A8電媒音楽が香港で上場、新たな望みもたらす
音楽産業が中国全体の経済発展の波に乗り切れないでいたところに、音楽ビジネスの革新と転換を目指すデジタル音楽企業のA8電媒音楽が現れ、その香港での上場が音楽市場にわずかな望みをもたらした。
同社は、A8オリジナル音楽インタラクティブプラットフォーム(www.a8.com)を通じて海外と中国国内のレコード会社にそのコンテンツを配信し、主に無線ネットワークを通じて販売するのが特徴だ。
しかし、A8電媒音楽の上場が音楽産業に新風を吹き込み、新たな機運、本物のトレンドをもたらしてくれるかどうかはまだわからない。同社が市場で資本を調達できれば、音楽産業の低迷状況を打破し、健康的な成長への道が開けるのだろうか。
これは、音楽産業の転換過程における一か八かの選択かもしれない。資本調達は、近年来経営難に喘いできた多くの音楽関連企業にとって、なんとしてもすがりたい救いの神なのだ。ただしこの恩恵は、一時的に産業の息をつなぐことにはなるだろうが、産業全体が成長しつづけるには、確固としたビジネスモデルの確立が求められる。
無料ダウンロードサービスがレコード業界に打撃
インターネットのネットワークは、いまや音楽の伝播と産業の成長を促進する最大のインフラストラクチャーだ。デジタル音楽は多くの楽曲提供者や音楽事業従事者に発展のプラットフォームを提供すると同時に、音楽の加工、伝播、取引などの面で測り知れない利便性を提供し続けている。
しかし、最も大事な問題が最初からなおざりにされていた。それは、無料ダウンロードサイトの問題であり、知的財産権に対する侵害だ。長年海賊版CDの洗礼を受けた後の今日、無料ダウンロードサイトは、海賊版CDよりさらに深刻な脅威を中国のレコード産業界に与えている。
こうした中で、新たな法律や法規を制定し、中国の音楽産業を規範化して保護することが急務となっている。ネットワークでの有料ダウンロードサービスに関しては、それほど複雑な問題ではない。肝心なのはルールで、拠るべき法律法規をどうするか、ということなのだ。
一方、ネットワークでの音楽ダウンロードの普及は音楽の伝播を加速させ、メディア端末の多様化も促した一方、従来のレコード産業を押しつぶしてしまった。レコードからネットワークへという劇的な変化、音楽ダウンロードへの転換の代価はあまりにも大きかった。
ここ数年来、中国国内のレコード業界は、ただでさえ不景気の中を喘いできた。インターネットの出現は、新たな音楽メディアプラットフォーム環境を提供し、ショートメッセージ、写真付きメール、着信メロディ、WAP、IVR(Interactive Voice Response、音声応答システム)などまで含めたインターネットでの全方位的音楽供給サービスを現実化した。
しかし、一見繁栄を謳歌するかに見えるその背後で、実際に音楽業界従事者が得られている利益はほんのわずかだ。彼らには保証もなければ、退路もない。堅持するには希望が必要で、希望すらなければ最終的には自滅し、不公平な発展を呪いつつ、消えゆくしかないだろう。
上場にしても融資にしても、それらはいずれも手段であって目的ではない。市場ニーズにあった法律法規が整備され、ビジネスモデルがあり、消費者に喜んで買ってもらえる商品のラインナップがなければ、中国の音楽市場には取り返しの付かない断層、亀裂が生まれ、今後も「酸素ボンベ(=上場や融資)で生命を維持する」しかなくなるだろう。中国の音楽産業はいま、生死の境にいるといっても過言でないのである。