コンシューマサービス部コンテンツ担当部長・原田由佳氏

1億台を突破し、市場が飽和しているといわれる携帯電話。NTTドコモのコンシューマサービス部コンテンツ担当部長の原田由佳氏も、iモードの利用者数も昨年と横ばいなっており、「今までの流れでは思うように行かない部分がある」と認める。原田氏は、携帯電話ビジネスに関するカンファレンス「MCF モバイルコンファレンス 2008(mobidec2008)」の特別講演として「iモードコンテンツのトレンドと今後」と題した講演を行い、今後のドコモの方向性を話した。

原田氏は冒頭、1999年2月に始まったiモードが間もなく10年に達することに触れ、「大きなワン・ツー・ワンのメディアになったかなと思っている」とコメント。iモードが生活のツールとして一定の地位を占めているとの認識を示す。

ただ、不況や販売奨励金の廃止にともなう端末販売の停滞もあって、利用者数の伸びは鈍化。昨年と比べても全体ではほぼ横ばいの数値になっている。ただ、生活情報や動画・音楽、趣味・スポーツの分野での利用者は若干増加しているほか、通信速度が高速なHSDPAを導入したこともあって「ユーザー1人あたりのページビューは増えている」(原田氏)という。

昨年9月と今年6月の比較。公式サイトのジャンル別ページビューでは、全体的に増加しているが、特にメール・コミュニティやゲームなどが増加

公式サイトのジャンル別ユニークユーザー数。生活情報や動画・音楽などが伸びている

有料サイトの利用では、特にエンターテインメント系、メール・コミュニティ系は「かなりの伸び」(同)を示しているそうで、今年9月の時点で売り上げは月間210億円に達し、まだ伸び続けているという。

有料コンテンツの月間の売り上げは、今年9月の段階で約210億円にも達している

パケ・ホーダイの利用率は若年層が多い

また、パケット定額制「パケ・ホーダイ」の利用が増加しており、FOMAユーザーの34%が利用。15~19才の若年層では7割弱が利用しているそうだ。30代、40代のユーザーは、2段階の定額制「パケ・ホーダイダブル」の利用者が増加しており、「パケ・ホーダイダブル導入の意味があった」(同)。

有料サイトの利用は男女ともに20代では70%が利用していた。男性の場合、30~40代では地図関連、パチンコ・パチスロ関連への登録が多いらしい。

有料メニューの登録状況

iモードユーザーの数は増加していないが、実際の利用率自体は増加傾向にあり、有料コンテンツの利用も増えている、というのが原田氏の論調だ。それを踏まえて原田氏はドコモの取り組みを解説する。

「(ドコモが)一番やらなければいけないのはポータルの部分」と原田氏。デザインを改善し、ジャンルの分け方を細分化したり、新たなジャンルを追加したりするなど、利用者がより使いやすいようにし、メニューをたどってコンテンツにアクセスしやすくした。

ドコモが改変したメニューリスト

また、最近伸びているのは検索を使うユーザーだ。ドコモでは今年 月から検索エンジンとしてGoogleを採用。開始当初に比べて利用が4倍に伸びているという。原田氏は「利用者数が増えたかどうかは把握していない」としつつ、検索数字対は増加しており、「(メニューをたどるのではなく)検索して(コンテンツに)アプローチする流れができている」と指摘する。

検索が伸びた結果、ユーザーニーズの把握にもつながっており、その中で企業名やサービス名を入力するユーザーが多いことが分かった。しかし、そうした企業の中にはサイトの携帯対応していない企業が検索された企業の上位2割弱しか携帯対応していなかったそうだ。

企業サイトの増加にも注力

掲載企業が増え、アクセスするユーザー数も増加

このためドコモでは、今年4月に企業・ブランドチャンネルを新設。企業債との携帯対応を促しているという。食品、飲料、小売り関連の企業へのアクセスが多く、ユニークユーザー数は増加を続けているとのことで、今後は現実に店舗を構える企業の誘致も強化していく方針だ。

携帯サイトからのショッピング利用の拡大を狙い、「ケータイ払い」の利用上限額を増やしたのも施策の1つ。商品の購入代金を携帯の利用料金とあわせて支払う仕組みだが、この上限を1万円から2万円に拡大したことで、より高額な商品も手軽に購入できるようにし、サイト側の売り上げアップにつなげたい考えだ。

ケータイ払いの仕組み

売上高も順調に伸びている

また、有料サイトの利用にお試し期間を設け、期間中の解約を無料にすることで一部のサイトでは、従来有料登録する割合が3~8%だったところ、16%まで上昇し、会員数も23%増加したという。

お試しマイメニューの導入でユーザー数が伸びたサイトもある

ほかにも、今回の秋冬端末からiアプリ上からマイメニュー登録ができるようにしたり、iチャネルの動画対応、端末1台につき週に2番組しか配信できないミュージック&ビデオで、1番組あたり1日1チャンネルを配信できるようにし、実質的に週7本の番組を配信できるようにするなど、さまざまな工夫を実施している。

各チャンネルに付き、1週間分の番組を設定可能になった

「IP(インフォメーションサービスプロバイダー)のビジネスを活性化するためにはポータルをよくしなければいけない。リコメンドの強化や、ユーザーが次も使いたくなるインタフェースの工夫を継続して取り組んでいく」と原田氏は言う。

コンテンツに関しては、家庭用ゲーム機向けゲームの携帯版でオリジナルストーリーを提供、オンラインゲームのようなアイテム課金のゲーム、アーケードゲームとの連携といった、「携帯ならではのゲーム」(同)が人気を集めているという。

また、異なるジャンルの企業などとのコラボレーションに相乗効果があるのではないかと原田氏は指摘する。

コラボレーションの例。顔ちぇき!とニッセンがコラボ

秋冬モデルからのiコンシェル、iウィジェット、iアプリオンライン、iアバターといったサービスも、ユーザーの利便性や楽しみを増やし、そこに配信されるコンテンツの利用を増大させることを狙っている。

原田氏は、携帯のサービスがおサイフケータイや地図アプリのように「リアルの場に出ていくというアプローチ」に向かっているとし、リアルのサービスを提供する企業とのコラボレーションが市場拡大につながると予想し、ドコモ側はポータルやサービスのインタフェース改善でコンテンツへのアクセスが増えるような取り組みを続けていく考えを示した。