渋谷駅ハチ公口からパルコ方面に向かって坂を登っていくと、ふと眼に止まる看板の文字。それは確か「たばこと塩の博物館」。「そういえばあったっけ!」「ちょっと気になってたけど、結局まだ入ったことないかも……」。そんな声が聞こえてきそうな、繁華街のど真ん中にあるのに(が故に?)、「知る人ぞ知る」といったイメージの強い博物館。著者にとって、この博物館はまさにそうした場所だった。
名前や扱っているもののマニアックさ故に、ちょっと入ってみたい。でも、アクセスが良いだけに、逆に行く機会を作りそびれる……。なので、「塩グッズの充実ぶりはちょっと凄いですヨ」という担当編集の話を聞くやいなや、早速取材を申し込むことに。これでようやく、興味津々だったあの建物に足を踏み入れられるというもの……。
改めて訪れてみて驚いたのは、道の反対側から何気に目で追っていた時とは全然違う外観の印象。あれ、何だか地味っていうより、機能的だしキレイ……。
こちらのミュージアムショップは、来館者サービスという位置づけのため、残念ながらショップ単体での利用は出来ないシステム。しかし、常設展+企画展合わせて、入館料は大人100円、小学生~高校生が50円という驚異的な安さだ。さすが元「日本専売公社(日本たばこ産業の前身)」設立の公共施設、と言えよう。
そして、専売公社として永らく「たばこ」と「塩」を扱っていたキャリアを思わせるのが、グッズのラインアップだ。
ざっと数えて、塩関係でおよそ24種、たばこ関係でおよそ45種、それらにちなんだオリジナルグッズがおよそ14種以上! 常設展に加えこれまでの企画展の図録、そして塩やたばこにちなんだ書物が、とても資料性豊かな冊子類として並んでいる。なかなか入手しづらい資料類では……と素人目にもわかる、レアなタイトルの本がずらりと並ぶ。
これはどこから見始めようとワクワクして、オススメ商品を伺ったところ「こちらが当館オリジナルグッズとして出している『テーブルセンター』です」(たばこと塩の博物館広報担当)とのことだった。たばこの起源が中南米であるということも関連し、エル・サルバドルで、そこの伝統工芸である藍染めにより、作られているという。モチーフはたばこの神が喫煙している姿だとか。完全手工芸品という性質上、一度に入荷する点数も少なく、切れてしまうと次回入荷も未定だという。
藍染めテーブルセンター。1,800円。タバコ発祥の地域にあるエルサルバドル共和国の伝統工芸品 |
その他お薦めを聞くと「たばこ関連では、『こけしマッチ』が好評ですね」(ミュージアムショップスタッフ)。一本一本に絵入り(!)なところや、値段もお手頃なところがちょっとしたお土産にウケているという。「あとはやはり、『たばこ煎餅』でしょうか」(同)。
……『たばこ煎餅』!?
