自作PCパーツのなかで、地味ながらも重要度ではかなり高いのが電源だ。構成に見合う容量であることはもちろん、安定性や動作音の具合など、気を配るべき点は数多い。目的に合った電源があってはじめて自作PCは完成するのである。今回は、「電源革命」と銘打たれたタオエンタープライズの電源新製品「Silent Cool」シリーズを紹介したい。

タオエンタープライズの新電源「Silent Cool」 ※以降、写真はすべてSilent Cool 430

まずはSilent Coolシリーズの特徴をおおまかに確認しておく。最大の特徴はなんといっても発熱量の低さ。その要因だが、通常の電源で用いられている「抵抗」「ダイオード」「トランジスタ」の3つを、Silent Coolでは独自開発したICチップに置き換えたことにあり、あわせて、ICチップ化により電源に用いられる部品点数が大幅に削減されたことにある。

ICチップ化を進めることで部品点数を削減、さらにヒートシンクの小型化なども可能としている

ポイントとなるのは、まずICチップ化によって発熱が減ったこと。かつ部品点数が削減されたことで、発熱源の数も減少しているわけだ。そして低発熱であることは、静音、長寿命など、様々なメリットを生む。また、ICチップ化は熱以外のところでもメリットがあったとされる。同社では電力変化に対する反応速度の向上、リップルノイズの減少などを確認したとし、安定性が向上し故障率も減少したとアピールしている。

ファンは定番の12cmだが、ICチップ化による低発熱を実現したことで低回転

背面はメッシュ仕様。内部パーツが減ったことからエアフローもスムーズになった

ところで、最近の電源で特に注目したいのが、変換効率。これはひとつの例なのだが、最新のチップセットを搭載したハイエンドマザーボードにTDPが95W超えのクアッドコアCPU、メインストリーム向けグラフィックスカードを搭載した場合、どのくらいの電源で動作させることができるだろうか。ひとまず筆者の感覚なのだが、メインストリーム構成のやや上あたりと見て、500W~600Wクラスと見積もるところだと思う。

さて、タオエンタープライズのテストによるもので、こんなデータが提示されている。CPUにCore 2 Quad Q6600、マザーボードにASUSTeK P5K Premium、8GBのDDR2メモリ、GeForce 8600 GTSグラフィックスカード、2台の3.5インチSATA HDDにDVDスーパーマルチドライブ、OSにWindows Vista 64bitをインストールしたPCを、Silent Coolシリーズの「Silent Cool 430」(定格は350W)で動かした際の結果とされるデータである。

タオエンタープライズではこのPCで、2つの3Dゲームタイトル「DEVIL MAY CRY4」と「LOSTPLANET」のベンチマークを同時実行し、安定動作を確認したという。どちらのタイトルもグラフィックスの負荷は高く、同時実行させればGPUはフルロード、さらにCPUもかなりの高負荷になったであろう。このPCの消費電力のほぼピークと想定される状態を、わずか定格350Wのモデルで十分に賄えたという点を、同社ではSilent Coolシリーズの変換効率の良さを示す一例として紹介している。ただ、もちろんこれは実験であるため、実際には容量に余裕を見て電源を選んだ方が良いだろう。

さて、今回はレビュー用に、上記の例でも使われている「Silent Cool 430」を拝借しているので、これの仕様を詳しくチェックしてみたい。定格出力は350Wで、+12Vラインは2系統で20Aずつとなる、ピークパワーが430Wというモデルだ。冷却ファンは底部に12cmサイズのものを搭載しており稼働中も確かに静かである。コネクタはメインATXが24ピン、CPU用4ピン、PCI Express補助電源が6ピン×1個、SATAが2+1の計3個、ペリフェラルが3個にFDD用コネクタが1個という構成だ。このコネクタ構成ならメインストリーム構成であれば十分。さらにファン専用のコネクタも2つあるので、ペリフェラルの消費も避けられ、メインストリームといっても相当に強力な構成が可能となるのだ。

20+4ピン仕様のATXパワーコネクタと、4ピンのCPUパワーコネクタ、そしてグラフィックスカード用の6ピンPCI Express補助電源コネクタ

SATA/ペリフェラルも十分なコネクタ数を備え、さらにファン用コネクタ2個を追加搭載。定格350Wながらメインストリームの上を狙える電源だ

Silent Coolシリーズではこの430のほか、530(定格450W)、630(定格550W)もラインナップしている。ちょっとハイエンドな構成を選びたいならPCI Express補助電源コネクタ構成が6ピン×2個になるSilent Cool 630も狙い目だ。製造元のTopowerは実績のある定番メーカーだし、それでいてSilent Cool 430は、これもICチップ化のおかげか実売5,000円前後と価格も安い。安定動作を目指したメインマシンから、コスト重視のサブマシンまで、幅広い活躍が期待できそうな電源だと言えよう。