スマートフォンの雄であるウィルコム、シャープのペアが「0から作り直した」という期待の新機種、「WILLCOM 03(WS020SH)」について一週間ほどお貸しいただけた。お借りした試用機にて、本ソフトウェア編ではソフトウェアの面から、インターネット、メール等を主にソフトウェアレビューを行っていきたい。

現在、すでに発売されており各所レビューやブログ記事等あるが併せてご覧頂き、購入を検討されている方は参考にしていただければ幸いだ。

尚、カメラ等のハードウェアに関する項目についてはあるかでぃあ氏による『ハードウェア編』にて解説する。

OS

今回、意外にも大きく謳われていないものの、WILLCOM 03はWindows Mobile最新バージョンであるWindows Mobile 6.1が日本で初めて搭載されている(6月27日現在)。

Windows Mobile 6.1の表示が確認できる

Windows Mobileは組み込みOSであるWindows CEを基礎として、PDA、携帯電話向け等に提供されておりWILLCOM 03にはPDA向けのものが搭載されている。携帯電話向けのWindows Mobileでは、PHSの通信方式に対応していないためPDA向けOSに独自にPHS向けソフトウェアを搭載し、通話、データ通信を提供している。

Windows Mobile 6.1では基本的に下位互換となり、Windows Mobile 6.0で動作したソフトは 利用可能となるが、TCPMP(動画プレイヤー)などの有名な一部ソフトでも動作不具合が確認されており、完全な動作を約束するものではないので導入されるソフトウェアについてはWindows Mobile 6.1に対応済みであるかどうか確認の上、利用されたほうがよいだろう。

Windows Mobile 6.1では、企業のシステム管理者、運用向けの機能が強化されておりアクティブディレクトリへの参加などがサポートされている。

”ドメインへの登録”が追加されている(画面右上)

その他、ユーザ向け機能としてはタスクマネージャが搭載された。Windows Mobile 6.0では「設定」-「メモリ」-「実行中のプログラム」と、深い階層でプロセスの終了を促していたが「プログラム」-「タスクマネージャ」と多少、扱いやすくなった。メモリの使用率以外にCPUへの負荷も確認できるなど、よりPC向けになったと言える。

タスクマネージャの画面

ホームメニュー編

W-ZERO3 [es] Premium versionより搭載されたホームメニューがよりタッチパネルに特化したUI(ユーザーインターフェース)をもってWILLCOM 03に搭載された。

今回はセンターキーでなく、「Menu」ボタンを押す事で起動されるため、以前はバッジしていたW+Infoや、Today画面のフォーカスの上下移動が損なわれる事無くワンプッシュでアクセス可能となった。

ホームメニューは2段落構成で表示され、右段落にはショートカット、左段落にはインターネット、メール、ライフツール、データBOX、とカテゴリに分けられている。各カテゴリにはカテゴリに準じたショートカットが設定されており、内訳は下記の通りとなる。

起動直後はカメラ、地図・乗り換え、辞書、カレンダー、電卓

メール 受信ボックス、送信ボックス、新規テキスト、新規デコラティブ、新規手書き、メール受信

インターネット ヤフー、Google、mixi、msn、goo、WILLCOM

ライフツール アラーム、ToDo、テキストメモ、赤外線、名刺リーダ、コラムリーダ

データBOX マイドキュメント、マイピクチャ、マイミュージック、個人用、microSDカード、検索

SETTINGS により電話機設定一覧へ

メニューのカスタマイズは現在不可能な様で、ワンセグなどホームメニューに記載の無い物はスタートメニューから直接アクセスする事になる。

ホームメニューの動き自体は昨今の流行の動きのあるインターフェースを踏襲しており カテゴリ選択時には「する」っと右ペインにショートカットがおりてくる。動作音はともすれば8bitゲーム機のようだが、アイコンも大きく親指でのタッチを想定したレイアウト、画面遷移に関してはついつい人にみせたくなる。

W-ZERO3 [es]、Advanced/W-ZERO3 [es]より着実に進化してきた点でありウィルコムがスマートフォンを提供する意義でもあるところなので、例えば「SETTINGS」の先の画面で突然Windwos Mobileの素っ気ない画面に戻る、ワンセグなどのデフォルトで提供されているアプリ、機能がフォローされていない、等、多々言及したいところはあるものの、スマートフォン初心者にはかなり優しいつくりであり及第点はあげられる、といったところだろう。

ネット編

WILLCOM 03の進化ポイントのひとつでもあるOpera Mobile 9.5に関してみていこう。 インターフェース、操作方法ともがらっとかわりまるでiPhoneのSafariのような挙動となっている。

