『踊る大捜査線』シリーズの製作チームが、これまで描かれることのなかった「容疑者家族の保護」に焦点を当てた映画『誰も守ってくれない』。その完成会見が10日、東京・六本木でおこなわれ、主演の佐藤浩市、志田未来ら出演者が出席した。

会見に出席した俳優陣。写真左から柳葉敏郎、志田未来、佐藤浩市、松田龍平、石田ゆり子、佐野史郎

本作は第32回モントリオール世界映画祭で最優秀脚本賞を受賞したことでも話題に。暗い過去を抱えながら容疑者家族の保護にあたる刑事・勝浦卓美を演じた佐藤は、「僕も1人の父親として家族を守っているつもりだけど、もしかしたら自分自身が家族にとって刃になるかもしれない。映画の撮影を終えた後、家族を守るとはどういうことなのか、あらためて考えさせられました」と話した。

志田が演じるのは、兄が殺人事件の容疑者となり、人生が一変する少女・船村沙織。「お芝居の最中は、つねに包み込んでくれる感じがして、すごく安心しながらお芝居をすることができました」と、今回が2度目の共演となる佐藤の印象を語った彼女。伊豆で行われたロケではこんなエピソードも。「街中で、前の方から男の人が歩いてくるなあ……と思っていたら、それが浩市さんだったんですよ。でも本当に気付かなくて。それくらい街に溶け込んでいるのが、俳優さんなのにすごいなと思いました (笑)」。

ある日突然、ごく平凡な家庭である船村家の長男が殺人容疑で逮捕される。刑事・勝浦(佐藤)は突如、その容疑者家族の保護を命じられる。いったい何から守るのかもわからないまま、船村家へ向かった勝浦だったが、そこで彼は、家を取り囲む、新聞記者、レポーター、カメラマンを目の当たりにする。家族三人はバラバラに保護されることとなり、勝浦は娘の沙織(志田)を担当することに

本作では被害者の家族をも徹底的に糾弾し、執拗に居場所を探し当ててくるマスコミの姿も描かれている。それだけに、報道陣からは「プライベートに立ち入ってまで追いかける記者をどう思うか?」との質問が。これに対し、柳葉敏郎が苦笑いを浮かべながら、「生意気を言いますが……、最低です(笑)。世の中のモラルはどこへ行ったのでしょうか?」、佐野史郎が「昔、スポーツ新聞に『今日の●●』と、自分が演じた役名で載ってたことがあって。さすがに『もっと他に書くことがあるんじゃないの?』と思いました」など、思わず本音が漏れる場面も。

マスコミの在り方に苦言を呈した柳葉敏郎(左)と佐野史郎(右)

そんな中、「僕みたいな不埒(ふらち)な男は、マスコミの存在が自分にとっての"モラルハザード"になってるのではないかと思います」とコメントした佐藤だったが、「おかげさまで道を踏みハ、外さずに……」と、大事なところで噛んでしまうミス。「そう思ってないのかな…… (笑)」と反省しきりだった。

製作を担当したフジテレビの亀山千広プロデューサーは、「マスコミのこと以上に僕が描きたかったのは、こうした事件でインターネット上の中傷が激しくなること。この映画では、新聞記者ですら追い付けないほどのネットの速さ、過激さも描いています」とコメント。

勝浦(佐藤)と同僚の刑事を演じた松田龍平。撮影で最も記憶に残った出来事について、「伊豆での撮影が終わった日に、きれいな夕日を見ることができて、すごくほっとしました

敏腕新聞記者を演じる佐々木蔵之介は、今回が佐藤と初共演。「ご一緒できると聞いてうれしかったんですけど、実際に共演したのは1シーンだけでした(笑)」

本作では、マスコミの執拗な追跡とネットでの中傷によって追い詰められる勝浦(佐藤)と沙織(志田)を中心に、いま置かれている問題点や矛盾点が浮き彫りに。しかし見終わった後、誰もが希望が持てるような作品に仕上がっているとか。

『誰も守ってくれない』は、2009年1月24日より全国東宝系にて公開。

逃げる勝浦と沙織を、執拗なマスコミとネットの掲示板がどこまでも追い詰める
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