成長のためにITを活用すべき

ガートナー ジャパンが開催している「Gartner Symposium/ITxpo2008」、2日目の基調講演には、日本ヒューレット・パッカード(HP)の小出伸一社長が登場。「日本HPは、日本のITにどのような変化をもたらすか」と題し、製品ベンダーから総合的なビジネスIT企業へと変貌しようとしている同社の戦略と未来像を語った。講演は、Symposium/ITxpo 2008 チェア・パーソン ガートナー リサーチ バイス プレジデント兼 最上級アナリスト亦賀忠明氏の質問に答える形式で行われた。

「HPは日本のITを、どう変えるのか」と問う、ガートナー リサーチ バイス プレジデント兼 最上級アナリスト亦賀忠明氏(左)。右は、日本ヒューレット・パッカードの小出伸一社長

亦賀氏からの問いに先立ち、小出氏はまず、多くの企業がグローバル化を志向している現状について話した。

グローバル化への流れのなかで企業が直面する課題として、成長戦略、競争戦略、リスク施策、コスト施策の4つが挙げられた。成長/競争戦略には迅速な意思決定を支援する機敏な経営戦略が、リスク/コスト施策には徹底したオペレーショナルエクセレンス(卓越した業務遂行)が求められるという。

グローバル化を進めようとする場合のITのあり方については、アプリケーションを変革し、ビジネスアプリケーションの層と、ITインフラ層をそれぞれ独立したものとし、仮想化技術を駆使して、さまざまな経営資源をプール化することにより、「資源への需給の変動に応じて利用していける、ITインフラの水平化」を提唱する。

これを受け亦賀氏は「グローバルレベルと日本では、インフラにどんな差があるか」と質問した。小出氏は「国内の企業は従来、全社レベルのインフラ整備が遅れている。業務ごと、部門単位というように、部分的な対応にとどまっているのではないか。一部の製造業のように、グローバルな視点でデータセンターを設け、さまざまな資源を集約し、必要に応じて利用するとの取り組みに着手している企業もあるが、ビジネス全体を捉えて、ITをどう活用するかということを考えている企業は少ない。いまのところは、個別最適化の例が多い」と述べた。

そこで「単なる効率化や改善のためではなく、成長のためにITを活用すべき」と提言する。HPの場合、Digital Equipment、Tandem Computers、Compaq Computerなど、企業の買収、合併を繰り返してきたため、合併以前の企業ごとの、個別最適のシステムが多くみられ、複雑化していたため、これらを「勝つためのしくみに変えた」。同社では売上高の4%をIT投資に割いていたが、これを2%に削減した。「それまでのIT投資は、7割が既存システムの保守・運用に費やされ、新規の戦略的投資には3割しか使われていなかった」からだ。「4%を2%に下げ、その浮いた分をすべて、戦略的事業に活用するようにした」