間瀬元朗原作のコミックを映画化した『イキガミ』が27日、公開初日を迎え、東京・六本木ヒルズでおこなわれた初日舞台挨拶に瀧本智行監督、主演の松田翔太、塚本高史、成海璃子らが出席した。
「逝紙(イキガミ)」と呼ばれる死亡予告証を配達する国家公務員・藤本賢吾(松田)を中心に、「残りの人生がわずか24時間」と宣告された者と、友人や家族など周囲の人々が、残された時間をどう生きるかに焦点を当てた『イキガミ』。
役作りについて聞かれた松田は、「藤本が国家に不安を抱いていて、イキガミを渡される当事者のことを考えると胸が苦しくなる、という表現をするのが難しくて。プライベートの時間も藤本と同じ気分になることがありました」と、精神的に追い込まれた状況での撮影だったことを明かした。
続いて挨拶した塚本は、わざとマイクを逆さに持って話し始め、笑いを誘って雰囲気を和ませた。塚本演じる森尾秀和とかつてギターデュオを組み、メジャーデビュー直後に「イキガミ」を受け取ってしまうミュージシャン・小松翼を演じた金井勇太は、「ストリートミュージシャンとして2人で歌っていた時に、スカウトされるのがなぜ僕? どう考えても塚本さんですよね」。その言葉に、「そしたらオレが死んじゃうでしょ(笑)」と塚本。漫才コンビのような息の合ったやり取りに、会場はまたしても笑いに包まれた。
成海が演じるのは、幼い頃の交通事故で視力を失い、両親も亡くしてしまった少女。「松田さんと一緒のシーンは少なかったけど、撮影現場ではいろいろ話しました。おもしろいことも言ったりして……」とコメントすると、「僕のとっておきのギャグを言ってあげました。ここではちょっと言えないけど(笑)」と松田。シリアスな演技が求められる一方、温かい雰囲気の撮影現場だったことを感じさせた。
その後、松田が淡々としながらも熱い言葉で、この映画への思いを語った。
「自分が考えたモラルとか価値観が正しいかどうかはわからないけど、イキガミを届けることに疑問を感じ、行動に出た藤本のように、自分の考えや個性をひとつひとつ提示するのはすごく大事。今日、ここに集まってくれたみなさんも、個性を提示することを忘れないでほしいと思います。この映画が、『社会が個人の価値を決める』のではなく、『個人の価値観を提示することで社会が変わる』ためのきっかけとなることを願っています」。
松田の言葉からも、重厚なヒューマン・ドラマに仕上がっていることがうかがえる本作。瀧本監督によれば、「新しい総理大臣はコミックが好きと公言されているので、ぜひ映画を見ていただき、この国の舵取りを間違えないようにしていただけたらと思います。いつ辞めるかはわかりませんが……」とのこと。
映画『イキガミ』は、全国東宝系でロードショー中。