ピカソの全貌をたどる大回顧展
ピカソの死後、遺族が所蔵していた作品を中心に、膨大なコレクションを所蔵するパリ・国立ピカソ美術館。今回、同美術館が大改修工事を行うこととなり、これに伴って、同館のコレクションの世界巡回展が実現。マドリード、アブダビに続いて、東京で開催されるピカソ展は、「巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡」と「巨匠ピカソ 魂のポートレート」と題して、国立新美術館とサントリー美術館の2会場で同時開催されている。出品点数は合わせて約230点と、空前の規模となり、ピカソの全貌に迫る作品群が六本木に集結した。会期は12月14日まで。
国立新美術館
国立新美術館で開催される「巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡」は、青の時代、キュビスム、新古典主義、シュルレアリズム、晩年の作品群と、変貌を続けたピカソの91年の生涯の全貌に迫る内容。展示作品は約170点に及び、一連の作品から、常に新しい芸術を生み出そうとしていたピカソの軌跡が浮かび上がってくる。
なかでも、ピカソにインスピレーションを与えてきた女性たちの肖像画は、画家の愛の軌跡を浮き彫りにする。36歳で結婚した妻・オルガ、冷え切った結婚生活の中で出会った28歳年下のマリー=テレーズ、画家で写真家の知性派ドラ・マールなど、女性の肖像画が次から次へと登場し、絵の前に立つと、愛憎のドラマを目の当たりにするような衝撃を受ける。
ピカソは死の直前まで精力的に創作活動を続け、展示の最初から最後まで常に変化し、見る者を圧倒する。今回の展示では、絵画のみならず、彫刻や立体作品なども多数展示され、ピカソの創造の世界を十二分に堪能できる内容だ。
《ピエロに扮するパウロ》 1925年 (c)2008-Succession Pablo Picasso-SPDA〔JAPAN〕 (c)Photo RMN-cJean-Gilles Berizzi/distributed by DNPAC 妻オルガとの間に生まれた子パウロを描いた作品。ピカソはパウロにさまざまな衣装を着せ、その姿を描いたという |
《ドラ・マールの肖像》 1937年 (c)2008-Succession Pablo Picasso-SPDA〔JAPN〕 (c)Photo RMN-(c)Jean-Gilles Berizzi/distributed by DNPAC ピカソは、愛人マリー=テレーズと幸せな生活を送っていたが、美貌の才女、ドラ・マールと出会い、恋に落ちる |
《朝鮮の虐殺》 1951年 (c)2008-Succession Pablo Picasso-SPDA〔JAPAN〕 (c)Photo RMN-(c)Jean-Gilles Berizzi/distributed by DNPAC 朝鮮戦争へのアメリカ介入に抗議して描かれた作品 |
サントリー美術館
「巨匠ピカソ 魂のポートレート」と題したサントリー美術館での展示は、自画像をテーマとした構成となっており、常に自己と対峙し、自己を見つめ続けた画家の軌跡をたどることができる。
最初に展示されている作品は、「カザジェマスの死」。バルセロナからパリへと移り住んだピカソが生活を共にした友人カザジェマスの自殺はピカソに大きな衝撃を与え、「青の時代」はここから始まったといわれる。青色で描かれた自画像は、やがてキュビスム時代の単純化された曲線に変わり、新古典主義時代に入ると、力強い線で描かれる。自画像のほかにも、ピエロの格好をさせた息子の肖像画、自身を投影したといわれるギリシャ神話のミノタウルスを描いた作品など、ポートレートを中心に約60点に及ぶ作品が展示されている。
《泣く女》 1937年 (c)2008-Succession Pablo Picasso-SPDA〔JAPAN〕 (c)Photo RMN-cJean-Gilles Berizzi/distributed by DNPAC 《泣く女》の主題は、『ゲルニカ』の制作過程で生まれたといわれている。ピカソは『ゲルニカ』完成後も《泣く女》の連作に取り組んだという。 この作品は、ドラ・マールを描いたとされている。 |
《牧神パンの笛》 1923年 c2008-Succession Pablo Picasso-SPDA〔JAPAN〕 cPhoto RMN-cJean-Gilles Berizzi/distributed by DNPAC 右側の男が吹いているのは、ギリシャ神話の半獣神パンがニンフを偲んで吹いた笛。ピカソが生涯自らの手元に置いていた作品 |
※作品写真は著作権によって保護されており、著作権者の許可のないダウンロード・保存・複製・無断転載は禁止されています。
六本木でピカソを楽しむ一日
2館同時開催となる今回のピカソ展は、片方の美術館の観覧券の提示で、もう片方の観覧券が200円割引になる「ピカソ割引」を実施。これだけの数のピカソ作品に一度に出会える展覧会は珍しく、ぜひ2館両方を訪れたい。
ピカソ展に関連して、国立新美術館3F ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼや東京ミッドタウン内のレストランでは、ピカソにちなんだ特別メニューの提供やピカソ展の半券の提示によるスペシャルサービスを実施。両美術館にて、ワークショップやシンポジウム、講演会などのイベントを多数開催される。
「巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡」
会場 | 国立新美術館 |
---|---|
会期 | 2008年10月4日(土)~12月14日(日) |
休館日 | 火曜日 |
開館時間 | 10:00~18:00、金曜は~20:00(入館は閉館30分前まで) |
アクセス | 東京メトロ千代田線直結 |
主催 | サントリー美術館、朝日新聞社、テレビ朝日 |
企画 | パリ・国立ピカソ美術館 |
後援 | フランス大使館 |
「巨匠ピカソ 魂のポートレート」
会場 | サントリー美術館 |
---|---|
会期 | 2008年10月4日(土)~12月14日(日) |
休館日 | 火曜日 |
開館時間 | 10:00~20:00(入館は閉館30分前まで) |
アクセス | 東京メトロ日比谷線・都営大江戸線六本木駅直結 |
主催 | サントリー美術館、朝日新聞社、テレビ朝日 |
企画 | パリ・国立ピカソ美術館 |
後援 | フランス大使館 |