イギリスの食をイメージした時、真っ先に浮かぶのはフィッシュ&チップスや紅茶、スコーンではないだろうか。「それ以外は? 」と聞かれると「……」と思い浮かばない人も多いはず。「食べ物に関してはイマイチ」といったイメージが一般化しているといっても過言ではないイギリスだが、最近の様子はどうなのだろうか。ここでは、イギリスの食についてをレポートしつつ、ある伝統菓子を紹介する。
日本人の"グルメ志向"と比べると、イギリス人の基本的な食事は面白いほどカジュアル。朝はシリアル、ランチにサンドイッチ、ディナーにはサラダにローストポテト、ラザニアや簡単な肉・魚料理等。ビールのつまみにはフィッシュ&チップス……。いたってシンプルなものを食べるのが常だ。イギリスを旅行した日本人からも、「食べ物に関心がないのかな……」「あまりおいしいものがなかった」といった感想を何度か耳にした。と、まぁ、食に関しては少々評価の低かった国・イギリスだが、ここにきてついにグルメブームが到来している。
自国の食材でつくる各国料理
和食、中華、イタリアン、フレンチ、インド、スペイン、トルコ料理等々、ロンドンの中心地には各国の料理店が立ち並び、味も年々本格的になってきたという。中でも日本の寿司は大人気で、ロンドン中心地の回転寿司チェーンでは人々の行列をよく見かける。すしめしには日本米に食感が似ているカリフォルニア米や、スペインなど近郊国でつくられたジャポニカ米を出す店も。サーモンやマグロなどのすしダネも、近海産が大半。海外の料理に人気が出ても、できる限り近隣や自国の食材で賄うところが頼もしい。
とはいえ、イギリスは伝統を重んじる国だ。新しいものを追うばかりではなく、伝統を誇りとして守り続けるその考え方は食生活にも通じる。そんな姿勢が、ある「パイ」から感じ取ることができた。ここからは、「Made of Honor」(メイド・オブ・オナー)と呼ばれるパイ発祥の店という「Newens」(ニューウェンズ)を紹介する。1850年創業のパイとケーキの老舗である。