イー・モバイルは6日、国内で初めて上り速度を高速化した「HSUPA」対応サービスを11月20日から開始すると発表した。同時に、HSUPAに対応したデータ通信用端末3モデルも発売する。利用料金は従来と同じで変更はない。

上り速度が従来比約3倍に

HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)は、3G携帯電話W-CDMAの高速化規格「HSDPA(High-Speed Downlink Packet Access)」が下り速度の増速であるのに対し、上り速度を向上させるための規格。

Webサイトの閲覧時などでは大きく影響しないが、例えば動画共有サイトや画像投稿サイトへの動画や画像のアップロード時、ストレージサービスへのファイルの保存時、インスタントメッセンジャーなどでのファイル送信時など、大きなファイルのやりとりに威力を発揮する。

上り速度が増速したことによって便利になるサービス

同社の執行役員副社長阿部基成氏は、「ストレージサービスはあまり活用されていなかったが、(ノートPCを)持ち歩いて(ファイルを)ストレージサービスに保存するのが(HSUPAで)使いやすくなるのではないか」と指摘する。

HSUPA対応端末を挿したネットブックを手にする阿部基成副社長。今後もネットブックとの抱き合わせ販売は続けていく意向だという

例えばインスタントメッセンジャーで画像を送信した場合。2MBの画像が14秒程度で送信できた(同社の実験環境でのテスト)

同社の実験環境での速度テスト。実験環境ということもあり、規格上限に近い1.3Mbps以上の上り速度。下り速度も4.6Mbpsと高速

発表会場(東京・虎ノ門)でのテスト結果は上り1.25Mbps

現時点で、HSDPAに対応したイー・モバイルのエリアや端末では、下り最大7.2Mbps、上り最大384kbpsの通信速度が利用できるが、HSUPAに対応することで上り速度は最大1.4Mbpsまで増速する。規格上は5.2Mbpsまで対応しているが、早期の導入を優先し、まずは1.4Mbpsからサービスを開始する。

HSUPAに対応したサービスエリアは、当初都市部や人口密集地から対応を開始。11月現在で同社の人口カバー率は約85%(ローミングを除く)で、そのうち当初は40%程度のカバー率からスタートし、早期に60~70%まで引き上げたい考えだ。

また、今後より高速なHSUPAが利用可能になった場合はそちらへも対応していく意向で、HSUPA対応基地局のソフトウェアバージョンアップで対応できる見込み。

阿部副社長は、HSUPAのサポートエリアでは「込んでいるエリアでも(従来サービスの上り速度)384kbpsの倍ぐらいは最低でも保っていけるようにしたい」と話し、より高速な上り速度実現に向けて取り組む姿勢を示した。

利用料金は従来と同じ価格帯になり、例えば「年とく」を利用した場合、料金は1,000~4,980円の定額料金で利用できる。

HSUPA対応の3機種

HSUPAのサービス開始に合わせ、イー・モバイルでは対応のデータ通信用端末3機種を発売する。

HSUPA対応端末3モデル(左からD21LC、D21HW、D21NE)

USBスティック型の端末「D21HW」(中国Huawei Technologies製)は、HSDPA/HSUPAに対応したUSB接続型のデータ通信端末。USB端子部が回転することで場所を取らず、スマートに利用できる。高感度ダイバシティアンテナを採用することで移動時にも安定した通信が可能だという。

D21HW

対応OSはWindows XP/Vista、Mac OS X。Windows OS利用時にはインストール作業が不要な「ゼロインストール」もサポートする。通信方式はW-CDMA、HSPA 1.7/2.1GHz。

PCに接続したところ

端子部が回転するので、接続時も邪魔にならない

発売は11月20日で、価格は「ベーシック」で36,980円、「新にねん」で12,980円。

サイズ 約28(W)×10(H)×92(D)mm
質量 約25g
カラーバリエーション シルバー
通信方式 W-CDMA/HSPA(1.7/2.1GHz)
日本国内ではW-CDMA/HSPA(1.7GHz)のみ
通信速度 下り最大7.2Mbps/上り最大1.4Mbps
インタフェース USB2.0準拠
対応OS Windows Vista 32bit/64bit、Windows XP Professional/Home Edition SP 2以降、Mac OS X 10.4.~10.5

HSUPA対応端末「D21LC」(中国Longcheer Technology製)は、HSDPA対応のUSBスティック型端末「D12LC」のバージョンアップ版で、新たにHSUPAに対応した。

D21LC

PCに接続したところ

軽量・コンパクトなサイズで、PCのUSB端子に直接接続して利用する。microSDカードスロットを備え、最大4GBまでのmicroSDHCカードにデータを保存することもできる。

対応OSはWindows XP/Vista、Mac OS Xで、Windows OSの場合のみインストール作業の負担が軽減される「ゼロインストール」に対応する。

発売は11月20日で、当初はマットブラックから発売する。価格は「ベーシック」で36,980円、「新にねん」で12,980円。

サイズ 約27(W)×13.2(H)×85(D)mm
質量 約30g
カラーバリエーション マットブラック、インディゴブルー
通信方式 W-CDMA/HSPA(1.7/2.1GHz)、GSM 900/1800/1900MHz
日本国内ではW-CDMA/HSPA(1.7GHz)のみ
通信速度 下り最大7.2Mbps/上り最大1.4Mbps
インタフェース USB2.0準拠
カードスロット microSDカードスロット×1
microSDHCは最大4GB、microSDは最大2GB
対応OS Windows Vista 32bit/64bit、Windows XP Professional/Home Edition SP 2以降、Mac OS X 10.4.~10.5

PCカードタイプの「D21NE」(NECインフロンティア製)は、PCMCIAカードスロットを利用するデータカード。HSDPA対応端末の「D02NE」よりも小型化し、同社のPCカードタイプの端末では最小を実現。

D21NEをPCに挿入したところ

高感度ダイバシティアンテナを採用したことで移動時も安定した通信が可能だという。アンテナは360度の可動式。専用の収納ケースも同梱される。

発売は12月上旬の予定で、価格は「ベーシック」で36,980円、「新にねん」で12,980円。

サイズ 約54(W)×110(H)×8(D)mm
質量 約50g
カラーバリエーション ホワイト
通信方式 W-CDMA/HSPA 1.7GHz
通信速度 下り最大7.2Mbps/上り最大1.4Mbps
インタフェース PCカードType II
対応OS Windows Vista 32bit/64bit、Windows XP Professional/Home Edition SP 2以降