく適切な補強を併せて行う必要がある。

また、住宅全体でのエコロジーを考えるとき、基本的な省エネルギー性は断熱性のレベルによることを忘れてはならない。家庭で使われるエネルギーの割合は、暖房が26%、冷房が2%を占めているが(出典:住環境計画研究所「家庭用エネルギー統計年報2005年版」)、古い戸建て住宅と最近の断熱性の高い住宅では、それらに費やすエネルギーの量がまったく違ってくる。断熱レベルの向上による省エネと、太陽光発電システムという創エネ機器の導入を同時に行い、ふつうに暮らしても省エネできる住宅を目指すのが理想といえる。

総じて、太陽光発電システムの導入は機器単体で考えるのではなく、住宅全体のこととしてとらえる視点が必要ということ。「最小限のパネル数で電気代を抑えられれば」と考えるか「搭載できる上限まで屋根にパネルを敷き詰めて、将来的に売電による収益を狙う」のかなど、システム導入によって何がしたいのかを、考えることが、設置の第一歩といえそうだ。