――日本市場をどのように捉えられていますか?
「これは注意深く答えたいと思います。というのも、私自身は相違点よりも類似性を見るようにするからなんです。ですから、日本であれ米国であれヨーロッパであれ、ユニバーサルなランゲージがデザインにもあると思っています。とはいえユニバーサルな共通性はあるものの、その上に各国、各地域の特殊性が加わっていると見ています。私が日本に思う印象は、やはり『詳細にこだわる』、『品質にこだわる』ということです。たとえば、私のお気に入りの例でトラッピングの話を挙げましょう。欧米では、印刷を早く、効率的に仕上げるため日常的にトラッピング処理を施します。その常識を持って日本で顧客訪問をしたとき、印刷会社で『トラッピングはどうですか』と聞くと『そんなものは必要ありません。私たちにはコントロールがあり、品質がありますので』と言われました。実際、スピードや効率を考えてトラッピングを施す必要など日本ではなかったんです。これは日本人が品質にこだわる気質を持っているという一端を表していると思います。ただし、クリエイティビティについては共通性も多いです。とくにデザイナーが望むことは各国で変わりません。アドビのソフトウェアがユニバーサル化することによって、私自身もメリットを享受しています。たとえば、十数年前に日本の著名なデザイナーの作品をデータで見ることはとても困難なことでした。今は、シアトルの書店に行けば日本のデザインが溢れています。インターネットを活用すれば、リアルタイムでコラボレーションもできる。こうしたことは非常にエキサイティングだと思います」