松下電器産業は16日、パナソニックブランドによる新たな白物家電戦略について発表した。同社では、10月1日付けでパナソニックへと社名を変更。同時に、白物家電のブランドとして長年親しまれていた「ナショナル」を「パナソニック」へと統一する。
「衆知を集めた経営」の実践
今回の会見は、これを機に行われたもので、同社・大坪文雄社長は、「これまで各ブランドに分散していたすべての取り組みを、パナソニックに集中させ、世界中の従業員の一滴の汗も無駄にせず、ひとつ高いレベルの企業に進化させたい。世界でパナソニックを理解してもらうために、一丸となって取り組んでいきたい」などと語った。
大坪社長 |
同社は今年、創業90周年を迎える一方、中期経営計画「GP3」のなかで、グローバルエクセレンスへの挑戦を掲げ、グローバル戦略を強化していく姿勢を打ち出している。今回の社名変更、ブランド統一は、グローバル戦略を推進する上での決断ともいえ、国内白物家電ブランドの統一も、グローバルブランドとしてのパナソニックの訴求を強化する狙いがある。
会見のなかで、大坪社長は、創業者である松下幸之助氏の「衆知を集めた経営」について触れ、幸之助氏が1972年に語った「みんなが経営に興味をもって、お互いに知恵を出し合って、それうまく結集して、経営の芯としている、というような会社は、概して発展している。それが特にうまくいっている会社は、急速に発展している」という言葉を自ら読み上げ、「社名変更、ブランド統一を機に、この言葉を実践し、世界中にいるパナソニックグループの全社員で共有したいと考えている」とした。
さらに、今回新たにブランドプロミスを発表。「パナソニックが創るのはくらしを輝かせるアイディアです。世界中の人々に明日のライフスタイルを提案し、地球の未来と社会の発展に貢献しつづけます」を掲げ、今後、全世界に向けて、この言葉をパナソニックブランドにおける統一メッセージとして発信する姿勢を示した。
「家まるごと提案」の推進
大坪社長に続いて、登壇した牛丸俊三副社長は、パナソニックへとブランドを統一するメリットについて言及した。
牛丸副社長 |
牛丸副社長は、総務省の統計をもとに「家庭において、自動車を購入することは大きな買い物といえる。その自動車は、国産新車の金額で平均228万円。これに対して、家庭内にあるAVC家電、白物家電、キッチンおよびバスなどを含めると292万円になり、自動車を上回る。これまでは別々のブランドだったことで、同じ会社の製品だと認識されていなかった。だが、これをパナソニックというひとつのブランドで提供できる意味は大きい。家計のなかでも大きなインパクトをもたらす。パナソニックとナショナルを合わせると30%のシェアになる。これをさらに引き上げたい」とした。また、松下電器産業、松下電工の商品を含め、白物家電およびAVC商品、住設などを網羅したパナソニックプランドによる「家まるごと提案」の推進が可能になる点をブランド統一のメリットに掲げた。
松下電器産業では、1927年にナショナルブランドをスタート。1955年に輸出用スピーカーにパナソニックブランドを初めて使用し、これまで2つのブランドを併存させてきた。2004年には、松下電工とのコラボレーションによって、家まるごとの提案が可能になったものの、ブランドは別々という状況にあり、「大きなインパクトを出すことができなかった」という。
だが、「今回のブランド統一により、パナソニックという統一ブランドのもとで、家まるごと提案が可能になる。そのメリットは大きく、より積極的なマーケティングを行える」としている。
一方、今後のパナソニックブランドの白物家電の方向性として、「超・繋がる」、「超・省エネ」、「徹底したユニバーサルデザイン」を掲げ、なかでも、「パナソニックといえば省エネ。しかも、他社が追随できないダントツの省エネ性能を目指す」とした。
さらに、パナソニックが持つ洗練性、先進性といったイメージを白物家電にも展開する方針を示すとともに、白物家電に留まらず、AVC商品にもつなげていく方針を公表。外出先から携帯電話で家電製品を操作したり、インターフォンと携帯電話を結びつけることで、外出先にいながらも訪問者を確認するといったことも可能になるといった商品提案を加速する考えだ。
加えて、パナソニックブランドの商品では、先進、洗練による「憧れ」と、信頼による「やさしい」を追求する方向性を打ち出し、同時に、白物家電製品のデザイン面での大幅な改善を図っていく姿勢をみせた。
本格始動まであと2週間
また、9月30日から「Hello! Panasonic」をキーワードに、白物家電製品のブランド変更を訴求する計画を明らかにした。女優の吉瀬美智子さんを中心にパナソニックファミリーとして、テレビCMを展開。年内には、過去最高となる10万本のテレビCMを放映し、白物家電におけるパナソニックブランドの浸透を図る。
さらに、旧ナショナルショップの看板を2009年3月までに、すべて「パナソニック」に付け替えるほか、商品パッケージも、パナソニックによる統一デザインへと変更。東京・汐留および大阪・OBPに設置しているナショナルセンターを、「パナソニックリビングショールーム」へと名称変更する。
加えて、水戸黄門などで人気を誇るTBS系の「ナショナル劇場」も、「パナソニックドラマシアター」へと変更するという。社名変更まであと2週間あまり。いよいよパナソニックによる、パナソニックブランドの白物家電戦略が本格的に始動することとなる。