世界ラリー選手権(WRC)第14戦「パイオニア・カロッツェリア ラリージャパン(以下、ラリージャパン)」開催が、いよいよあと2週間後に迫った。今回初めてラリージャパン観戦を計画している人も多いと思われるが、準備の方は滞りないだろうか? 事前の情報が足りないと、林道へ観戦に行っても「さんざん待たされた挙げ句、競技車を見られるのは一瞬だけ」ということになりかねない。1日しっかり楽しむために、観戦のツボを押さえておこう。

SSだけがラリーではない

まずは、競技全体の流れをおさらいしよう。競技車両の拠点となるサービスパークは、札幌ドームの駐車場を利用して設営される。競技エリアは、Day1(10月31日)が札幌の西北側、夕張市から三笠市周辺。Day2(11月1日)が南側の恵庭市・千歳市・苫小牧市周辺、Day3(11月2日)が千歳市・苫小牧市周辺となっている。これに加え、札幌ドーム内に設置されたSSS(スーパースペシャルステージ)の走行が各日行われる。

競技車は、朝サービスパークを出発し、リエゾン(移動区間)を通ってSS(スペシャルステージ=競技区間)へ移動。SSを走行し、またリエゾンを通って次のSSへ移動。これを繰り返した後にサービスパークへ戻り、サービス(整備)をはさんで再度出発。同様にリエゾン・SSを走行後、再びサービスパークへ戻る。最後にサービスを行い、パルクフェルメ(指定された保管場所)に車両を入れて1日の競技が終了する。

車が保管場所に入るまで、全てが"競技"に含まれる

ラリーではサービスパークの出入りや移動の区間ごとにTC(タイムコントロール)が設けられており、ここでは到着時刻のチェックと次のTCへの到着時刻指定が行われる。到着が早くても遅くてもペナルティの対象となる。これを指定通りに走ることがまず前提としてあり、その上で競技区間の累計タイムによって順位が競われる。

観戦攻略、まずは"移動"を押さえる!

昨年の林道観戦エリア

サーキット内で全てが行われるレースと異なり、広い範囲で公道を使って行われるのがラリーの特徴。そのため、観戦する側にとっても移動は重要なポイントだ。林道コース観戦の際、現地までの移動手段は主に車だ。ほとんどの会場では近隣の駐車場に車を駐め、そこからシャトルバスでコースまで移動する形となる。

このバスの移動に意外と時間がかかるようで、運営側では先頭の競技車から見るためには約40分前までの乗車を推奨している。バスに乗るための行列もできると思われるので、最低でも1時間前には駐車場まで到着しておきたい。もちろん、良い観戦ポイントを確保するならより早いに越したことはない。

一般車駐車場からシャトルバスで移動する

昨年までと比べて競技エリアがコンパクトになったことで、移動にかかる時間が大幅に短縮されている。さらに、各コースは高速道路からのアクセスが大変便利な位置にある。どこのコースへも100km以内なので、朝6時~9時、夜17時~20時の通勤割引き(50%)が適用される上、来年9月末までは土日9時~17時の休日昼間割引き(50%)が行われているので、かなりお得に利用できそうだ。なお、各観戦エリアの駐車場までのルートが公式サイトに掲載されている。スキー場や公園などが利用されるようなので、カーナビでも検索しやすいだろう。

これ以外に、観戦ルートバスを利用する方法もある。札幌駅を出発→観戦→移動→観戦……→札幌駅着という、いわば"観戦ラリー"形式で運行される。観戦エリアへは、一般車と同様に駐車場からシャトルバスに乗り換えて移動する形になる。料金は1日4,500円~5,000円で、1人で行動するならレンタカーよりも安く済むが、運行ルートが限定されているため、観戦チケットをバスのルートに合わせて用意する必要がある(バスの中で待つという手もあり?)。また、一部のコースでは競技車走行中に移動しなくてはならない関係で、コース内の観戦場所が指定される場合もある。

見えないところの"情報戦"が面白い

もうひとつ押さえておくべきポイントは"情報"。ラリーでは車両は1台ずつ走行するが、漠然と見てしまうと"通過する"だけ。しかし、その車が「現在2位でトップとの1秒差を詰めにアタックしている」とか、「現在4位で何とかポディウム(3位以内)を狙えそうだが5位ともほとんど差がない」などの状況がわかると、面白みが変わってくるはずだ。

