日本のスマートフォン市場を牽引するウィルコムから、スタイリッシュなフルフラットデザインを採用したスマートフォン・「WILLCOM 03」(WS020SH)が発売された。そのデザイン性や機能性などに焦点を当て、試作機によるレビューを行う。

ファッション性を前面に押し出したフルフラットデザイン!

これまでのスマートフォンのイメージを覆すライトなデザイン

本機は現在のスマートフォンブームを牽引するシリーズであるW-ZERO3シリーズの事実上の後継機種である。これまでの機種と比較しても非常にコンパクトかつスタイリッシュなデザインであり、一般的な携帯電話にも引けを取らないデザイン性を実現している。

液晶面は、SoftBank端末の921SHのようなハードウェアキーのないフルフラットサーフェイスデザインを採用。液晶部分とキー入力部分の境界を完全に取り払う事で、画面をタッチする事で操作を行うWindows Mobileマシンの特性を十分に引き出している。

液晶面のキー入力領域には「イルミネーションキー」と呼ばれる特殊な入力装置を備える。本体側面にあるイルミネーション切替/電源キーを押す事で、状況に応じてダイヤルキーモードとカーソルキーモードに表示が切り替わる。これによりキー操作領域の小型化に成功し、本体サイズの小型化と薄型化に貢献している。イルミネーションキーの操作感については、別の項目にて詳しく解説する。

独特の操作感を持つイルミネーションキー。不思議なインターフェイスである

本体下面を横へスライドさせると、本機の特徴でもあるQWERTYキーボードが出てくる。キーボードの使用感については後述するが、デザイン面では非常にビビッドなカラーリングが目を引く。本体カラーにもよるが、均質で平坦さが強調されたピアノブラックの液晶面に対し、それぞれの本体カラー一色に染められたキーボードは実に派手だ。

この液晶面の無機質感と、キーボード面のギミック感のギャップにも、本機に込められたファッションセンスを感じる。使う者に所有者欲を与えるデザインと言えよう。

色のコントラストが美しい。どの色を持つかで所有者の個性が現れる

筐体側面にはイヤホン端子の他、画面回転/カメラ起動キーやワンセグキー、イルミネーション切替/電源キーなどが備えられ、ボタン操作ひとつでモードを切り替えられるようになってる。特にワンセグボタンが独立しているのが使い易く、また分かり易い。

左側面にはイヤホン端子のみ。WILLCOMロゴがさり気なく入っている

右側面には各種切替キー。設定により様々な機能を追加出来る

底面にはmicroUSB端子があり、充電もこの端子を兼用している。このmicroUSBにはUSBホスト機能が付いている為なのか、付属のACアダプターやPCとの接続時以外では充電が行えなかった。電池容量に若干不安のある本機だけに、外部バッテリーや市販のUSB接続型ACアダプターなどがそのままでは使用出来ないのは非常に残念だ。サードパーティから本機専用の充電用変換アダプターなども発売が予定されている為、ビジネスでフル活用したい人は購入を検討してみると良いだろう。

底面のスリットは本体スピーカー。本体スピーカーはモノラル出力となる

背面には2メガピクセルのオートフォーカスカメラと赤外線通信ポート、そしてmicroSDカードスロットがある。microSDカードスロットはSDHCには対応せず、使用出来る容量は2GBまでとなる。(保証対象外となるが、フリーウェアのSDHCドライバを導入する事により8GBまでの動作は確認済。)

背面は傷や指紋が目立ちにくいツヤ消し塗装がされている

バッテリーは従来のAdvanced/W-ZERO3 esのものよりも容量が小さく、3.7V 1150mAhとなっている。これはAdvanced/W-ZERO3 [es]用バッテリーの1540mAhと比べて約25%の低容量化ではあるが、本体の省電力化が進められた結果、実際の待ち受け時間などを15%程度の低下に留めている。

上面にはW-SIMスロットが配置されている。付属するW-SIMはRX420IN。通信感度は概ね良好で、特に電波状態の悪さやノイズなどは感じられなかった。Advanced/W-ZERO3 [es]の時に感じたカバー部分の開けづらさもなく、W-SIMの交換なども行い易かった。

本体が小さい分、W-SIMスロットが巨大に見える

ケータイ並に軽くて小さい! 新世代のスマートフォン!

