博報堂研究開発局は、消費トレンドの事例からその成功因子や時代観を分析したレポートを発表した。同時に、「2008年消費に関わる生活者調査」における「商品/サービス興味度ランキング」も紹介している。

このレポートは「ヒット因力2008-2009 不安を、funへ!」と題されたもの。原料高騰や金融危機、年金問題など、家計・経済の不安や社会への不安が噴出した2008年において、「逆風を追い風にする」新しい価値転換をヒット因力と捉えて事例を分析、15のキーワードにまとめた。

■「不安を、funへ!」転換する15のヒット因力

「足りない不安」⇒「プラス話材のヒット因力」で満足に転換 1. +エコ・健康の達成感
2. +2時間ファンタジー
3. +背景ドラマ
4. +お試し感
5. +劇画的アイコン
「過剰さへの不安」⇒「引き算・リセットのヒット因力」で満足に転換 6. 純・商品
7. 単・TPO
8. 脱・ネットワーク
9. 根・つなぎ
10. 懐・カルチャー
「わからない不安」⇒「規準を明確にするヒット因力」で満足に転換 11. 数値・履歴の明示
12. フォームの明示
13. 共敵の明示
14. 連携場の明示
15. 五感・体感の明示

例えば「+エコ・健康の達成感」は、高速バスや自転車、節約清涼グッズなどがヒットしたことから、節約・節制感がむしろ達成感・話題性というプラス方向に働いた点を成功因子と分析。また「数値・履歴の明示」では、能力検定や生産履歴表示など、偽装への不信・能力への不安から規準を明示して評価軸を作る動きが注目されたとしている。

また、具体的に「ヒット商品・売れ筋商品」などの事例の中から、消費者が興味を持った商品・サービスのベスト10を発表した。

■商品/サービス興味度ランキング

順位 商品・サービス名
1 家庭用フィットネスゲーム
2 ブルーレイディスク
3 北京五輪
4 エコノミーパソコン
5 ハイブリッドカー
6 アウトレットモール
7 プライベートブランド
8 世界最薄ノートパソコン
9 地元発ブランド
10 ゼロ飲料

節約志向の中で、「エコノミーパソコン」「アウトレットモール」など、必要なものをパフォーマンス良く手に入れられる事例が興味を集めた様子がうかがえる。1位の「家庭用フィットネスゲーム」は、節制が満足感につながりやすい「+エコ・健康の達成感」を象徴。「ブルーレイディスク」は規格が明確になったことで興味を集めたと考えられる。

これらの事例を先の「15のヒット因力」に還元すると、1位は「純・商品」(多機能・付加価値への支払いはムダ、本来の価値を吟味)、2位は「数値・履歴の明示」、3位は「共敵の明示」(メタボ、CO2など悪役をはっきりさせて退治を楽しむ)となった。

同社では、深刻な景気の後退が懸念される中、付加価値への欲求は抑制され、社会や生活の基礎的な価値の充実を求める傾向がより強くなると分析。しかし企業や生活者は、バブル崩壊後の幾多の経験から「ネガティブな環境にも工夫して付き合うことで、新しい価値を生み出すたくましさも備えているように感じられる」とまとめている。