今年1月13日夜、中国最大の携帯キャリアである中国移動(チャイナモバイル)主催の「第2回無線音楽年度盛典」が上海で行われた。台湾歌手の周傑倫が一人で4つの大賞を獲得し、最大の話題となった。今回は賞の大半が周、陳奕迅、蔡依林、S.H.Eなど、香港や台湾の歌手に独占される形となった。

合理的になってきた中国のエンターテインメント業界

授賞式が行われる過程で、最も注目を集めたのは各賞に関連する一連の販売数字だった。実は中国ではこれまで、「音楽売上高」の概念がなかった。中国の音楽業界では従来のレコード販売において売上高の統計がなかったのだ。

ポータルサイト「騰迅網」を運営する騰迅が主催した「2007星光大典」の際も、すべての賞の判定基準は、ネチズンによる投票に基づくものだった。また、中国最大の検索エンジンサービス「百度」を提供する百度も、検索数のランキングに基づいた「2007年百度娯楽沸点年度賞授賞式」を開催した。

百度は、1億7,200万人のネチズンからの回答と、昨年度のもっとも信憑性の高いデータに基づき、30項目にわたる娯楽大賞を選び出した。このように、最近の中国では、ようやく実際のデータに基づくランキングが主流となってきており、この点でエンターテイメント業界は合理的になってきているといえる。

2007年を振り返ってみると、「低調」と「転換」が音楽業界全体の基調だった。数曲しかヒットせず、新たなビジネスモデルの確立が進まないままでは、音楽市場そのものが縮小していくことが懸念されている。本稿では、中国音楽産業の現状と今後の見通しについて検討してみたいと思う。