Celestiaの概要とインストール
Celestiaは、いわば宇宙旅行がシミュレートできるフリーソフトです。ユーザーは太陽系の惑星間の自由な航行と時間の操作が可能で惑星が動く様子や宇宙で起こる現象を間近で観測することができます。また、本ソフトには多くのアドオンがアップロードされており、好みに応じて機能を拡張できるようになっています。今回は、その惑星間航行の機能とアドオンの利用方法を中心に解説していきます。
ソフトの実行ファイルは、作者のサイトからダウンロードできます。ソフトの最新バージョンは原稿執筆時点で1.5.1です。WindowsのほかMac OS X、Linuxにも対応しています。サイトにはスクリーンショットのギャラリーもあるので、実際の操作画面を見てソフトのイメージをつかむのも良いでしょう。ダウンロードした実行ファイルをダブルクリックすると、インストールが始まります。基本的には「Next」ボタンを押し続けていくだけでインストールは完了します(図1)。
ソフトを起動させると、画面には地球が現れます(図2)。左ドラッグで画面の移動、右ドラッグで天体を中心にした全方位への移動、つまり地球儀を回すような操作ができます。惑星との距離の調整はマウスホイールで行います。初期状態では地球の表面の描画には粗さが目立ちますが、後述のアドオン機能を使うことで、緻密な地表を表示させることも可能です。
セットアップ画面です。ライセンスの定める条件に同意するか、デスクトップにショートカットアイコンを作成するか、など一通りのことが問われます(図1) |
起動すると、スプラッシュ画面を経て、画面中央に地球の姿が現れます。後述の表示オプションで変更をした場合は、再起動時にその設定が保存されます(図2) |
Celestiaの基本動作
地球に接近するハレー彗星を観測してみましょう。ツールバーの「表示」→「表示オプション」では、画面に表示させるものを取捨選択できます(図3)。ここでは「軌道/名称」の枠内の、「彗星」の「軌道」と「名称」にチェックを入れます。次に、ツールバーの「時間」→「時刻を設定」で地球に接近した1986年2月上旬にします(図4)。そして、「Enter」キーを押して(図5)、「halley」と打ち込み、再び「Enter」キーを押すと画面の左上には天体の名称、距離、半径など簡単な情報が表示されます。
ここでキーボードの「G」キーを押すと一気に彗星に近づくことができます。マウスホイールで少し彗星から離れ、ある程度まで距離をとると、やがて彗星の尾が見えてくることでしょう。キーボードの「J」(時刻の順送り、逆送りを切り替える)、「K」(時刻の経過をスローにする)、「L」(時刻の経過を早める)を使い、彗星が極端な楕円軌道上を移動する様子を再現してみましょう。図6では、ツールバーの「画面」→「画面を上下に分割」、「画面を左右に分割」を利用して彗星を3つの視点から観測しています。
Celestiaのアドオン
Celestiaはノーマルの状態でも十分に楽しめるソフトですが、アドオンを使うことにより、画面に表示させる天体のグラフィックを変えたり、人工衛星を増やしたり、果ては架空の人工物を出現させたりすることが可能になります。公式サイトには、アドオンのデータが細かくジャンル分けしてアップロードされており、欲しいファイルが手軽に入手できます(図7)。
拡張機能を有効にする方法は、ファイルによって異なります。ダウンロードしたファイルに入っている説明書き(readme.txtなど)をよく読むことが大事です。基本的には、圧縮ファイルをダウンロード後に解凍したものを、Celestiaのインストール先(通常は"C:\Program Files\Celestia")の、「extras」フォルダ内にペーストすることで有効になります(下記の例を参照)。
Motherlode(主脈)と名付けられたこのサイトでは、「Solar System」(太陽系の惑星の地表データ類)、「Spacecraft」(スペースシャトルや探査機のデータ類)など、多種多様なアドオンをダウンロードすることができます(図7) |
アドオンのインストール方法の一例
解凍されたファイルの内容物をextrasフォルダ内にペーストするだけのもの 例:ボイジャー探査機を出現させる「voyager-full」であれば、圧縮ファイル解凍後にdataフォルダ、texturesフォルダ、modelsフォルダ、voyager.sscを全てextrasフォルダに入れる。
アドオン適用後、右クリックのメニューから表示を切り替えるもの
例:火星の表面を詳細表示させる「mars_m46_dds_vt」
であれば、texturesフォルダ、mars_m46_shaded_dds.ssc
をextrasフォルダに入れて本ソフトを再起動後、火星表面で右クリック→AltSurface(A)→m46shaded_dds
を選択することによって、グラフィックが変更される。
Celestiaフォルダ内のdataフォルダの中にペーストするもの
例:テンペル第1彗星を出現させる「Tempel1」であれば、tempel1.xyzをdataフォルダに、JACKtempel1-xyz.sscファイルをextrasフォルダに入れる。複数のアドオンを試してみたい方は、本ソフトのインストール先のCelestiaフォルダへ簡単にアクセスできるよう、デスクトップ上にフォルダへのショートカットを作っておくことをお勧めします。
試しに映画「2001年 宇宙の旅」に登場するようなキャラクターを宇宙空間に出現させてみましょう。「Motherlode」のサイトから、「Fictional」(映画に登場する架空の人工物のデータ類を含む)を選択、「2001」→「ships」→「2001 Spacecraft Pack」を選んでファイルをダウンロードします。
圧縮ファイルを解凍すると「2001_ships」フォルダの中に5つのフォルダと4つのsscファイルがありますので、これを全て「extras」フォルダに入れます。これでアドオンの適用が完了です。Celestiaを再起動して、ツールバーの「ナビゲーション」→「太陽系ブラウザ」→「地球」を選ぶと、地球の下の階層に、関連する項目が追加されているのが確認できます(図8、9)。
「太陽系ブラウザ」ウィンドウを開くと、太陽系の天体名がツリー表示されます。天体の名称が不明な場合は、前述の「Enter」を使ったアクセスができないので、こちらの機能を使用します(図8) |
映画「2001年 宇宙の旅」に出てくるような宇宙ステーションと旅客用宇宙飛行機オリオン号のグラフィックです。(図9) |
昨今、インターネットの世界には良質なフリーソフトが溢れています。そのため、似たようなことができるソフトが複数存在することも珍しくありません。天体系のフリーソフトも例外ではなく、Celestiaと共通点の多い機能をもつものには「Mitaka」があります。Mitakaはプラネタリウムを再現する機能も併せ持つソフトで、使用するPCにそれなりのスペックが要求されます。
それに対し、Celestiaは惑星間航行機能に特化しており、初期状態での操作が軽いのがユーザーにとっては嬉しい点です。そしてアドオンの豊富さは大きな魅力でしょう。自身のPCの環境に合ったソフト、使用する目的に沿ったソフトはどれか、実際にいくつかのソフトを使い比べてみることをお勧めします。