10月3日より、東京・渋谷パルコ パート1のパルコファクトリーにて「ボーメ~アーティストデビュー10周年記念展」が開催される。この展覧会は海洋堂所属の人気造形作家であるボーメ(BOME)氏が、現代美術の分野でデビューしてから10周年を迎えたことを記念したものだ。
期間は10月20日までで、開催時間は10時~21時(入場は20時半まで・最終日は18時閉場)。入場料は一般300円、学生200円、小学生以下無料となっている。
これまでボーメ氏の展覧会は、アーティストの村上隆氏を通じて、ニューヨークやパリなどで行われてきたが、日本での本格的な展覧会は模型イベント「ワンダーフェスティバル」の会場以外では今回が初めてとなる。会場には、少年時代、当時プラモデル店だった海洋堂に出入りし、80年代初頭から同社所属の造形スタッフとしてフィギュアを作り続けてきたボーメ氏の作品を一堂に展示。「美少女フィギュア」という言葉がまだなかった時代からひたすらに美少女を生み出してきたボーメ氏の約80体にも及ぶ「愛娘」(もしくは嫁)たちをまとめて鑑賞することで、ボーメ氏の職人芸はもちろん、この四半世紀のオタクシーンにおけるヒロイン像の変遷を俯瞰することも可能となっている。
入り口ではさっそくボーメ氏の代表作と名高い「等身大(1/1スケール)版"鬼娘"」がお出迎え。1994年に手がけた作品を2004年にスケールアップしたものだ |
美少女フィギュアとひと口に言っても、驚くべきはボーメ氏の守備範囲の広さ。アニメ、ゲーム、マンガなど様々なジャンルの二次元の美少女が破綻なく三次元化されている |
会場のボーメ氏に率直な感想をうかがった。
「じつを言うと信じられないんです。自分が延々こういう美少女模型をやってきて、こんな立派な渋谷パルコのギャラリーで開催されるなんて、まさか作ってたころは思わなかったし。分不相応なのかどうかもわからないなあ(笑)。一番最初のニューヨークのSOHOのギャラリーでの個展はとても怖くて行けなくて(笑)、さすがにそのつぎのフランスのときはカルティエにまで呼ばれたんで『お前行け』と言われて行きましたね。だからこういう場に出るのはフランス以来なんです」
――代表作以外で思い入れがある、裏オススメ的な作品がありましたら。
「それねえ、一番つらいんですよね(笑)。なんかいつも自分の作品を見てると反省が出てくるんで。でも代表作で言ったらやっぱり"鬼娘"になるんでしょうね。いろんな人が取り上げてくれましたし。昔の作品で思い出深いと言えば『ああっ女神さまっ』の"スクルド"かなあ。(声を演じた)久川綾さんが好きとかそういうのがあって(笑)、結構思い入れが強くて。あと自分のなかでは『キディ・グレイド』。ずっと好きだったんですよね。話も好きで。ついでに全部違うキャラクターを3体出してくれたじゃないですか。それで余計に作りがいがあったという思い出がありますね」
ワンダーフェスティバルのようなお祭り騒ぎの雰囲気とはまた異なり、落ち着いた会場でボーメ氏の珠玉の作品群を鑑賞できる貴重な機会。フィギュアファン、アニメファン、アートファンなど、ボーメ氏の作品を愛する人に幅広く足を運んでみてほしい。
最初期の作品となる『うる星やつら』の「ラムちゃん」(1983年)。赤くアレンジした髪の毛など、すでに代表作「鬼娘」の萌芽が……? |
ボーメ氏自身も思い出深いと語る『ああっ女神さまっ』の「スクルド」(1996年)。 |
左から『キディ・グレイド』より「エクレールIV」、オリジナルの「うさぎ1号」、『ゼノサーガ』より「KOS-MOS」 |
『ラブひな』から生まれたソフビキット「ボーメ、1m成瀬川なるに挑む。」(2002年)。サイズの限界に挑戦しただけあって、これだけ並ぶと壮観 |