「Word」や「Excel」に代表される「Microsoft Office」のアプリケーションソフトの利用スキルを世界各国の学生同士が競い合う、それが「Microsoft Office 世界学生大会」である。

「Microsoft Office 世界学生大会2008」とは

「Microsoft Office 世界学生大会2008」の決勝戦が、2008年7月31日(現地時間)ハワイ島『Hilton Waikoloa Village』にて開催された。 「Word」や「Excel」に代表される「Microsoft Office」のアプリケーションソフトの利用スキルを世界各国の学生同士が競い合う、それが「Microsoft Office 世界学生大会」である。

「Microsoft Office 世界学生大会2008」のポスター。MOSやMCASの受験の際、または自分のスキルの腕試しとしてトライしてみるのもいいだろう

世界大会は、「Microsoft Office Specialist(以降MOS)」の有資格者、または「Microsoft Certified Application Specialist(以降MCAS)」の有資格者である学生のみが参加することができる。特にMOSは、日本でも累計受験者数200万人を超す人気の資格で、アプリケーションソフトを扱う技術と応用力、正確さやスピードが問われるものである。133の国と地域で実施される世界で通用する資格であるため、Officeアプリケーションの基本操作が要求されるビジネスマンから、就職活動に取り組む学生まで、スキルアップの一環として、いま幅広い世代から注目を集めている。

「Word」部門日本代表 井原侑子さんに聞く

僅か2週間で日本代表の座を掴んだ井原侑子さん。半角と全角の違いもわからないというほどの初心者だったにも関わらず驚異的な吸収力で世界戦へのチケットを手に入れたのは、彼女の真摯な学ぶ姿勢があったればこそ

今年で6回目を迎えた世界大会に、「Word」部門日本代表として選ばれたのが、お茶の水スクール・オブ・ビジネスに通う井原侑子さんだ。じつは彼女、「Word」というOfficeアプリケーションに真剣に取り組んだのは学校に通い始めてからなのだとか。「パソコンに触りだしたのは小学5年生ぐらいからです。それも、インターネットをちょっと見るくらいで。「Word」は触ったことはありましたが、半角と全角の違いもわからないほどでした」

そんな彼女が世界大会に挑戦することになった経緯はこうだ。井原さんが通うお茶の水スクール・オブ・ビジネスでは、入学後MOS合格へチャレンジしてみましょう、という目標があり、井原さんも当初は「資格試験に不合格にならないように頑張ろう」程度に考えていた。手応えとしては「まあ、できたかな?」というくらいのもので、まさか自分が日本代表に選出されるなどとは思ってもいなかったそう。しかし、井原さんを指導する先生の言葉を聞き、井原さんは成るべくして日本代表になったと知る。

「彼女は必要とされる操作の選択スピードが抜きん出て速い。それでいて的確なのです」と語る。そう、"的確で速い"。50分という制限時間の中、井原さんはたった15分で全問を解いてしまった。結果は満点。満点を取る学生は多いが、彼女はその驚異的なスピードで日本代表の座を勝ち取ったのだ。

そこで気になるのが、一体どれほどの猛特訓をしたのかだが……彼女は特別なことは一切せず、学校のカリキュラムに従って勉強しただけなのだという。入学後1日6時間、2週間に渡って「Word」に取り組んだだけ。約60時間程度の学習しかしていないというから驚きだ。彼女の吸収力と、それをアウトプットできる能力がいかに長けているかが伺える。

新たな発見があるから「Word」は面白い

「Microsoft Office 世界学生大会2008」には、世界47の国と地域から43,748名のエントリーがあり、ハワイ島での決勝戦には20の国と地域から日本代表の井原さんを含む44名が参加した。競技の方法は厳正で、数名ずつのグループに分けられ、ホテルの1室で行われる。壁に向かい「コ」の字に配置された机のパソコンで出題される問題を解いていくというものだ。異国の地に、各国の学生たちが集められ、その雰囲気に緊張しきりだった井原さんは、決勝当日トップバッターの組ということもあり、とても手応えと呼べるものは得られなかったという。 「決勝戦に備えてしっかり勉強してきましたが、思いのほかエキスパートレベル(井原さんはスペシャリストレベル)の問題があり難しかったです。終了後の手応えがなく自分自身悔しさがこみ上げてきました」

