環境配慮やユニバーサル・デザイン志向にポイントが
Gマークの新たな風が吹いた2008年度グッドデザイン賞。では、デジタル分野では、どんなデザインが受賞したかをこれから見ていこう。
グッドデザイン賞 金賞:エーアンドエー「サーモレンダー3 Pro」
サーモレンダー3 Proは、CADソフト「VectorWorks」上で動作する環境設計ツールで、屋外熱環境シミュレーションと建物エネルギー計算機能を合わせ持つ。「サーモレンダー2」の機能に加えて、建物が使用するエネルギー量と二酸化炭素排出量をシミュレーションできるようになり、環境配慮型の都市、低炭素社会へ向けた設計に役立つ。「住宅から都市設計までの屋内外統合熱環境シミュレーションツールで、その時代性のみならずインタフェースデザインも優れたもの」と高く評価された。
グッドデザイン賞:カシオ計算機「G'zGEAR」
通常の電子コンパス機能に加え、表示した方角に実在する山の名称とそこまでのおよその距離などを表示できる携帯アプリケーションで、同社のスポーツ・アウトドア用防水・耐衝撃携帯電話「G'zOne」に搭載されている。コンパス(16方位)・GPS・温度計・加速度センサーなど、4つのセンサーと連動し稼動する。
グッドデザイン賞:ワコム「シンティック 12WX」
ペンで画面に直接描ける液晶ペンタブレット。鉛筆で紙に文字や絵を描くのと同様に、より自然で直感的な操作感と作業効率の向上を追求したアイテム。WXGA対応12.1型フルカラーTFT液晶ディスプレイと、高機能ペンタブレットを融合したモデルとなる。タブレットを回転させたり、角度調整も可能。
グッドデザイン賞:東洋インキ製造「UDingシミュレーター」
「UDingシミュレーター」は、320万人いるといわれる色覚タイプが異なる人の見え方を、シミュレーションできる無償ソフトウェアで、このような人たちに色彩がどのような色として見えているかを、PC画面上で確認できる。また、より判別しやすい配色への自動変換も可能で、ユニバーサル・デザインを考慮した配色の実現に貢献する。
グッドデザイン賞:富士通「キッズコンテンツ作成ハンドブック」
子ども向けの良質なコンテンツの普及とユニバーサル・デザインの発展を目的とし、富士通が開発した子供向けWEBサイトの作成ハンドブックで、無償で提供されている。社会全体のキッズサイトの品質向上を目標とし、学校関係者や保護者など、子供向けWEBサイトの制作者をターゲットとしている。
グッドデザイン賞 大賞候補:ソニー・コンピュータエンタテインメント「PLAYSTATION(R)3のFolding@home(TM)プロジェクト協力」
Folding@home(TM)は、米国スタンフォード大学のプロジェクト。全世界100万以上のCPUが参加している分散コンピューティング・ネットワークを利用し、タンパク質の折りたたみ構造を研究。関連する疾病の治療に役立てることを目標としている。このプロジェクトに対して、ソニー・コンピュータエンタテインメントは世界中に広がるPLAYSTATION(R)NetworkとPLAYSTATION(R)3のもつCell Broadband Engine(TM)のパワーを用いて支援協力を行ない、プロジェクトへの参加促進を目指したという。受賞式では、同社コーポレートデザインセンターの中山隆司氏が、「アルツハイマーなどの治療に役立たせるための計算能力を、PS3というエンタテインメント機を使って、世界中の人たちと協力し合いながら支援する。非常に意義があると思います。このデザインは、世界中の人たちが光の一片となってビジュアル化されて見えるというところに意義がある。その光のひとつひとつになってくれた人たちと、この受賞を喜び合いたい」と語った。
課題解決としてのデザインの方向性
このように、社会的な課題を解決するためのひとつとして、デザインが注目されていることも確か。本年度のグッドデザイン賞は、審査側が生活者に近い視点を重視しつつ、環境配慮型デザインやユニバーサル・デザイン、ソリューション・デザインというような地球規模でのデザインにも評価が与えられたといえる。