--報道を見る限り、最近のSun Microsystemsの財務状況は、あまり芳しくないかと思います。フェローでもあるあなたから見て、最近のSunの経営状態はどう思えますか? また、以前からOSSによる収益モデルを標榜するSunですが、"OSSでどうやって儲けるんだ?"という疑問の声もあります。そうした中、今後もJavaをはじめとするOSSをビジネスの柱として据えていく姿勢に変わりはないのでしょうか。
現在のSunの経営状態は、この不気味な世界的経済不況に引きずられた空気を反映している。だが、実は財務状況は摩訶不思議というか…現在、Sunの株価はあまりに低すぎる(12月2日の時点で3.0ドル前後)のだが、キャッシュは30億ドル以上あるという状態なんだ。アナリストたちはSunの経営状況について、あれこれ言っているが、私はもともとアナリストの言うことはあまり信じていない。この金融不況を間際まで予想できなかった連中なんだから。
Sunの決算の数字を見ると、売上の15 - 20%を大手銀行などの金融機関に導入するハードウェアビジネスに依存している。もし私が1日だけ神様になれるとしたら、OSS以外のビジネスはすべて破棄するんだけどね。現在、Sunを支えているのは間違いなくOSSビジネスだし、そのビジネスはいたって健全な状態にある。
インタビューを終えて - "Javaの父"は健在なり
「Javaはレガシー入りか?」の質問に、やや気色ばんだ表情で強く否定したGosling氏。RubyやPythonなどの動的言語のJVM実装が進む一方で、その土台であるJavaこそがNo.1だと強く主張する。やはりJavaのアイコンは、何年経とうとこの人でなくてはいけない。多くの開発者を指揮する立場にある同氏だが、チームをまとめるコツは何? の質問に「Patience(忍耐)」とひとことだけ答えた。余人にはうかがい知れぬ苦労が垣間見えた瞬間だった。
13年のJavaの歴史の中で、多くの技術が生まれたが、JiniやJavaSpacesのように、コンセプト自体は斬新だったものの陽の目を見ることがなかったものもまた多い。今回、2007年のJavaOneで発表されて以来、ようやくJavaFXがリリースされる運びになったが、この後発のRIA環境がどう転ぶか、当分予断を許さないだろう。
だが、Sunへの風当たりが強い報道の一方で、今回のSun Tech Daysは基調講演、セッションともに多くの来場者を集め、活況を呈していた。Sunを取り囲んでいるビジネスの状況は他のITベンダ同様、きびしいものには違いないが、同社にはJava、OpenSolaris、MySQL、GlassFishなど数多くのOSSポートフォリオ、それを支えるコミュニティがある。Gosling氏が言うとおり、OSSビジネスが堅調に推移すれば、業績回復も遠くないはずだ。それにしても…Gosling氏が神様でなくてよかったと思っている人、Sunの社内外にけっこういるのでは。