タッチパネルが感圧式であり、1点しか認識できないことからiPhone特有の無段階ズームであるピンチイン(つまむ)/ピンチアウト(つまんだ指を広げる)といった動作はできないがダブルタップによるズームイン、ズームアウトをサポートしている。

ズームアウト時

ズームイン時

そのため、リンクを辿る/記事を読むためのズーム、が似通った操作方法であり意図しない動作をすることもある。

また、ATOKにかわりIMEとして搭載されたケータイShoinとの相性はあまり良くないようで、Operaの割り当てたショートカットキーと文字入力時に常用するキーがバッジしており誤入力時に「クリア」=「戻る」などと動作してしまうことも……。

ズーム、スクロール自体はスムーズで慣性にしたがったスクロールは慣れてしまうと通常のスクロールに戻ったときに違和感を感じるようになるほど便利だ。

携帯表示モードというものも改めて用意されこちらは携帯電話に搭載されているOperaのスモールスクリーンに近いものとなりニュースサイトなど多段構成のサイトも左右のスクロールなしに上下一列にレイアウトしなおしてくれる。

通常表示

携帯表示

残念ながら、本記事執筆時においてはFlash対応版のOperaは搭載されておらずFlashを利用した動画サイト、Youtubeやニコニコ動画などの閲覧、動作は確認できていない。 タッチパネルとの相性という点では格段にあがっており常用するには特段困る点などはないだろう。

メール編

WILLCOM 03では基本的な機能はかわらないもののインターフェース、操作の”作法”等を携帯電話ライクに変えた新しい「ZERO3メール」が搭載されている。 こちらも進化ポイントのひとつであり、ユーザからの要望に答える形でユーザビリティを高めたアプリケーションのひとつでもある。

以前はOutlookライクに表示され、またOutlookでは使い勝手が悪いという点に端を発していたためか非常にPC的な見た目、機能が搭載されていた。ところが今回は、携帯電話を強く意識した操作方法、インターフェースとなっている。

「クリアキー=戻る」、「設定=起動後メニュー末尾に表示」など片手操作で完結できる上に、新しくスマートフォンを手にしたユーザも迷いなく使えるメニュー構成、動作となっている。

「設定」が右下メニューより画面中央下に配置された

また、今回からPCアカウントの追加については「Gmail」「Yahoo!」「OCN」がデフォルトでサポートされており「プログラム」-「プロバイダメール設定」からアカウント、パスワードのみの入力でメールアカウントが追加可能となっている。「Other」を選ぶことでその他のプロバイダのアカウントでも追加可能となり同ヘルパーアプリケーションからはメール受信時のSSLの有無も設定できる。

代表的なフリーメールはアカウントとパスワードの設定のみ

それ以外はメールサーバの設定等も行う

デコラティブメールにも対応しており、PCでいうHTMLメールのやりとも可能だ。特段利用するというものでない、という人でも受信が可能であることから可読性が高まるだろう。

プロバイダメールを片手操作でチェック可能となり、携帯電話メールの用にも扱え携帯電話では受信不可能なサイズ、ファイルなども受信、送信もできることから、「メールマシン」としての価値は高まったのではないかと伺える。

その他付属アプリ編

WILLCOM 03では、コンシューマ向けスマートフォンでありまたその歴史の長さからバンドルされているアプリケーションが多様である。同記事中で全ての詳細を紹介するわけにはいかないので以下に付属アプリケーションの一覧と概要を案内しておこう。

アプリ名 概要
SpriteBackup バックアップアプリケーション
クイックメモ Todayに表示されるメモ
デ辞蔵 英和、和英、国語辞書、ならびにWiki検索
Adobe Reader LE Adobe PDF閲覧ソフト
Magic Loupe 画像認識ソフト
コラムリーダ 文字認識ソフト(OCR)
コミック&ブンコビューア 電子書籍閲覧ソフト

スマートフォンとして歴史があるシリーズであり、また「0」からみなおしているだけあって非常に小慣れてきている。ユーザ側の受け入れ態勢も整っているせいか、以前ほどの熱量は感じられないものの「人にオススメできるスマートフォン」が初めて出て来た、といった感じだ。

多少のカスタマイズは現在も必須ではあるものの、1つ2つのアプリケーションのインストールで「携帯電話としてつかえる」状態のプロダクトとなっている。 また、イルミネーションキーも今夏、旺盛するであろうタッチパネル携帯の命題である 操作感の損失を補う解として十分な実力を秘めているのではないだろうか?

スマートフォンデビューを検討している方々にはオススメの逸品に仕上がったと言えるだろう。

(29a/K-MAX)