Gateway、Packard Bellを買収し、拡大戦略を推進してきたエイサー。エイサーは15日、強力な各ブランドを生かしながら、さらに拡大路線を進めていくためのマルチブランド戦略について記者説明会を開催した。
マルチブランド戦略の概要
戦略概要を語る日本エイサー 代表取締役社長 ボブ・セン氏 |
まずは、日本エイサー 代表取締役社長 ボブ・セン氏がマルチブランド戦略の概要について説明した。昨年10月にGatewayを、今年1月にPackard Bellを買収したエイサー。エイサーグループではエイサーのほか、Gateway、Packard Bell、eMachinesと4ブランドを展開している。PCも一般的になったことで、マルチ戦略の商品として展開する必要性が出てきている。日本エイサーは3年以内に日本でトップ5に入るメーカーになることを目指しているが、マルチブランドもその1つの戦略と考えていることを明らかにした。
続いて、エイサーインコーポレイディッド マーケティング&ブランディング コーポレート バイスプレジデント Gianpiero Morbello(ジャンピエロ・モルベーロ)氏が、グローバルのマルチブランド戦略を解説した。
グローバルでの戦略を説明するエイサーインコーポレイディッド マーケティング&ブランディング コーポレート バイスプレジデント Gianpiero Morbello(ジャンピエロ・モルベーロ)氏 |
自動車、食品などほかの業界でマルチブランド戦略は珍しいものではない。トヨタのレクサス、P&Gではマックス ファクターやSK-Ⅱといったさまざまなブランドで製品を提供している。このようなマルチブランド戦略をPC業界でも進めていくとした。PCはこれまでテクノロジーによって製品が作られてきた。しかし、最近ではメモリーやHDD、CPUといった最新技術だけがPCを購入するための条件ではなく、もっと生活に密着した機能が注目され始めたと説明した。
販売戦略では市場の分析も重要となる。全世界でのPC市場全体の販売台数を見ると、2008年上半期は1億4000万台を販売。年末までには3億台にまで達する見込みだ。2008年度上半期の内訳では、デスクトップ7620万台、ノートが6260万台とデスクトップの方が多い。しかし、2007年上半期から2008年上半期までの成長率では、デスクトップは1.7%しか伸びていない一方で、ノートは35.3%と高い伸びを示している。成熟市場となってきたPCだが、このように伸びている市場、伸びている地域を的確に捉えることで、順調な販売台数の伸びが望める。
そこで、エイサーでは2000年に新戦略を立案。エイサーブランドでPCを販売を開始した。これにより、急速にPCの販売台数を伸ばしてきた。その結果、2007年度のノートの販売台数で世界第2位まで上りつめた。内訳を地域別に見ていくと、アメリカでの販売台数がトップ。中国、日本と続く。シェアの点では、アメリカでは3位と高い位置にいるうえ、アジア、ヨーロッパなど世界のほとんどの地域でトップ10に入っている。日本でのシェアは、2008年度第1四半期が9位。第2四半期に8位、第3四半期には6位になる勢い。このように将来的に成長が望める日本市場には、引き続き投資していくとした。
先に挙げたように、この急拡大の中心となるのが、エイサーが新たに掲げたマルチブランド戦略だ。PCが日用品化してくると、技術を前面に押し出すだけでは販売台数は伸びない。しかも、単一ブランドだけではすべてのセグメントのユーザーをカバーできない。PCの低価格化が進むと、ユーザーは身近に感じるブランドを買うようになる。同一価格帯に複数のブランドを投入することで、さまざまな考えを持ったユーザーを狙えるようになる。
このユーザーのセグメント分けも重要となる。年齢、社会的な地位、男性・女性、大人・子どもだけでなく、購入プロセスでどのようなものを優先するかを考えなければならない。エイサーでは、このようなセグメント分けを行い、それにあわせて製品開発のプロセスも一新させた。さらにコミュニケーション戦略もそれぞれのセグメントにあわせたものを考えているとしている。
エイサーグループの4ブランドでは、エイサーが技術重視で、GatewayとPackard Bellがデザインを含めた先進性、eMachinesが低価格を追求することとなる。このようにブランドを分けることで、各セグメントのユーザーにあったPCを提供していく。
エイサーグループは2011年に向けて大きな目標を立て、売り上げが年率15%成長で300億ドル、シェアは世界1位を目指す。営業費用は6%以下に抑え、営業利益を4%以上。これをマルチブランド戦略で推し進めるとした。
日本におけるマルチブランド戦略
日本でのマルチブランド戦略を解説する日本エイサー マーケティングコミュニケーション課 マネージャー 瀬戸和信氏 |
最後に、日本エイサー マーケティングコミュニケーション課 マネージャー 瀬戸和信氏が日本でのマルチブランド戦略を説明した。
マルチブランド戦略の目的は、各ブランドの強みを生かして異なるセグメントのターゲットを獲得。シェアや利益を拡大すること。今回の戦略説明会では、簡単に説明するために、6人のユーザープロフィールを想定。1人目はハイテク専門家のテクノリーダー。2人目はハイテクの知識が高いが収入が十分でないテクノ合理主義者。3人目はテクノリーダーに追随する保守派。4人目はコストを重視する倹約家。5人目は高齢者。6人目はトレンドに敏感な若者だ。
一番シェアが多いのは保守派だが、エイサーではマルチブランド戦略により、このすべてのユーザーに向けて最適な製品を提供できるようになっている。テクノリーダーやテクノ合理主義者など最新技術を求めるユーザーにはエイサー、若者や高齢者など、高いデザイン性やシンプルな操作を求めるユーザーにはGatewayやPackard Bell、コスト重視の倹約家にはeMachines。日本市場では、ヨーロッパでのブランド価値が高いPackard Bellではなく、アメリカでのブランド価値が高いGatewayを投入していく。
日本ではPC市場の約90%を主要メーカーが占めているが、多様なユーザーニーズを正確に捉えた製品を投入することが求められている。これに応えるために、個性の異なるブランドを提供するマルチブランド戦略が不可欠になるのだ。エイサーはこの戦略に従って、日本で各ブランドの製品を順次発売し、3年以内に日本市場でトップ5入りを目指すとした。