――FPGA業界にもベンチャーが登場するようになりましたが、こうした動きはどう見ていますか。
FPGAには2つの重要な特質がある。1つは、サポートをしなければいけないテクノロジーの幅が非常に広いこと。そのため、それだけの知識を持ったエンジニアを養成していく必要がある。もう1つは、システムを開発した後のサポートが多岐にわたり必要になることだ。
ニッチな市場に対する場合であれば、そうした問題も無視できるかもしれないが、規模の小さい企業がFPGAで大きな利益を上げようというのは、ある意味難しいのではないかと見ている。
Xilinxの研究開発費は年間約4億ドルで、シリコンの開発のほか、回路やIP、メソドロジなども開発しなければいけないので、それだけの投資金額が必要となる。それに加え、顧客に製品を提供する上で、パートナーを含めて1,000名規模の人員を抱える必要がある。それくらいの人員を抱えなければ、販売していけないくらいFPGAは複雑であり、決してベンチャーが急激に成長できるような簡単なビジネスではない。
――少し話しを変えます。日本地域の売り上げが全社に占める割合は10%強程度ですが、この地域をどのように見ていますか。
とても重要な地域だと考えている。デジタル家電、車載、通信、医療、計測など多岐にわたる分野で需要があるし、高いポテンシャルも持っている。こうした多様なマーケットに対し、我々が製品を提供していくという流れを考えれば、現在はコストがかかるASICから柔軟な対応が可能なFPGAへの移行が図られる移行期にあり、今後、メリットを享受できる地域だと思っている。私がCEOに就任してから、すでに3回日本に来ていることを見ていただければ、この地域をどれだけ重要視しているか分かってもらえると思う。
――その重要な市場として見ている日本地域(ザイリンクス株式会社)の社長に日本でのビジネス経験が長いSam Rogan氏を5月に据えました。この意図はどこにあるのでしょう。
Rogan氏は20年以上のエレクトロニクス業界での経験を持ち、日本で15年間ビジネスに携わってきた経験を持つ。日本という市場を熟知しているし、何よりもXilinxの主な顧客と、これまでの経歴から深く結びついているという背景も大きい。
顧客との関係は今後、従来と比べるとより深い関係が求められるようになっている。どういうことかと言えば、今まではシステムの周辺分野などでFPGAは使われてきたが、システムのクリティカルな部分で使用されるという事例が増えてきている。そういう環境に対して、日本の顧客と深い関係を築いてきているRogan氏は、まさにザイリンクスを任せるのに適材であると判断した。
――それでは最後の質問です。CEOとして、将来Xilinxという企業をどのようなものにしていたいと思いますか。
長期的に見てXilinxは現在の移行期にあると見ている。10年前はシステムの周辺機器での採用が主だったが、現在ではよりシステムの中核での採用が進んでいる。
将来的には理想として考えているのは、2万社の顧客企業におけるTOP50に対し、より短期間に効率よく製品を開発できるソリューションの提供をしていきたいと考えている。またすべての顧客企業に対し、プラットフォーム中心型のアプローチを行い、より良いプラットフォームの提供を行っていかなければならない。この2つの目標を同時に達成するのは決して簡単なことではないが、目標として取り組んでいきたいと思っている。
拡大するFPGA市場への対応も考えていかないといけない。FPGAの市場規模は2007年で約36億ドル。これが5年後には4倍程度に拡大することが見込まれる。こうした市場の拡大は、ASIC/ASSPからの移行が中心であり、こうした部分をしっかり掴んでいければさらなる成長ができるはずである。