スポーツサイクルに初めて乗る人のために、マナーやルールを紹介した前回の「出で立ち編」に続き、今回は後編として路上での振る舞い方について紹介しよう。いちばん意識してほしいのは、しつこいかもしれないが「自転車は車両の仲間」だということだ。
自転車は原則車道! 自転車道があれば自転車道を走る
まず、自転車は道路のどこを走るのかということを改めて確認しておきたい。スポーツサイクルであろうがママチャリであろうが、自転車は軽車両に分類される乗り物であり、車道を走らなくてはいけない。そして車両の仲間であるから、当然「車道の左側」を走ることになっている。車道と歩道の区別が無い道路でも、もちろん左側を走行する。
スポーツサイクルが流行り始めた一方で、車道の逆走、つまり右側を走行する人も増えてしまったように思う。絶対にやめてほしい。
また、近年では車道や歩道とは別に「自転車道」が設けられているケースがある。この際は、自転車は自転車道を走行しよう。なお、自転車道は車道や歩道とは独立した存在で、その中で対面通行になっている場合が多い。
走ってよいシチュエーション
しかし現実として、多くの自転車が車道ではなく歩道を通行するシチュエーションは多い。では、自転車で走ってよいケースは? というと、街中でおなじみの「自転車及び歩行者専用」の道路標識がある歩道だ。
ただし、「自転車及び歩行者専用」の道路標識がある歩道を走ることができる自転車は「普通自転車」に限られる。道路交通法施行規則で定められているのだが、簡単に説明すると「長さ190cm幅60cm以内、1人乗り、側車無し」で、ちゃんとブレーキの付いた自転車ということになる。興味のある人は「内閣府令 道路交通法施行規則第9条の2」を参照してほしい。
また、13歳未満の子どもと70歳以上の高齢者、およびからだに障害のある人は、「自転車及び歩行者専用」ではない歩道でも普通自転車で走行できる。
歩道での振る舞い
「スポーツサイクルはスピードが出る乗り物だから、車道を走りましょう」という言葉を良く聞く。趣味として颯爽として走るということだけではなく、自転車が本来持っている性能を活かして効率的に移動するためにも、車道を走るのが望ましいだろう。とはいえ、日本の道路環境はそれを許さないところがあるし、慣れないうちは恐怖感だってある。無理をして怖い目に遭うくらいなら、(今のところは)歩道を走ったほうが良い。
ただし、歩道は歩行者が優先だ。歩行者に注意し、十分に徐行しよう。ベルを鳴らして歩行者をどかしながら走るなどということは、絶対にやってはいけないことのひとつ。また、人通りが多いところでは、自転車を降りて押すのがマナーだ。
周囲の車や自転車に対して積極的に合図をしよう
自転車で車道を走っているときに必ず出会うのが、路上駐車。路上駐車をパスする際は、なるべく早いうちに後方を目視して、右側に出るということを手で合図しよう。「何もしなくても、車は避けてくれる」などと思わないことだ。
また、車道の左側を走っていると、後ろに別の自転車、もしくはバイク(オートバイ)がいることがある。そんなとき、あなたが「あ、コンビニ入ろっ♪」と思って急にブレーキをかけてしまったら、後ろから追突される可能性がある。まず、危険を回避する以外で急な停車をしないこと。後ろに別の自転車の気配を感じるときは、止まったり減速したりする際に、やはり手で合図を出すと良い。
サイクリングロードを暴走しない!
川沿いに多く見られるサイクリングロードは、サイクリングを楽しむために絶好の環境だが、日本のサイクリングロードのほとんどが、自転車と歩行者専用の独立した道路という意味の「自転車歩行者道」。散歩やジョギングを楽しむ人もたくさんいるわけで、そこを自転車で暴走することは許されない。あくまでも、歩行者が優先だと覚えておこう。
「ながら運転」をしない
iPod等で音楽を聴きながら自転車に乗るのも、かなり危険。「音」は路上を走る上でとても重要なインフォメーションだ。それを塞いでしまっては、自分の後方にいる車の存在にも気づけないだろう。
自転車は二段階右折
自転車は道路の左側を走らなくてはいけないだけでなく、すべての交差点で二段階右折が義務づけられている。したがって、右折レーンを利用することはできない。
ちなみに、自転車は左側を走らなくてはいけないので、右折レーン/直進レーン/左折レーンがある交差点を直進したい場合も、左折レーンを走ることになる。左折巻き込みに遭う可能性があるので、十分注意しよう。先に挙げた「合図」も、こういうシチュエーションでは積極的に使いたい。交通量が多く広い道路の場合、たいていは歩道が「自転車及び歩行者専用」になっていて、横断歩道にも自転車横断帯があるので、(歩行者に注意した上で)歩道にエスケープすることも有効だ。
以上、2回に渡ってマナーやルールについて紹介してきた。どうしても小言ジジイのようになってしまうのだが、せっかくスポーツサイクルの認知度が上がってきた今だからこそ、マナーやルールを理解し、安全に楽しんでほしいと思う。
取材協力 : たかだフレンド
http://takada-friend.com/