最新のデジタル知識と表現手法が学べるデジタルハリウッド大学・秋葉原メインキャンパスにて9月30日、映画『ICHI』(10月25日公開)の曽利文彦監督を招いた特別講義が行われた。
VFXやCGなどのデジタル映像の先端クリエイターとも称される曽利文彦監督は、南カリフォルニア大学(USC)映画学科へ留学中に、映画『タイタニック』(1997年)のVFXに参加した。その後帰国し、堤幸彦監督の『ケイゾク/映画Beautiful Dreamer』(2000年)などの映画で、VFXスーパーバイザーを務める。またテレビドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(2000年TBS系)などで、タイトルバックや、VFXシーンを手がけ、2002年に映画『ピンポン』で念願の監督デビューを果たした。同作品で日本アカデミー賞監督賞を受賞。近年では、フル・CGアニメーション映画である『APPLESEED』(2004年)をプロデュース。2007年には『ベクシル-2077日本鎖国-』の監督/脚本を務めている。
『マトリックス』のようなCGの使い方をした映画を作る気はなかった
デジタル映像で知られる曽利監督は、時代劇である映画『ICHI』(2008年)の監督を務めるにあたり、どういう時代劇にしたいと考えていたのか。
「時代劇を作るときに、もしデジタル映像を全面に打ち出したものを作ってしまうとキワモノ時代劇のような印象を与えてしまうと思いました。自分自身が『座頭市』のファンだったこともあり、この作品をキワモノにしたくありませんでした。そこで、表向きには、とにかくデジタル映像と思わせるカットをなくしたのです。もちろん若い人たちに向けての時代劇であるのですが、デジタル映像を売りにしたくなかったんです。なので映画をご覧いただけると分かると思うのですが、いかにもCG映像だというカットは一切ありません」
飛び道具のような大胆な使い方でないCGの使い方もある
では、今回曽利監督の得意としているVFXやCGなどのデジタル映像をどのような形で同作品に組み込んでいこうとしたのだろう。
「今回は、デジタル映像を飛び道具のような大胆な使い方をしたくなかったんです。ただその代わり、ほとんどわからないところに大量にCGを投下してます。もちろんCGをやってらっしゃる方にはわかるところもありますが、『なんでそんなことまでデジタルでやってるの』というところまでデジタルでやってます。全カットが大体1000カットなんですが、その半分以上のカットにデジタルワークが入ってます。それぐらいデジタルまみれの映画なんです」