Advanced/W-ZERO3 [es]は筐体サイズも大きく157gだった為に若干重く感じられたが、本機の重量は135g。今春に人気を博したドコモの端末「P905i」が136g、auの「W61S」が149gであった事を考えると、もはや一般的な携帯電話のハイエンド端末並みか、それ以下の重さであると言って良い。

筐体サイズも高さ116mm×横幅50mm×厚さ17.9mmと、これまでのスマートフォンのイメージを覆すコンパクトさである。ちなみにデザインやスライド機構が似ているソフトバンクのシャープ製携帯電話「921SH」は、高さ112mm×横幅50mm×厚さ15.9mmで重量が135g。

以下に各通信事業者の代表的な端末とのサイズ及び重量の比較を掲載する。

端末名 WILLCOM 03 P905i INFOBAR 2 921SH Advanced/W-ZERO3 [es] EMONSTER
メーカー シャープ パナソニック 三洋電機 シャープ シャープ HTC
キャリア ウィルコム NTTドコモ au ソフトバンクモバイル ウィルコム イー・モバイル
サイズ 116×50×17.9mm 106×49×18.5mm 138×47×15.5mm 112×50×15.9mm 135×50×17.9mm 112×59×19mm
重量 135g 136g 104g 135g 157g 190g

左から、P905i、WILLCOM 03、INFOBAR 2。スマートフォンである事を感じさせない大きさである

ただ、Advanced/W-ZERO3 [es]と厚さを比較した場合、同じ17.9mmにもかかわらず、WILLCOM 03の方が厚く見えた。これは筐体デザインが全体的にスクウェアである事に起因している。

Advanced/W-ZERO3 [es]のようにサイドへ向かって緩やかな傾斜が付いている場合、見た目にも触った感覚としても実際の厚みより薄く感じられる傾向がある。その点では若干損なデザインであり、液晶面をフルフラットにする為に犠牲となった部分であると言える。

本体が小型化した事で液晶画面が大きく見える

瞬時にキーが入れ替わる! 不思議なイルミネーションキー!

本機最大の特徴とも言えるのが液晶面下部に配されたイルミネーションキーである。前述した通り、イルミネーションキーは本体側面にあるイルミネーション切替/電源キーによって表示が瞬時に切り替わるようになっているが、これは液晶や有機ELなどではなく、単純にカラーフィルターとバックライトによって実現している機構である。

カーソルキーモード。通話キーやクリアキーなどもこちらに配置される

ダM@イヤルキーモード。一般的な携帯電話と使い勝手や配置は変わらない

イルミネーションキーは標準設定で操作時に小さくバイブレーションが作動するようになっており、キーを押した時の感覚を音と振動で擬似的に再現するようになっている。この仕組みによりフルフラットであるが故の操作の曖昧さをかなり軽減しており、思った以上に使い易い印象を受けた。

キーの長押しなどにも対応し、カーソルキーの長押しで高速スクロールが可能な他、ダイヤルキーモード時にマナーモードのON/OFF設定なども出来る。

ただしイルミネーションキーの反応は若干過敏なところもあり、軽く触れただけでも反応してしまう事がある。この点については設定を変更する方法などは無いようだったが、液晶保護フィルムを貼ると反応が若干弱くなり、軽く押した時だけ反応するようになった為、非常に使い易くなった。液晶面は指先やスタイラスなどで押したりこすったりする事が前提となるので、液晶保護フィルムを活用する方法は実用面からも有効的であると思われる。

メールなどのように文字入力が必要な場合には、液晶側にカーソルキーや通話キーなどがダイヤルキーと同時に表示されるようになる。これによって縦画面入力時の操作性の向上を図っている。

しかしこの時ケータイShoinの予測変換機能を使用していると、更に液晶画面の2/5ほどを予測文字が埋める事となり、実際に使える画面領域はかなり狭くなってしまう。この点については、もう少し改善の余地があったように感じた。

カーソルキーや予測変換で画面の約3/4が埋まる。場合によっては入力中の文字が読めなくなる事も

QWERTYキーボードの配列は、Advanced/W-ZERO3 [es]をほぼ踏襲したクセの少ない配列である。ファンクションキーやタブキーなどの列を他のキーから若干離して配置した事や本体の高さが短くなった事で、手の小さな人でも中央付近のキーを押し易くなった。これにより、手に持った際の使用感はAdvanced/W-ZERO3 [es]から大幅に向上している。

上がWILLCOM 03、下がAdvanced/W-ZERO3 [es]。本体サイズは小型化したが、各キーは殆ど小さくなっていない

スマートフォンを使い倒せ! 便利な機能満載のWILLCOM 03!

