今年6月、全米で公開されるや興行成績初登場1位を記録し、多くの映画評論家たちから「アカデミー賞の有力候補」と大絶賛された、ピクサーの最新フルCG映画『WALL・E』(ウォーリー)。日本では12月5日全国公開となるが、それに先駆け8日、都内のホテルにて、関係者たちによる来日記者会見が行われた。

会見には、アンドリュー・スタントン監督の他、プロデューサーのジム・モリス、そしてサウンド・デザインを担当したベン・バートの3氏が出席。さらには、ウォーリー本人(の等身大ロボット)が緊急出演! タカアンドトシも急遽応援に駆けつけ、二人と一体(?)の絶妙な掛け合いが、会場に集まった関係者や記者たちを魅了した。

ウォーリーを中心に、笑顔で手を振る登壇者たち。左からタカ、プロデューサーのジム・モリス氏、アンドリュー・スタントン監督、サウンド・デザインを担当したベン・バート氏、トシ、そして前列にウォーリー

『WALL・E』は、全ての人類が去り、荒廃しきった700年後の地球を舞台としたSF映画。あらゆる生命が死滅し、地表の大半をゴミで埋め尽くされたかつての"青い星"でただ一人、来る日も来る日もゴミを修理し続けるロボット――それがウォーリーだ。

感情も目的も無いはずのウォーリーは、それでもガラクタの山の中からルービックキューブや電球などの"宝物"を拾い上げると、まるで昔を懐かしむかのように、それらを大切に持ち帰って保管する。そうして700年の歳月を一人で過ごした彼の中にはいつしか、「誰かの手を握りたい」という願いが芽生えるのだった……。そんな折、突如ウォーリーの目の前に、輝く純白のボディに先鋭的な機能を搭載した、最新型ロボット、イブが現れる。 イブに一目で魅了されたウォーリー、そして、人類から重要な使命を託されたイブ。両者の出会いは、やがて地球を飛び出し、宇宙を駆ける大冒険と壮大なラブストーリーへと発展していく。

この映画のプロットを思いついたのは14年前。「人類が地球を去ることになった時、誰かが一台だけ、ロボットの電源を切り忘れたとしたら…」というのが、コンセプトだったと言うスタントン監督

アカデミー受賞作『ファイティング・ニモ』も手がけたスタントン監督は、視覚に訴える映像と簡潔な物語で構成された娯楽作品を作りながら、同時に強いメッセージ性を込める作風に定評がある。今作も、ウォーリーがイブに対して抱く"愛情"を物語の推進力としながらも、その背景には、なぜ人類が地球を捨てたのか、そして、テクノロジーが発展したその先で人類はどのような姿に行き着くのかなど、様々な問題提起が横たわる。

一見すると、環境問題を訴えたメッセージ映画のようにも思えるが、14年前からこの作品のアイディアを温めてきたというスタントン監督は、「単にエコロジーや環境問題を考えた訳ではなく、人類が最も大切なもの――愛や思いやり――を忘れたらどうなるのか、そしてそれをロボットが学んでいったら何が起きるのか、というのがメインのテーマ」と、あくまで物語の軸となるのは、感情であることを強調した。

『スター・ウォーズ』シリーズのR2-D2の音声も手がけたバート氏は、「R2-D2がウォーリーのモチーフ」と公言するスタントン監督の要望により、ウォーリーのサウンドも担当することに

作中では、ウォーリーの感情を表現する手段には会話はではなく、主に仕草や顔の動き、そしてウォーリーが放つ機械音が用いられている。そのような作品の構造上、非常に重要な役割を担ったサウンド・デザイナーのバート氏は、「まずは作品のコンセプトを知り、そしてロボットのデザインや世界観など、ビジュアル面の情報を集めた。その後にスタジオに行き、サンプルの中から必要な音を集めたり、またこれまでに無い新しい音を作っていった。そして最終的には、監督と相談しながら"感情が伝わる音"に主眼を置き、それらを探すことに時間を費やした」と、苦心の音作りの工程を明かしてくれた。

ウォーリーは、体長約1メートル。小首を傾げたり、恥ずかしがって手で顔を覆ったりと、言語は話さずとも、豊富なアクションと音声で感情表現

会見の最後には、映画の主役、ウォーリーが舞台に登場。映画と同じく言葉はほとんど発さないながらも、バート氏が作り上げた音声、そしてキュートな仕草で見事に感情を表現し、その魅力を余す所なく体現。タカアンドトシの2人から「良いお友達になりたいですね」と声をかけられると、「ハハハ」と乾いた笑いを発して、会場の爆笑を誘った。

「頑張り屋で誠実なウォーリーに、色々なことを教えてもらった」(トシ)「ウォーリーみたいな子供が欲しい」(タカ)と、タカアンドトシの二人は、さっそく、ウォーリーの"お友達"に立候補