Qt Software担当副社長のSebastian Nystrom氏

Nokiaは今年6月、ノルウェーのオープンソース企業Trolltechの買収を完了した。Trolltechは、クロスプラットフォーム開発フレームワーク「Qt」で知られるベンチャー企業で、NokiaはTrolltechの事業を継承する「Qt Software」事業を立ち上げ、自社ソフトウェア戦略強化に役立てる。Nokiaでデバイス部門研究・開発、Qt Software担当副社長のSebastian Nystrom氏に、詳しい話を聞いた。

--Trolltechを買収した理由を教えてください。

ユーザーインタフェース分野には、グラフィクスの改善、アプリケーションの複雑化とWeb技術やAPIの統合などのニーズがあります。さらに、これをさまざまなプラットフォームで展開していくという課題があります。

Trolltechの「Qt」はこれらのニーズをすべて満たすもので、すべてのプラットフォームで動く、非常にパワフル、などの特徴を持つ技術です。

買収した理由はとてもシンプルです。Nokiaは技術面で決定するとき、自分たちで構築するのか、提携により他社よりライセンスするか、買収するか、から選択します。ユーザーインタフェースの問題では、すべての選択肢を検討した結果、Trolltechを買収するのがベストだと思いました。われわれは、共通のレイヤの上で動く自社アプリケーションやサービス開発にフォーカスできます。これにより、タイムツーマーケットを改善し、コンシューマを理解して差別化要因を探ることができます。Nokiaが自社で、全プラットフォームに向けてフレームワークを開発するよりも、全プラットフォームで動くフレームワークを取得するほうが理にかなっていると考えたからです。

さらに、Qtはさまざまな企業に利用されています。これは何を意味するかというと、Qtはオープンソースなので、バグの報告を受けられ、さまざまな企業がさまざまな形で検証します。顧客が多いほど、製品の品質は改善します。

--TrolltechはQtのほかに「Qtopia」も開発していますが、買収後QtとQtopiaの開発はどのように進めていくのでしょうか? 買収にあたり、オープンソースコミュニティの反応は?

買収後、Trolltechの事業は「Qt Software」という部門で継続しています。Trolltechの約250人いた社員は、2人の共同創業者を含めて全員残りました。本社や開発拠点など、すべて維持しています。

Qtはすべてのプラットフォームで動く開発製品で、QtopiaはLinux端末用のプラットフォームです。NokiaがTrolltechを買収した最大の目的はQtです。

もちろん、今後もQtopiaの提供は継続します。これまでとまったく同じ条件でライセンスを提供します。今後、われわれが新しい分野の端末を開発する際に利用できるかもしれません。

コミュニティの反応はポジティブなもので、Nokiaという大企業に買収されたことで、開発資金やサポートの面が強化されることになる、と好意的な反応を得ています。

GUIにQtを採用しているKDEコミュニティとも良好です。9月17日と18日にドイツ・ベルリンで開催された「Open Source in Mobile(OSiM)」にて、「Maemo」(Nokiaがインターネットタブレットで採用するオープンソース技術)のサポートを発表しました。QtがNokiaのインターネットタブレットで利用できるようになったことで、オープンソースのアプリケーションスイート「koffice」がインターネットタブレットにポーティングされました。