宮藤官九郎による待望の脚本&監督作品第二弾『少年メリケンサック』(2009年2月14日公開)が19日、開催中の第21回東京国際映画祭にて招待作品として先行上映。監督および出演者たちによる舞台挨拶が行われた。会場には監督の宮藤をはじめ、出演者の宮崎あおい、佐藤浩市、木村祐一らが登場。息の合った軽妙なトークで、集まった約650人のファンを爆笑の渦に巻き込んだ。

あらゆるジャンルの超一流が一挙終結! 宮藤官九郎のもと、ありえない豪華キャストが実現した。左から勝地涼、木村祐一、宮崎あおい、佐藤浩市、田口トモロヲ、宮藤官九郎

"クドカンワールド"の体現とも言える顔ぶれだった。この日の舞台挨拶に訪れたのは、若手の正統派女優として絶大な人気を博す宮崎あおいに、日本きっての実力派映画俳優の佐藤浩市。その横には、コントに演技に広くお笑いの才能を発揮する"キム兄"こと木村祐一、映画監督としても才覚を示した田口トモロヲ、そして、NHK大河ドラマ『篤姫』で宮崎と共演もしている勝地涼が並ぶ。これだけ、豪華かつバラエティに富んだ面々が一堂に会する機会もなかなか無いだろう。

宮藤監督の「ハジけろっ!」という演技指導(?)に導かれ、コメディエンヌとしての新境地を開拓した宮崎あおい

『篤姫』の撮影で多忙を極めながらも今作に強行出演した宮崎は、「宮藤さんがずっと好きだったんですが、まさか私に仕事を振って下さるとは思っていませんでした。なのでお話を聞いた時は、すぐに『絶対にやりたい』と返事をしました」と、オファーを快諾した経緯を明かした。その宮崎が演じるのは、社会不適応者スレスレのオッサンパンクロッカーたちに翻弄されるOLマネージャー。「蹴られたり、モノを投げつけられたり」(宮崎)と、これまでに無い演技にも挑戦したが、「楽しかったので、チャレンジという気はしませんでした。改めて宮藤監督は天才だと思いました」と、撮影を振り返った。

「ダメな男を演じました」という佐藤浩市は、凶暴で酒癖の悪い50歳の生粋パンクロッカーを熱演

撮影現場では、常に共演者たちを笑わせていたという木村祐一。舞台挨拶でも、キム節が炸裂

また、「浩市さんの弟役ということで、撮影中は役作りして浩市さんにソックリだったんですが、終わったら"裸の大将"になっちゃいました」というコメントで笑いを取った木村も、「映画を撮るのは葛藤と決断の連続。それを毎日、あの細い体で朝から晩まで仕切っているのだから、人間の頭脳というのは、とてつもないキャパシティ」と、彼らしい言葉で監督の労をねぎらった。

宮崎演じる栗田かんなの恋人で、売れないミュージシャンのマサルを演じる勝地涼。「とても下手なんですが、一生懸命歌いました」という歌唱シーンが見どころ

映画では言語障害を抱えている役のため、セリフが少なかったという田口トモロヲ。その影響か(?)、この日も司会者からの質問に一言「楽しかったです」とだけ答え、木村から「みじかっ!」と突っ込まれる一幕も

当の宮藤本人はと言うと、渾身の映画の内容について聞かれ、「皆さんが笑えば、コメディ、あまり笑わなければ、人間ドラマということで」と、まずは軽くいなして見せる。だが最後は「自分がパンクロックにハマったのは、中学生の時。その頃のパンクロッカーたちが、25年後の今、どうしているのか? 中には、社会と折り合いが付いていない人もいるかもしれない。でも、どんなことでも貫けば何か良い事があるのでは、というのが、この映画の一つのテーマです」と、真面目に締めくくった。

今作が監督二作品目の宮藤は、「映画は、監督の一言でとてつもない数の人間が動く。適当なことは言えない」と、その重責を再認識したと言う。だがその分、「制作期間が長いし、編集のために何度も見るので、とても愛着が沸く」と、感慨も一塩の様子