Booksベストセラー週間総合ランキング7月25日~7月31日では、『ハリー・ポッターと死の秘宝』(J.K.ローリング/松岡佑子訳)、『クラッシュ・ブレイズ マルグリートの輪舞曲』(茅田砂胡)、『楊令伝(6)徂征の章』(北方謙三)の3タイトルが新登場でトップテン入りした。

7月25日~7月31日のBooksベストセラー週間総合ランキング(日販調べ)

順位 書籍名(出版社) 著者
1位 ハリー・ポッターと死の秘宝(静山社) J.K.ローリング/松岡佑子訳
2位 クラッシュ・ブレイズ マルグリートの輪舞曲(中央公論新社) 茅田砂胡
3位 AB型 自分の説明書(文芸社) Jamais Jamais
4位 B型 自分の説明書(文芸社) Jamais Jamais
5位 A型 自分の説明書(文芸社) Jamais Jamais
6位 夢をかなえるゾウ(飛鳥新社) 水野敬也
7位 ハローバイバイ・関暁夫の都市伝説(2)(竹書房) 関 暁夫
8位 かわいいこねこをもらってください(ポプラ社) なりゆきわかこ/垂石眞子
9位 楊令伝(6)徂征の章(集英社) 北方謙三
10位 かいけつゾロリ カレーVS.ちょうのうりょく(ポプラ社) 原ゆたか

新登場1位の『ハリー・ポッターと死の秘宝』(J.K.ローリング/松岡佑子訳)は、世界中に一大旋風を巻き起こしたファンタジー小説の最終巻。23日に日本語訳が発売解禁となり、待ちかねたファンがこぞって買い求めた格好だ。最終巻ではこれまで張り巡らされた膨大な伏線が回収され、魔法使いの少年と悪の魔法使いを巡る壮大な物語に終止符が打たれる。

新登場2位を獲得した『クラッシュ・ブレイズ マルグリートの輪舞曲』(茅田砂胡)は、宇宙を舞台にした壮大なファンタジー小説シリーズの新刊。それぞれ異なる人の視点から描かれている3篇の中篇小説が収録されているが、全体を通すとひとつの事件につながっているという意欲作。

9位の『楊令伝(5)徂征の章』(北方謙三)は『小説すばる』にて連載中の中国歴史小説。『水滸伝』の続編として書かれている本作は、馴染みがなく取り付きにくい観のある題材を平易な言葉遣いや台詞回しで描いており、読者が物語に入っていきやすいのが特徴だ。

単行本フィクション部門では、第139回直木賞に選ばれた『切羽(きりは)へ』(井上荒野)が新登場で5位にランク入りしている。穏やかな島で夫と暮らしていた女性が運命の男性と出会い、惹かれていく。「それ以上先へは進めない場所」を意味する「切羽」に向かう男女の姿を描く。

今週の注目

がちんこ農業生活 (ブルース・インターアクションズ/そがしんいち/税別1,600円)

農業に対してはまったく対照的なふたつの反応がある。生計を立てる手段としての農業は「ダサイ」という言葉でくくられることが多い。一方、小金を貯めた人や退職した人はなぜか田舎に家を買って「野菜でも作ろう」と言うのがお決まりだ。そして後者はテレビなどでもかっこいいライフスタイルとしてしばしば取り上げられる。

考えてみるとプロよりもアマチュアが持ち上げられるというのも変な話なのだが、そんな「日本の農業」について専業農家自らが思いの丈をつづったのがこの本。著者は新潟の農家に長男として生まれるが、家業を継ぐのがいやでアメリカへ逃亡し、その後青年海外協力隊でアフリカ・セネガル・フランスなど各地を転々としたというユニークな経歴を持つ。現在はブログ「フリョウノウミン」で農家の日々をつづっている。

まだ20代でトマト農園を経営する著者は、農業や農家に対する誤解が少なくないことを嘆く。たとえば、「農薬は危険で有機栽培は安全」「農家は自家用の作物には農薬をかけない」など。食に関する情報がマスコミからの一方通行になっている今日、対面販売やブログでの情報発信を通して農家の本当の声を伝えたいというのが著者の考えだ。

生きていくための手段として農業をとらえる著者は、「趣味的」な農業の広まりは本来の農業をつぶしかねないとも警告する。農業人口が増えたとしても「あまりにも善意の価格」で市場に出されれば専業農家は食べていけないと。食料自給率や地産地消が話題になる中で、究極にローカルな視点から描かれた本著は意外にも日本の農業の本質を俯瞰的にとらえているのかもしれない。