為替市場が急激な円高に見舞われています。過去から外貨取引をしている人はピンチですが、今から始める、もしくは再開するという人にはチャンス到来ともいえるでしょう。

ただし、まだまだ為替の動きは乱高下が予想されますので、通常時の為替取引のセオリー「金利が高ければ、多少の円高は吸収できるので高金利の外債へ」とか「金利も高いし、すぐに引き出せるから外貨MMFで」といった考えは通用しません。何と言っても、100円だった米ドルが1日で94円になってしまう可能性だってあるのです。つまり単純に考えれば100万円預けたものが、1日で94万円に減ってしまうということ。つまり、1日でマイナス6%。金利4%程度ではあっという間に吹っ飛ぶ可能性があるのです。

また外債もそうですが、外貨MMFも解約できるのは1日に1回ないし、2回。「今日は円高になりそうだから解約しよう」と思っても、朝100円だったものが午後には94円になっていたら、1日1回、終値で解約といった外貨MMFや外債はやはり、リスクが高いということになります。

もちろん、この点FX(外国為替証拠金取引)は、1日の間に自由に売買できますので、様々な技を駆使してピンチをチャンスに変えることができるかもしれません。しかし、このような荒い市場で、今から外貨取引デビューなどといっている人が突然FXに参入して、勝てるわけもありません。また、FXにはレバレッジという甘い罠があります。デビュー組がビギナーズ・ラックで1度大儲けすると、うれしくなって、ついつい10倍、20倍とレバレッジをあげてしまうものです。そう途端、激しい円高に見舞われ逃げ切れず、損失も10倍、20倍になってしまうこともありえます。

ここはもう少しおとなしめの外貨投資で様子が見るのがオススメといえます。

さて、それではどんな商品を利用して外貨投資を始めればいいのでしょう。それが、ネット銀行の外貨普通預金なのです。通常、銀行で外貨投資といえば外貨定期預金。普通預金は外貨定期をするための通り道程度の存在でした。ところが、最近の外貨普通預金はとにかくすごい! いつの間にか、超便利な外貨投資ツールに大変身しています。

そこで、もっともサービスが進んでいる住信SBIネット銀行の外貨普通預金の例でみてみましょう。取扱通貨は米ドル / ユーロ / 英ポンド / 豪ドル / NZドル / カナダドル / スイスフラン / 香港ドルの8通貨。一般的なFX取引にも匹敵する通貨のバリエーションがあります。しかも、為替手数料もFXには負けますが、以下の表のように割安。たとえば、米ドルの場合、通常の総合銀行の外貨定期だと1円、通常の証券会社の外貨MMFだと50銭のところ、住信SBIネット銀行なら20銭! その割安度がわかります。

為替手数料とレート見直しタイミング(対円取引、2008年10月現在)

また、取引時間も24時間365日可能(メンテナンス時間のぞく)。しかも、同行の場合、為替レートが市場に連動して、随時見直しされるのです。つまり、急激な円高がきたら、即座にその場の為替レートで解約ができるというわけ。この点が、今、外貨取引をするなら、外貨普通預金がオススメの最大の理由です。

昼間は忙しいので市場の動きに張り付いて、注文をしている時間がないという人も実は大丈夫。外貨普通預金でありながら、為替レートの指値注文ができるのです。もう少し詳しく指値について説明すると、たとえば、現在の為替レートが104円だったとします。もっと円高になるにちがいないと思ったら、為替レートが100円になったら100万円買い付けというように、指値をしておけるわけです。また、逆指値も可能。100円で買い付けをしたが、もし98円になったら売却という指示をしておけば、平日の昼間、市場をみている時間がなくとも、急激な円高を逃げ切ることができるわけです。

このほかにも、同行には複合指値、ウィークエンド指値などのサービスもありますので、詳しく知りたい人は、サイトで確認してください。

また、外貨預金の魅力はいざとなったら、外貨のまま引き出して使える、という点にあります。この点では、住信SBIネット銀行は外貨で引き出すことはできません。ただし、SBIカードという提携カードがあり、このカードで決済するときに「外貨で」と指定すれば、外貨決済の形で外貨をリアルに使うことができます。

どうですか? ネット外貨普通預金。意外に使えませんか?

住信SBIネット銀行以外にも、たとえばソニー銀行の外貨普通預金も優秀です。為替レートは10銭動くたびに見直されますし、為替手数料も住信SBI銀行とほぼ同じレート。指値注文をすることもできます。また、同行の場合、外貨普通預金から外貨のまま外貨MMFへの資金移動が可能。また、米ドルからなら、1度円に戻すことなく、他の外貨との外貨間取引ができます。

さらに、世界中にある提携ATMから現地通貨で引き出すことができる「MONEY Kitグローバル」サービスもありますので、本当に急激な円高に見舞われてしまったら、塩漬けにせず、外貨として使ってしまうことも可能です。また、イーバンク銀行は、高金利で人気の南アフリカランドを取り扱っています。

あまり知られていないネット銀行の外貨普通預金。この機会に試してみてはどうでしょう。

酒井富士子

経済ジャーナリスト。 回遊舎代表取締役。
上智大学卒。日経ホーム出版社入社。「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長歴任後、リクルート入社。「あるじゃん」[赤すぐ」(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から現職。近著に「FPになろう」「定年手続きダンドリスケジュール」(インデックスコミュニケーション)「編集長の情報術」(生活情報センター)。二児の母。目黒区立東山小学校にて2004年よりサマースクール講師を担当。金融教育を5日間にわたって講義している