こちらは世界大会の表彰式でのひとコマ。右からふたり目が井原さん

ウェルカム・ディナーの前に、各国の代表の学生たちと

結果、若干16歳の高校生、チャワナット・ナーカサンさん(タイ)が「Word」部門の世界チャンピオンの栄光に輝いた。彼女は残念ながら入賞には至らなかったものの、「Word」というOfficeアプリケーションに新たな楽しさを見出したようだ。「あまり深く考えていなかったですが、Wordって書類を作成するOfficeアプリケーションですよね。日付が挿入できて、飾り付けができて、文字を強調するぐらいにしか考えていなかったけど……すごくいろいろな機能があって、"こんなことできるの?"と思えるようなことも、試行錯誤していろいろな機能を試しているうちにできちゃった!といったところがおもしろい。難しいけど、とても奥が深いOfficeアプリケーションなのだと思いました。今回の世界大会の試験からも、新たな使い方を発見したものもあって、これからもWordを勉強して完璧に扱えるようになりたいと強く感じました」

カナダから参加したディストリビュータのスタッフと

また、今回の世界大会で、井原さんは貴重な異文化コミュニケーションを満喫したようだ。「英語が上手に話せないので、最初は困惑しました。でも、仲良くなってくるとコミュニケーションが取りたい。そのうち相手の言葉をじっくり聴くことで、単語も拾えるようになって、うろ覚えの単語でコミュニケーションを始めました。"意外に英語できるかもしれない!"って、ちょっと自信がついたところもあります(笑)。そうやって、最終日にはみんなと冗談を言い合って笑い合えるほどになりました」

和気藹々と異国の学生とコミュニケーションを図る井原さんと

同行したスタッフの話では、「日本の○○って歌、知ってるよ」と話しかけられ一緒に曲を口ずさんだり、その当時日本で流行っていたドラマの話までしていうから、生来、井原さんは無類の吸収力を兼ね備えているのかもしれない。今回の世界大会出場の中で、井原さんは「とても貴重な経験ができた」と語る。それは、日本代表としてのプレッシャーを抱え世界の舞台で戦った華々しい戦歴だけでなく、多様な文化を持つ学生たちとのコミュニケーション、彼女自身が英会話で実践したように「勇気を持って飛び込めばできる」という経験だろう。そして、世界との接点に触れたことで、彼女は「Word」を極める!という新たなモチベーションを得た。

Wordを駆使する仕事へ

そんな彼女の気になる今後だが、まだお茶の水スクール・オブ・ビジネスに入学したばかりということもあって「こういった職業に就きたい」という明確な目標はないそうだ。「まだ就職活動は行っていませんが、Wordを使う仕事に就きたいです。それも、ふつうの事務職ではないもの」とのこと。新入社員の彼女が、短時間で鮮やか且つ的確なWordドキュメントを作成するスキルを持っている時点で、他の同僚から一歩抜きん出た存在となるかもしれない。改めてMOSがいかに実践的で人気のある資格なのか、その理由の一端を垣間見た気がした。

最後に、まったくの「Word」素人から2週間で世界レベルへとステップアップしていった井原さんから、これからOfficeアプリケーションを学ぼう、特に「Word」を学ぼうという人たちへのアドバイスを伺ってみた。「Wordは奥が深くて難しいのですが、いろいろと機能を試していくとどこにどんな機能があるか掴めるようになってきます。触れば触るほど新たな発見があり楽しいので、難しく考えずにまずはトライしてみてほしい」

苦手意識を持たずに、なんにでもトライしてみる。「Word」に限らず、すべてのことにおいて、彼女はそのスタンスを貫くのだろう。世界大会への挑戦を通じて得られた数々の貴重な経験は、今後の井原さんの人生にも大きな影響を与えたようだ。