企業と消費者のニーズを試供品で繋ぐバーチャル百貨店
「サンプル百貨店」は、WEB上に開設された会員制バーチャル百貨店だ。だが、楽天やアマゾンのようなサイトと違い、商品を売るのではなく、企業から提供された試供品を専門に取り扱っている。その目的も趣旨も、通常のオンラインストアとは大きく異なる。
まず、会員になった利用者は、百貨店独自の通貨である「サンプラー」を貯めることで、欲しいサンプルと交換できる。通貨のサンプラーは、アンケートへの回答や、"企業戦略企画室"へアイデアを投稿することで貯めることが可能だ。これらの回答やアイデアは、企業のマーケティングや商品開発、販売戦略などに活用されることになる。
利用者側のメリットは、自分の興味ある商品を試すことができ、また意見や感想を、企業に直接届けることができること。このサービスの思いつきは、同サイトを運営する「ルーク19」の代表取締役 渡辺明日香氏が、街で配られていたコンタクトレンズのサンプルを手にし、「必要のない人には無駄」なサンプル品を「必要な人の手元」へ届けるサービスがあってもいいのではないかという閃きから、同代表 飯島淳代氏と会社を起こして、2005年夏にサイトを立ち上げた。
出展されている試供品は「化粧品」や「ダイエット関連」、「生活雑貨」「ペット用品」「エステやホテルの体験」など、いかにも現代の女性が興味を持ちそうなジャンルを揃えている(ちなみに筆者は今14,040ポイントを貯めて何に使おうか迷っている)。
こうしたネットのサービスを積極的に利用する女性たちということもあって、同サイトの会員の多くは、ブログを持つ積極的なインターネットユーザーだ。試された試供品に対する感想や意見は、女性ならではのおしゃべりの延長として、リアルでもネットでも発信される。ご存知ない方も多いかもしれないが、なんと多くの女性たちが、「美」「健康」「食」といったカテゴリにこだわりを持ち、事細かな説明記事と写真を合わせてブログを日々更新していることか。ブログを持たない会員向けに「サンプル百貨店」では、アメーバブログと連動したブログ開設キャンペーンを案内し、今回のようなリアルイベントへの参加申し込みに、ブログを条件にするといった仕掛け作りもなかなかうまい。
今回のビューティ企画は初めてのものだが、これまでにもその場で試供品を手にしてもらい、企業の商品説明や開発秘話を披露するイベント「リアルサンプリングプロモーション」を各地で展開するといった実績もある。毎回、約30社によるプレゼンテーションを聞きに500~600名が集まっている。またイベント帰宅後に、彼女たちがブログにアップするレポートを評価する「ベストブロガー賞」を設けるなど、モチベーションの持続をキープする試みも仕掛けている。
さらに、会員向けの特別価格の限定商品を販売するといった、企業とのコラボキャンペーンも展開している。最初のステップで、会員向けの試供品配布という導線からF1(20~34歳の女性)、F2層(35~49歳の女性)にリーチしているため、無闇やたらにネット上に広告展開をするよりも効果的だ。しかも、これまでのアンケート結果などから、彼女たちの嗜好を踏まえての商品企画が行えるといった点でもマーケティング効果が高そうだ。
お互いに敷居の低くなった中で、企業と消費者の両者にメリットのあるシステムを作り、Webとリアルを連動させたユニークなビジネスモデルを展開していると言えよう。業界ウォッチャーとしても、利用者としても、今後の企画が楽しみだ。