エムエスアイコンピュータージャパンは16日、将来製品の計画など同社の最新状況を紹介する記者向け説明会を開催した。MSI本社のAssistant Vice Presidentで、製品ブランドを統括する立場にあるVincent Lai氏が来日し、ミニノートが好調の「MSI Wind」ファミリーにおける新展開の構想などを披露している。

まずはエムエスアイコンピュータージャパンの代表取締役である鄭志明氏より、日本国内における直近の成果が説明された。こちらの記事でお伝えしたとおり、自社ブランドのノートパソコンで日本市場に本格参入をした同社だが、鄭氏はこれを振り返り、「自信をつけることができた」と評価。特にNetbookのジャンルで、「(Wind Netbookで)先鞭をつけることができた」と、業界に大きな存在感を発揮できたことを強調。同氏は今後についても、「さらに様々な方向で発展をとげたい」という意気込みを語る。

エムエスアイコンピュータージャパンの代表取締役である鄭志明氏。自社ブランドでのノートパソコン参入を遂げた今年、その成果に確かな手応えを感じることができたと話す

続いて、Vincent氏から、MSIの全社的な最新状況や、より具体的に、MSIブランドの製品の今後の展開についての説明がされた。最大のトピックは同社が新たに立ち上げた製品ブランドである「Wind」ファミリーに関するもので、同ファミリーの製品をデスクトップにも積極投入して行く方針であることが明らかにされた。現在は、主にNetbookの「U100」が話題に上ることが多いWindファミリーだが、デスクトップにもラインナップを拡充し、ちょうどASUSTeKの「Eee」ファミリーの対抗となるような、幅広いブランドとして構築する考えなのだという。

MSIのAssistant Vice PresidentであるVincent Lai氏。説明会の冒頭、サブプライム問題を発端にした世界的に不景気は恐慌にも近く、日本や台湾など輸出への依存が高いの国にとっては厳しい状況にあるが、MSIの計画は当初の予定どおり順調に進んでいると話していた

デスクトップパソコンについてはもうひとつ、Vincent氏から注目すべき発言が飛び出した。特に日本企業が得意とする分野で、一体型デスクトップパソコンがあるが、「一体型パソコンでは日本企業が強みを発揮している」と話した上で、説明会に集まった記者に、「例えば、1.6GHzのAtom、160GBのHDD、1GBのメモリで、18.4インチのディスプレイを持つ一体型パソコンが、店頭価格399ドルだったら買うか」と質問。逆に、記者から「そういった製品を投入する用意があるということか」と質問を受けた際、具体的な回答こそ控えられたが、同氏はこれを否定しなかった。

Vincent氏は、今年のノートパソコンがそうであったように、今後はデスクトップパソコンでも独自ブランドで攻勢をかけていく考えであることを告げる。現状、MSIのビジネスの中身は依然としてM/BやVGAといったパーツ関連が高い割合を占め、MSIといえばパーツメーカーというイメージだが、さらなる成長を実現するために、今後は、多様な製品を幅広く展開するシステムメーカーへとビジネスをチェンジして行く計画なのだそうだ。

コアな自作ユーザーなどにとっては異なるが、ことブランドイメージにおいて、MSIはまだまだ小さいと語るVincent氏。同じ台湾のASUSTeKや、Acerを意識して、「MSIは現在でも台湾で上位に入る企業だが、生き残るためにはブランドイメージの向上は必要不可欠だと考えている。OEM提供だけではなく、MSIブランドでの製品展開を引き続き積極的に進め、ブランドをさらに大きく育てるのが今後の方針」と説明する。同氏は、「今年は、ブランドイメージを変えることができた」と、ひとまず変化の"はじまり"は実現できたという認識も示した。

そしてVincent氏は、将来のPC業界が「自動車業界と似た状況になる」と予測する。例えばユーザーの購買意欲で、自動車では、どうしてもそれが必要という層には、小さくて安い製品が求められた。一方で、安い製品が求められると同時に、付加価値の高い高級車の需要も高まった。同氏は、パソコンでも、そういった両極端な需要が生まれるだろうと説明する。そのような考えにもとづいて、今後MSIでは、まず、もっと安価で手ごろなPCを積極的に投入する計画なのだという。Netbookのような製品が今後大きなボリュームを持つと確信しているといい、上記のWindファミリーのような、手頃なパソコン製品の計画を重点的に進めているのだそうだ。

さらに、従来同社が手がけてきたような製品だけでなく、車載PCなどの多様な分野への展開も計画されている。MSIでは研究開発にリソースを非常に大きく割いているとのことで、未来の話、例えばロボットであったり、医療機器であったり、幅広く積極的に可能性を探り、研究開発を行っているのだとされた。

Vincent氏の認識では、「パーツビジネスはもちろん重要」。今後は幅広い製品展開により、MSIブランドの発展を目指す

Vincent氏が語ったMSIの将来計画は、自作パソコンのユーザーにとっては、先行きに少々不安を感じてしまうような内容であったが、同氏は、目指すものは総合ブランドであり、これらの計画がパーツビジネスのシュリンクを意味するものではないことも説明している。Vincent氏は最後に「パーツビジネスはもちろん重要。MSIは日本でNo.1のマザーボードブランドを目指している」と、日本の自作パソコンユーザーを安心させる発言も行っている。