陸上男子四百メートル障害の為末大(30)=APF=が、10月1日、都内で記者会見し、現役続行の意思を表明した。
為末は、シドニー、アテネ、北京と3大会連続でオリンピックに出場したが、北京では故障のため力を発揮できず、予選敗退。進退については北京五輪の閉幕後に考えたいとしていたが、今回の記者会見で「体がボロボロになるまで走り続ける」と、4年後のロンドン五輪を目指し、競技を続けることを表明した。
今まで「カール・ルイスに憧れ、勝利の栄光に憧れて走ってきた」という為末は、「年齢的にも厳しく、負けるようになってまで続ける意味があるのかと自問した」というが、走りたい気持ちには逆らえず、現役続行を決意。
今年に入ってから故障に悩まされてきたが、「故障がよくなったわけではなく、現役続行に対する前向きな材料があったわけではない。それでも、走り続けたいという気持ちが消えなかった」と、自分の気持ちに正直になった結果の決断だ。
今回の北京オリンピック出場は、「大会終了後、オリンピックが思い出になるかと思っていたが、そんなことはなかった。『ボルトがなぜ勝ったのか』、『どんな練習をしたら、どんな結果になったのだろうか』と、また走るためのことばかり頭に浮かんだ」という。これから、体を調整し、拠点を海外に移してトレーニングを再開する。
陸上競技の普及のため、全国の小学校を訪問する「キッズアスリート・プロジェクト」、東京・丸の内の公道での陸上イベント「東京ストリート陸上」などの活動を行ってきた為末は、今後も現役選手としてトレーニングを続けながら、アジアの貧困国での陸上普及活動にも力を入れたいとしている。また、他種目のスポーツ選手との横のつながりを強化して、「日本人の足を速くする活動もしたい」と、意気込みを語った。
数々の経験を積んだベテラン選手として、今後さらに多方面での活動の幅を広げていく為末。年齢や足の故障といったハンディの中での今回の前向きな決断に、各方面から、今後の活躍にさらなる期待がかかる。