本機には、ウィルコムのスマートフォンとして初めてBluetoothが搭載された。これまでもAdvanced/W-ZERO3 [es]などでは周辺機器としてBluetooth機器がラインナップされた事はあったが、内蔵されたのは初めてである。仕様は標準規格Ver.2.0に準拠し、A2DP、AVRCP、DUN-DT、GAP、GOEP、HSP、HID、OPP、SDAP、SPPと、非常に幅広いプロファイルに対応する。

Bluetooth機器は複数接続にも対応し、Bluetoothヘッドホンで音楽を聴きながらBluetoothキーボードを使用するといった使い方も出来た。ただし音楽の場合は帯域を占有する為か、キーボードで文字を入力する時のみ音楽が途切れる現象が確認された。Bluetooth機器は相性に左右される事が多い為、一概に使用の可否を論じれないのが難点だ。

同じプロファイルでなければ、複数の機器を同時に使用出来る

試験したBluetooth機器は、モバイルキャストとロジテックのヘッドホン、及びリュウドのキーボードである。音楽に関しては音の寸断なども殆ど無く、非常にクリアな音質で再生され快適に聴く事が出来た。

逆に本体スピーカーの質などが若干悪い点や、本体からの有線出力ではサンプリング周波数が22KHzに変換されて出力される為に若干音質が落ちるという特徴があるので、むしろBluetooth接続による音楽鑑賞の方が適しているというのが本機の面白いところだ。もちろんハンズフリーでの使用も可能な為、Bluetoothでの音楽鑑賞は、筆者が強くお勧めしたい部分である。

ワンセグの搭載も、ウィルコム端末としては音声端末・スマートフォンを通して初めてとなる。ワンセグアンテナは本体側面にあり、使用時はホイップ部を伸ばして感度を上げられる他、スタンドのように後ろ側へ倒して本体を支える事も可能だ。

ワンセグは全画面表示にも対応。アンテナはホイップ式で伸ばせる

電波状況の良い場所なら、このように立て掛けて視聴する事も可能だ

ワンセグの受信感度は悪くは無い。しかし感度が良い事で知られるP905iと比べた場合、P905iでギリギリ受信出来るような場所では、受信出来ない事が多かった。映像の画質や音の明瞭さも問題ない為、実用性は十分にあると感じた。

若干残念だったのは、録画やデータ放送が出来ない事である。別売りの充電台を使えば個人用テレビとしても使える手軽さがあるだけに、対応していれば更に便利に使えたのではと感じた。本機のカメラはバーコードリーダ機能やコラムリーダ機能といった様々なアプリケーションに対応しているが、そちらのレビューについてはソフトウェア編にて解説する。

カメラについては、Advanced/W-ZERO3 [es]からの大きな変更点として画素数が約130万画素から約200万画素へUPした事と、オートフォーカスが付いた事が挙げられる。写真の画質は若干荒めだが、メモ撮り用としては実用範囲だと言える。むしろオートフォーカスが付いた事による撮影の手軽さや撮影ミスの軽減は大きなメリットと言えよう。

画質については、以下のテストショットをご覧頂きたい。撮影環境は午後1時~2時・晴れ(薄曇)。リンク先の画像は全てUXGA・高画質設定にて撮影し、トリミングのみ行った画像(右上の画像)以外は全てVGAへリサイズ、アンシャープマスク処理を行った後にJPEG 5%圧縮にて保存した。

撮影シーン『標準』。若干青被りしている

左の写真の中央部のみVGAサイズへトリミング。かなり強いシャープネスが掛けられている

撮影シーン『風景』。ホワイトバランスが若干改善された

接写モード・撮影シーン『標準』。光が強く白飛びしている

撮影シーン『風景』。薄曇の空の色も自然だ

この他、カメラを利用したアプリケーションとしてバーコードリーダや名刺リーダ、コラムリーダなどがある。名刺リーダやコラムリーダはカメラで撮影した文字をテキストデータに変換してくれる機能であり、非常に便利だ。特にコラムリーダはAdvanced/W-ZERO3 [es]には無い機能であり、本機を選ぶひとつのポイントにもなるだろう。

無線LAN性能はAdvanced/W-ZERO3 [es]とほぼ同じで、各ブラウザでの実効速度は約850kbps前後となった。実際の無線LAN性能よりもかなり低い数値になるのは、本機の処理性能限界によるものと思われる。CPUなどの構成がAdvanced/W-ZERO3 [es]から変更がない事を考えると、妥当な数値であろう。それでもPHS回線を用いるよりも実測値で5倍以上は高速である為、いざという時のブラウジングや大量のデータ送受信には威力を発揮するだろう。

以上、早足ではあるが本機のデザイン及び機能について解説してみた。本機の最大の魅力はその携帯性とデザインであり、現在主流の他社携帯電話と並べても全く引けを取らないのが、これまでの無骨で扱いづらいというイメージのスマートフォンとの大きな違いである。

操作性についても独自のホームメニューの採用などで非常に使い易くなっており、Windows Mobile機独特の難解な操作性を上手くカバーしている。この点については29a氏による『ソフトウェア編』にて詳しく解説したい。

(あるかでぃあ/K-MAX)