コクヨは17日、東京・六本木のアクシスギャラリーで「コクヨデザインアワード2008」の表彰式を開催し、受賞作品を発表した。国内外から応募された合計1,240点(国内970点、海外270点)の中から、優秀賞4作品、特別賞5作品が選ばれたが、グランプリは該当作品無しという結果になった。
同賞は、ステーショナリー、ファニチャー、その他生活用品を対象に、使い手ならではの発想から生まれるアイデアを募集し、商品化を目指すコンペティションとして2002年に創設された。7回目となる今回のテーマは「炭素」。難解で奥深いテーマだけに、グランプリにふさわしい飛びぬけた作品が現れなかったと審査員は評する。一方で、全体のレベルは非常に高かったという。以下、受賞作品を紹介しよう。
優秀賞「ガームテープ」三人一組(相原和弘・吉田智哉・齋藤美帆)
炭素構造のような六角形の切り込みを入れたガムテープ。凹凸や広い面積など、用途に合わせて自在に伸びて、しっかりと粘着するという。三人一組は、昨年度のグランプリ受賞者。受賞作の「紙キレ」は、すでに商品化されている。「三次元的なラッピングに可能性を感じる」、「切り込みを広げたときの形が美しい」、「使用していると新たな発見が生まれそう」など、審査員からは大変好評を得た。
優秀賞「Magic Carbon」 セ・シュン
中国からの応募作。お化けのような形をしたマグネットケースで、内蔵された磁石によってデスク上に散らばったクリップや画鋲を吸い込んで回収する。なぜお化けなのかという意見もある中、「一見キャラクター商品のようだが、成熟したデザイン」、「クリップやピンを『回収』して『取り出す』という二つの機能をシンプルに解決」、「回収するものを内側に吸い込んでいくデザインがおもしろい」などの点で好評を博したという。
優秀賞「Red animal arayon」南政宏
絶滅危惧種の動物を立体的にかたどった黒いクレヨン。赤と黒の強烈な色彩のパッケージで、環境問題を強く訴えている。世界一の古代湖である琵琶湖を見ていて、アイディアが浮かんだという。審査員からは「生命活動を基礎とする地球規模の炭素循環に思いを馳せる壮大な作品」、「子どもも大人も欲しくなる」、「子どもにはかわいい文具、大人には教育アイテムとして」などの評が出た。
優秀賞「おれせん」 FREQUENCE(大杉和美・廣田茂雄・福田龍・森田直)
インデックス機能を持った折込式の付箋。従来の付箋では見苦しくなりがちな小口をラインの色で記すことで、本をきれいに見せながら情報を整理できる。ありそうで、なかった付箋だ。「すぐに使いたい、実用性に優れた作品」、「付箋が進化した」、「見た目にスマートな仕上がり」など、審査員にも好評で、すぐにでも商品化が可能ではとの期待の声が聞かれた。
山中俊治賞 「WOOD STICK」 坂田佐武郎
鉛筆削りに長いガラス製の筒をつけて削りクズが見えるようにした鉛筆削り器。ふだんは何気なく捨ててしまうゴミを見せることで、モノの循環やリサイクルを意識させるデザインだ。山中氏は「鉛筆を削る行為及び時間経過を視覚化した」と評している。
佐藤オオキ賞 「けずりん坊」 江畑潤
削ると、断面から顔の表情が生まれる鉛筆。削る角度で表情が変わり、モノへの愛情、大切にしたい気持ちを芽生えさせるという。江畑氏は受賞者中最年少となる20歳の大学生。佐藤氏は「鉛筆自体のキャラクター性が獲得できている」と授賞理由を語っている。
柴田文江賞 「ONE COIN BAND」 川瀬隆智
輪ゴムの伸縮機能に、吸盤、つまみ機能を持たせた。ちょっと壁に吸いつけておいたり、輪ゴムのようにとめてときにつまんだり、多様な使い方ができる。「デザインと表現の完成度の高さ、商品になったときの魅力」が高く評価されたという。
水野学賞 「のびせん」 久松広和
付箋に切込みが入ることで、自由に伸び縮みする。気になった箇所を指し示すことが可能だ。「長さが決っているという従来の付箋の短所を大胆なアイデアで解消した秀逸な作品」と評され受賞。
コクヨ賞 「C_NOTE」 高橋喜人
コピー用紙を挟んでノートにするカーボンファイバー製クリップ。身近な紙をノートにすることで、CO2やコストを削減する。ノートの罫線をウェブサイトからダウンロードできるなど、トータルなシステムが環境への新しい提案として評価された。
なお、同賞からは、これまでに28カ所も角があり消しやすい消しゴム「カドケシ」、卓上に置いたまま身体のさまざまな部位で押せるホッチキス「たまほっち」、上半分と下半分が逆方向に斜めカットされてめくりやすいノート「paracuruno(パラクルノ)」などの新商品が誕生している。今回の受賞作の中からも、便利で楽しい新商品が登場することが期待される。
作品写真撮影=松本のりこ