自分らしいキャリアを作る
転職支援に携わる荒井氏は、日々の業務の中で常々思うことがあるという。
「若い人の中には、大学の同期が転職したとか、誰それの給料が大きく上がったとか、周囲が気になって仕方がない人が多い。他人と比較することでしか自分のポジションやキャリアを考えられなかったら、その人は本当に不幸。一生満ち足りることはないはず」(荒井氏)
荒井氏は、キャリアを「短距離走ではなくマラソンだ」と表現する。周りと比較し、一時の優劣で一喜一憂するのではなく、自分らしい満足度の高いキャリアを積むことが大切なのだと話す。
「転職サイトで『あなたの給料を査定します』だとか、『転職して給料が上がった』といった文言を見かけることがあるが、意味がないことだと思う。メディアに踊らされて転職そのものを目的化するようなことは絶対にしてはいけない。自分らしいキャリアを考え、適切に行動してほしい」(荒井氏)
では、自分らしいキャリアとはどういったものなのか。それを考えるうえで必要な作業が「自分を知ること」だという。
「スキルや経験、人的ネットワーク、財産などを俯瞰して、自分の深い"動機"を知ることが第一。自分自身で自己と対峙すること、上司や同僚、メンター、コーチ、キャリアアドバイザーなど他の人たちとのディスカッションをすること、など方法はいろいろある。自己分析ツール・テストも時にはとても有効だ。そういったものも使用しながら、自己分析に務めてほしい」(荒井氏)
『キャリアチェンジ特別セミナー』でも、自己分析ツール・テストの中から主なものが2、3紹介される予定である。自分を見つめなおし、今後の方向性を考えるうえで良い機会になるだろう。
荒井氏は、最後に「2009年は大変な1年になりそう。このような時期は特にじっくり腰を落ち着け、キャリアについて考え、実力をつけておくのがよい」と語り、自分らしいキャリアを作るための準備に励もうとエールを送った。
荒井裕之
キャリア インキュベーション 代表取締役社長。リクルートに10年間勤務し、広告事業、情報ネットワーク事業の営業マネージャーを担当。その後、転職情報雑誌『type』の発行元であるキャリアデザインセンターに転職し、営業責任者、専務取締役、関連会社の社長を務める。2000年にキャリア インキュベーションを創業、代表取締役社長に就任する。「お客様の喜びがダイレクトに伝わってくる仕事がしたい」との思いから、求人広告ではなく、人材紹介業を選択。コンサルティング企業や投資ファンド、事業会社のマネージャーなど、極めて優秀な人材を必要とする"プレミアムニッチマーケット"をターゲットに事業を展開している。「転職支援活動が終わった後もコンタクトがとれ、転職者が幸せになっていく様子が手に取るようにわかる今の仕事は、私にとって天職」と語るとおり、自らのキャリア形成でも成功を収めている。