NTTドコモ 山田隆持社長

NTTドコモは、2008年度中間期の連結決算を発表した。売上高は対前年同期比2.5%減の2兆2,678億円、営業利益は同41.2%増の5,769億円、税引前利益は同36.3%増の5,602億円、当期純利益は同40.6%増の3,467億円で減収ながら大幅な増益となった。新しい販売方式により、端末販売は減ったもののパケットARPU(Average Revenue Per User : 契約者1人当たりの平均収入)が増加するとともに、代理店手数料など販売費用が減少したことなどが貢献した。一方、端末販売数と売上高の下方修正も発表した。

営業利益の、通期見通しに対する進捗率は69.5%に達している。「ファミ割MAX50」「ひとりでも割」などの新たな割引サービスと、割賦形式を採用した新たな販売モデル「バリューコース」という「ビジネスの車の両輪」(山田隆持社長)は、着実に浸透してきており、これら新しい割引サービスの契約率は50%を、バリューコースの選択率は90%を超えている。解約率は0.51%にまで下がり、山田社長は「おおむね順調な決算」と評する。

営業利益は4割増加した

新たな割引サービス・販売モデルが「ビジネスの車の両輪」

端末の総販売数は、販売方式の変更の影響で下降している。上期には1,026万台となっており、前年同期比で実に19.8%も減少した。しかし、「車の両輪」が効果を挙げた。販売減などにより、携帯電話収入は対前年同期比で1,947億円の減だった。だが、端末価格を高くする代わりに通信料金を安くする、新販売モデルでは基本的に代理店手数料がかからないため、代理店手数料が664億円減った。さらに販売減で端末機器原価も1,614億円減り、営業費用はあわせて2,258億円減少、これが営業利益を押し上げた。

今年度通期の業績予想見直しについては、まず総合ARPUを5,640円から5,710円に上方修正したことにより、携帯電話収入が当初予想比で440億円増の見込み。端末総販売数は当初予想比15%程度の減、端末機器原価は同じく1,940億円の減、代理店手数料も同50億円の減、端末販売収入は1,970億円の減を見込んでいる。また、2012年7月に現在の周波数帯の使用期限を迎える予定の第2世代携帯電話「mova(ムーバ)」関連施設などを2008年度中に繰り上げ償却するため、減価償却費が310億円増える。これらを総合すると、売上高は1,710億円の減だが、営業費用も同額の減となり、営業利益は当初予想の通り8,300億円としている。

同社は今回、「新たな成長を目指したドコモの変革とチャレンジ」と題した中期的な経営戦略を発表した。2012年度に営業利益を9,000億円にすることを目標としている。山田社長は「携帯電話市場は変局点にあるといえる。量的には成熟した市場だが、質的にはまだまだ進化していく余地があり、それをチャンスと捉えている」と話す。

エージェント機能を駆使した3つの新サービス

具体的には、次のようなサービスを前面に据える。エージェント機能などを駆使し、ユーザー個別の事情や要望に合わせた、「何かをしてくれる携帯電話」を目指す「サービスのパーソナル化」。環境、医療、金融、教育、防犯の領域に対し情報流通を効率化するための基盤「ソーシャルプラットフォーム」を構築し、社会的な課題の解決を図る「ソーシャルサポートサービス」。携帯電話と固定電話、放送、情報家電、自動車、産業機器とを融合させ、多様な利便性を提供する「融合サービス」。同社は「2012年度には、これら3つのサービスで、1,000億円程度の収益が出せるようにしていきたい」(山田社長)と考えている。

第2四半期(7-9月)の総合ARPUは5,860円で第1四半期より30円減ったが、パケットARPUは2,410円と80円上昇した。この2年半ほどのARPUの推移をみると、2006年度第1四半期の総合ARPUは6,900円でほぼ右肩下がりが続いているが、パケットARPUは2006年度第1四半期には1,970円でこちらは右肩上がり傾向だ。同社は今後、動画サービスの増強と普及、パケット定額制の推進を軸に、2011年度には総合ARPUの下げ止まりを目指しパケットと音声の逆転を目論む。

また同社は、movaの終息に向けた施策を本格化する意向を示した。山田社長は「サービスをいつ終了するかは決めていないが、今年度中には決めたい」と語るとともに、今年度は、movaからFOMAへの移行促進を強化していく方針を明らかにした。movaからFOMAへ移行する場合の端末価格引下げなどの策が実施されるとみられる。movaのユーザー数は9月末で、749万3,000人、全体に占める比率は13.9%にまで縮小している。同社では2008年11月30日で、movaサービスの新規申込み受付を終了することをすでに発表している。