木達: 自身の著書『Microformats: Empowering Your Markup for Web 2.0』について、簡単に紹介して欲しい。
Allsopp: マイクロフォーマットは普及してきたが、なぜそれが必要か、どう機能するのか、仕様の詳細や導入事例といった情報を一元化したものが無かった。初心者にとって、一カ所で事足りる情報源としてとりまとめたのが、この本だ。
木達: 売れ行きは良いのだろうか?
Allsopp: 出版社は教えてくれないんだ(苦笑)。少なくとも第一刷は完売したから、第二刷が販売されているのは確かだ。一時はAmazonのトップ10000にランクインしたから、既に数千部は売れたのではないか。新技術に特化した内容の割には売れたほうらしく、出版社も喜んでいる。
木達: 第二版は出版されるのか?
Allsopp: まだわからないし、その準備に取りかかってすらいない。microformatiqueの更新を続けているのは、最新情報を追いかけ続けるためだが、それは第二版をつくる際に役立つことだろう。
木達: 今回、日本語訳『マイクロフォーマット ~Webページをより便利にする最新マークアップテクニック~』が出版されるわけだが、日本語以外にも翻訳されているのだろうか?
Allsopp: やはり出版社は著者に多くを語らないようで、詳しくは知らない。とにかく、英語以外での出版は日本語が初めてだ。ほかに少なくともあと1~2言語で翻訳されているように聞いている……フランス語と、あともう一つは分からない。
木達: 日本語翻訳版の読者へのメッセージを。
Allsopp: マイクロフォーマットがもたらす利点の一つは、Webサイトをユニバーサルなコミュニケーションメディアにすることだと考えている。具体的には、記述に用いる言語にかかわらず、同じ属性の情報を提供しやすくなる、ということ。これはまさに、Webサイトをよりユニバーサルな存在にすることでもある。たとえば、コンテンツが日本語で書かれたWebページでマイクロフォーマットを実装することにより、日本語を理解できないユーザーでも、所在地や連絡先といった重要な情報を取り出すことができる。より多くの人がマイクロフォーマットを使うようになれば、ユニバーサル性や国際化の価値は一層高まる。これは非常に難しい挑戦ではあるが、日本からより大勢の人々マイクロフォーマットに取り組むことで、数多くのテストや実装を経て、国際化などにおける問題が解消することを期待している。
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筆者とAllsopp氏との主要な対談内容は以上だ。質疑応答で会場から寄せられた質問のなかでは、IE8のWebSlicesについてのものが個人的には興味深かった。それは、「仮にWebSlicesが普及すると、マイクロフォーマットと共にダブルスタンダードになる懸念があるのでは? 」との問いかけである。Allsopp氏曰く、「特にそのような心配はしていない」という。マイクロフォーマットはW3CやISOの策定する標準とは異なる位置づけのものだし、もしWebSlicesが普及したなら、それはそれで歓迎するとのこと。どちらのフォーマットが成功を収めるかより、ブラウザにとっての進化、イノベーションが重要との指摘は、マイクロフォーマット、ひいてはWebの未来に対する氏の期待をも反映しているように聞こえ、たいへん印象的であった。