「得意な手法にこだわり過ぎるのは損」
――では、真島監督が映像表現でこだわるのは、どんな部分なんでしょうか?
真島「手法に関しては、『こだわりがない事がこだわり』という感じですね」
――総監督として、他のクリエイターの作品をご覧になった感想を訊かせてください。
真島「とにかく単純にどの作品も楽しめましたね。でもそれが大事なんです。この映画を見に来る人は、最先端のCGや綺麗なアニメが見たいという人でなく、良い意味でしょうもない楽しい物を見たいという人なんだろうなと思ってますから」
――お話しを伺っていると、とにかく手法を問わずに、楽しい事をやりたいという真島監督のお考えがよくわかります。
真島「今までに誰もやってないような事を、ワイワイ楽しくやれればいいってだけなんです。僕は、作り手が楽しまないと、お客さんも楽しめないと思ってるんです。まずは、僕ら作り手が楽しむ。『独りよがり』と言われるかもしれないが、楽しんで作れば、楽しんでくれる人もいるだろうというぐらいの感じなんです。世の中を笑わせよう、楽しませようという大志はないんです。仲間と『祭りをやろう』みたいな気持ちなんですね」
――そのお祭りが具現化した『東京オンリーピック』ですが、2時間以上とかなりボリュームのある作品になりましたね。
真島「元々は、DVDの企画だったので、1競技あたりの時間も5分ぐらいというあいまいな縛りだったんです。そしたら劇場公開の話が出てきて、全ての競技を入れたら、かなり長い作品になってしまったんです。だから海外の3競技が劇場版には収録出来なかった。それだけが心残りです。あまり長すぎると見ている人も辛いですからね(笑)。その分、DVD版では全てがたっぷり楽しめますよ。劇場版では10分を越えている長い競技は少しカットしてもらったのですが、DVD版では3枚組完全版として、どの競技もノーカットで収録されています」
――真島監督は『東京オンリーピック』をどう観て欲しいですか?
真島「気軽に、肩肘張らずに楽しんで欲しいですね(笑)。笑いのセンスってそれぞれ細かく人によって違うと思うんで、全部でなくても、どれかお気に入りの作品をひとつでも見つけていただけたら嬉しいですね。映画というより、あくまでもスポーツ大会なんで、ワイワイ言いながら楽しんで欲しいですね」
――一般からの投稿作品もwebサイトでは募集されていますね。
真島「投稿作品で賞を受賞した3作品はDVDにも収録する予定なんです。本当は劇場版にも入れたかったぐらいなんです。プロとアマの作品を混在させたかった(笑)」
――最後に、真島さんのようなプロの映像クリエイターを目指す方々に、ひと言お願いします。
真島「自分の好きな手法を追求するのも素敵な事だし、僕はそれをやられている方を尊敬しています。ただ、あまり手法にこだわり作品がそれにひっぱられるのは損だなあという気もします。自分を作品で表現するためには、それに適した手法を選ぶ事のほうが大切なんです。とにかく視野を広げることが大事だと思いますね。CGをやって行きたい人ほど実写映画を見るべきだし、実写をやりたい人はアニメーションを見るべきだと思います。それによって得られる物を、自分の得意な手法にフィードバックすることが大切だと思います」
真島理一郎
1972年生まれ。佐賀県出身。千葉大学工学部工業意匠科卒及び同大学院終了後、デベロッパーにて商業施設プランニングや環境デザインに携わる。その後、デジタルハリウッドにて3DCGを学ぶ。同校の卒業制作作品『スキージャンプ・ペア』(2002年)で、数々の映像コンテストでグランプリを受賞。世界30カ国以上で受賞上映される。DVD化された本作はシリーズ累計50万部以上のヒットとなる。長編映画『スキージャンプ・ペア Road to TORINO2006』(2006年)では総監督を務める。最新作は『東京オンリーピック』(2008年)
東京オンリーピック
『スキージャンプ・ペア』で有名な真島理一郎総監督を中心に、有名無名を問わず多数の映像クリエイターたちが「架空のスポーツ競技」を創造した。実写から3DCGアニメーションなど、様々な映像スタイルで描かれた「架空のスポーツの祭典」が開幕する。8月9日~8月24日、新宿バルト9にて開催(公開)。9月26日には追加映像が多数収録されたDVDが発売予定。本作の公式ガイドブックをマイコミ読者10名にプレゼント。応募はこちらから
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会
撮影:中村浩二