「あ、別に中にたばこが入っているというわけではなく(笑)、たばこの葉の形を模している商品です」。かつて、たばこの葉の産地であった神奈川県秦野市と、この館内でしか入手できないという。
また塩は赤岩塩を始め、世界の珍しい塩が揃っており、お土産としても人気が高いとのことだった。
食卓塩(80円/約100g)。昔懐かしいボトルタイプ。実はこの塩の原料はメキシコ産の天日塩(それを国内で再加工したもの)! |
赤岩塩(500円/約300g)。ボリヴィア産アンデス山岳地帯で採れる岩塩を砕いただけのもの。鉄分が豊富なため、自然に赤い色になるとのこと。肉料理にどうぞ。でもラブソルトって……? |
その他、本館所蔵の浮世絵をモチーフとしたミニクリアファイルや絵はがきなども好評とのこと。大正時代前後のたばこの広告ポスターをあしらった絵はがきなどの小物類は、確かにここでしか買えない品で、しかもレトロでポップ。
また、「最近はエコロジーの意識の高まりや、レトロなものへの興味から、きせるや刻みたばこにも興味を示される方が多いですね」とのこと。確かにきせるやパイプは、どこかほっとする優しさのようなものを持っている。たばこが粋な嗜好品であり、ファッションの一部でもあった時代を思わせる。
「2001年の改装に伴い、ショップも現在の形になり、オリジナルグッズの販売を始めました。浮世絵など、当館所蔵の資料をモチーフに今後、オリジナルグッズにもますます力を入れていく予定です」(広報担当)。訪れる度に発見がありそうなこのショップ。ふらっと気軽に訪れるのも楽しい付き合い方かもしれない。
ちなみに、以下がたばこと塩の博物館のミュージアムグッズランキングだ。⇒「裏」ミュージアムグッズランキングはこちら
ミュージアムショップ売上5位(2008年4月)
順位 | 商品 | 価格 |
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1位 | 絵はがき | 110円 |
2位 | ノスタルジアマッチ | 110円 |
3位 | こけしマッチミニ | 130円 |
4位 | たばこ煎餅 | 530円 |
5位 | こけしマッチ | 150円 |
巨大な岩塩、紙巻きたばこの作りかた、そして現代広告業のルーツまで…濃すぎる館内展示
そして、まだまだいくらでも遊んでいられそうなショップを後に、いざ館内の展示見学へ。といってもこの館内、外観から想像するより意外と広い展示面積を有している。M2Fと2Fは「たばこの来た道」/「日本のたばこ」と、世界の喫煙具からパッケージ、日本のたばこの歴史をみっちり紹介。
特に、日本のたばこパッケージ&販促ポスターの展示は圧巻だ。明治~大正時代、そして昭和の戦前にかけてのパッケージの変遷は、そのまま現代の広告業の基礎になっているという。「二大たばこ会社の競合によって、印刷技術が飛躍的に向上し、キャッチコピーの重要性も意識されていくようになったのです」(同)。元専売公社の施設ということで、この博物館には地味ながら濃いのでは、というイメージを持っていた著者(失礼!)。そのイメージを180度変えるような、エンターテイメント性に富み、わかりやすくツボを押さえた紹介は、ショップだけではなく展示全般にも共通している。それはこうした、日本のたばこ産業の歴史に通じるものがあるのかもしれない。また、「江戸時代の刻みたばこ屋」や「昔懐かしいタバコ屋さん」の再現など、各所にあるジオラマも見所となっている。
3Fの「日本の塩・世界の塩」コーナーでは、ポーランドの岩塩鉱山から切り出して来た巨大な塩の柱に迎えられる。世界各地の岩塩や湖塩のほか、日本古来の塩田のジオラマで、海水からの塩づくりを学べるとともに、塩の結晶を顕微鏡で見ることができるコーナー、塩について学べる映像やクイズなど、動的で参加型の展示を楽しめる。
そして4Fには企画展が開催される特別展示室がある。著者が訪れた時には、「四大嗜好品にみる嗜みの歴史」展が開催されており、コーヒー・茶・酒・たばこがもたらした文化について紹介されていた(10月17日に終了)。
あまりに充実した展示には、何度来てもその都度新しい感動と出会えそうな、玩具箱のような楽しさが詰まっている。膨大な収蔵品をもとにした企画展も、その楽しみのひとつだ。渋谷に足を運んだ際には、ふらっと気軽に立ち寄るのはいかがだろうか。
たばこと塩の博物館 データ
アクセス | JR・各線渋谷駅より徒歩10分 |
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開館時間 | 10:00~18:00(入館は17:30まで) |
休館 | 月曜日(ただし月曜日が休・祝日の場合は翌日)、年末年始(12/29~1/3) |
入館料 | 個人/大人・大学生100円 小~高校生50円 |
団体/大人・大学生50円 小~高校生20円 |
たばこと塩の博物館開館30周年記念特別展「近世初期風俗画 躍動と快楽」
■会期中(10月25日~11月30日)は特別料金を設定
個人/大人・大学生300円・小~高校生100円
団体/大人・大学生150円・団体/小~高校生 50円