そのために重要なのが、できる限り最新の情報を集めることだ。WRCの日本語サイトではリザルトやDayごとのレポート、動画などを掲載。また、スバル三菱スズキの国内メーカー各社もレポートや写真を掲載。どのようなセッティングを行ったのか、どんなトラブルがあったのかなど、各チームの状況を把握することができる。

観戦中は携帯サイトを活用しよう。携帯サイトでは「ラリーXモバイル」が情報充実(ドコモ/au対応)。ステージタイムやステージ情報を現地からリアルタイムで発信している。また、スバルも携帯向けのページを配信しており、リアルタイムとはいかないが、SSごとにレポートと暫定結果が掲載される。心配な電波状況だが、現地の人によると、Day2のKINA(恵庭林道)がやや弱いものの他はおおむね繋がりそうだという。また、イー・モバイルのサイトを見ると、札幌市内および幹線道路・高速道路沿いなどがサービスエリアに含まれているので、ユーザーはこちらも利用できそうだ。

また、公式プログラムや雑誌、オフィシャルサイトなどから、アイテナリー(競技日程表)・エントリーリスト・コース図もぜひ用意しておきたい。

札幌ドームへは地下鉄・バスが便利

今大会の大きな特徴の1つが、札幌ドームで行われるSSSだ。ドーム内のコースで2台の競技車が同時に走行するのはこれが初めてだという。天候に左右されず、全席指定のため、初めてラリー観戦をする人にも"優しい"会場。SSSだけでなく、前日のセレモニアルスタートや最終日の表彰台も札幌ドーム。また、各チームのテントが並ぶサービスパークや、競技の情報を得られるHQもここに設置されるので、1度ならず行く機会があるだろう。

昨年のセレモニアルスタート

昨年のSSS

早めの日程で現地へ行ける人は、30日に行われる「シェイクダウン」や「ラリーショー」も必見。間近で車の写真を撮ったり、選手にサインをもらえるチャンスだ。サービスパークには飲食・物販店舗や、各メーカーのグッズショップが並ぶエリアもある。

札幌ドームへのアクセスには地下鉄東豊線の福住駅駅から徒歩、または地下鉄平岸駅・地下鉄南郷18丁目駅・地下鉄真駒内駅・JR白石駅・新札幌バスターミナルから運行されるシャトルバスを利用できる。ラリー期間中のバスの運行時間は札幌ドームのWebサイトで確認できる。

車で行く場合は近隣に用意された駐車場を利用する。現在発表されているのは、ドームから少し札幌寄りにある旧ポスフール西岡店。利用には事前にチケットの購入が必要で、料金は1日2,000円。また、駐車場からドームまでのシャトルバスを利用する場合は1日1,000円となる(こちらは現地払い)。距離は約2kmで、徒歩ならおよそ30分。東京ドームから秋葉原駅までと同じくらいの距離だ。

"楽しむ気持ち"が楽しいイベントを作る!

札幌の10月の平均気温は、最高が15.8℃、最低が6.9℃。10月末~11月はじめのラリージャパン期間中はこれよりも下がるだろう。特に林道での観戦が早朝・夕方になる場合は防寒対策をしっかりと。この他、観戦時に用意してお行きたいものをピックアップした。

折りたたみイス、レジャーマット:長時間待つ場合もあるので、座れる用意を。マットはビニールよりやや厚手のものがベター
雨具:カサよりカッパが便利。荷物の水濡れ防止にビニール袋もあると便利。晴れの日には砂埃対策にもなる
防寒具:帽子、手袋、マフラー、ひざかけ等、調節できるもの。カイロも必須!
応援グッズ:フラッグは、過去の大会ではセレモニアルスタート、SSSの会場などで配布されていた。帽子やウェアは現地の物販エリアで購入可能。最近はシールタイプのフェイスペインティングも人気だ
遠足的気分:軽食、おやつ・飲み物(魔法瓶に暖かいものがお勧め)・ゴミ袋(ゴミは必ず持ち帰りを!)など
気持ちの余裕:観戦エリアでの待ち時間が長くなる場合もあるが、それもまたラリー。楽しめるだけの余裕を持って行きたい

チームと観客の距離が近く、一体となって楽しめるのがラリーの面白いところ。ひいきのチームだけでなく、ぜひ全ての選手に声援を送って楽しもう。