実証実験にはJASRACは喜んで参加
――現在の状況では、コンテンツをネット配信するメリットが少ないというわけですね。
メリットがないばかりか、既存のウインドウを傷つけるリスクがあるということです。
著作権の権利を制限しようとする人達は、いわば人の財産を安く使いたいということを言っているように聞こえます。
それでは、コンテンツの強制収用と同じわけで、知財立国を目指す国家の方針とは全く逆の方向に行ってしまう気がします。
そうではなく、例えば放送局や通信事業者の人達が出資し、ネットでも利益が出せる新しいビジネスモデル、新しいウィンドウを作り上げていくのが最もいい方法ではないでしょうか?
これは、総務省の検討委員会でも以前申し上げたことです。もしそういうビジネスモデルなどの案がありトライアル(実証実験)を行うなら、JASRACとしては喜んで参加します。
NHKのネット配信が起爆剤になる可能性も
――NHKが今年末からネット配信事業を計画しています。これは今後ネット配信が普及する上での起爆剤になるのではないでしょうか?
これはNHKがずっとやりたかったことで、英国のBBCがやっているものをキャッチアップしようとするものでしょう。
現在の受信料とは異なる課金を別会社が行うことが予定されており、これがうまくいけば、ネット配信が事業として成り立ついい事例になるのではないでしょうか?
――JASRACとしてはデジタルコンテンツ流通のため、具体的に何を行っていくつもりですか?
ニコニコ動画とJASRAC管理楽曲の使用について許諾契約を結びましたが、これはニコニコ動画に今後の可能性を感じ行ったものです。また、YouTubeとも交渉を進めています。
また、ポッドキャストや着メロ、着うたなど新しい動きがあるたびに、JASRACとして新しい対応方法を決め、規定を設けてきました。
今後もそうしたことを行っていく方針です。
――最後に、政府の知的財産戦略本部などで議論が進められている「フェアユース規定」についてのお考えをお聞かせください。
正直、何をやりたいのか分からないというのが感想です。
英米では、教育・研究や完全な私的利用を「公正な利用の範囲」とし、著作権を制限するとしていますが、現在日本で議論されているのは、その範囲がよく分からないからです。
ご存知のように英米は自己責任の考えが強く、訴訟社会でもあります。
従って、フェアユースに関し問題が起きた時は訴訟で解決するやりかたですが、これが日本に合っているかどうか。
フェアユースという言葉だけが表面的に理解され、議論されているような気がします。
もう一度背景などを見て、慎重に検討すべきではないでしょうか?