一般的なクリーナーは、空気とごみを一緒に吸い込んで、理想的には空気だけを排出する。この、空気とごみを分離するための機構で、現在よく使用されているのが、サイクロン式と紙パック式だ。

代表的なサイクロン式クリーナー、ダイソン「DC22ddm motorhead」

「GP-200FS」を採用する日立製作所の紙パック式クリーナー「CV-PL800」

両者には、それぞれメリットとデメリットが存在する。まず、サイクロン式は紙パック式に比べると、紙パックを使用しない分、ランニングコストが低いというメリットを持っている。経済面だけでなく、環境面でも有利ということになる。さらに、サイクロン式には、溜まったゴミの中を空気が通過しないという構造的なメリットがあるため、ダストカップにゴミが溜まっても、吸引力が低下しないというメリットがある。紙パック式の場合、ごみが溜まるにつれて、空気抵抗が増え、吸引力が低下するのが一般的だ。さらに、紙パック自体の目詰まりも吸引力の低下につながる。ただし、最近の紙パック式クリーナーでは、紙パックの背面だけでなく、上面などにも空気を出すための流路が設けられているものもある。これらのモデルでは、紙パックにゴミが溜まった状態でも、それほど、吸引力が低下しない。さらに、紙パックについた細かな塵を落とすための機構を備えているものも少なくない。

一方、紙パック式のメリットとなるのが、ゴミ捨て時の埃の舞い上がりを抑えることができるという点だ。ごみをそのまま捨てるサイクロン式に比べて、この点は有利といえるだろう。また、交換時にふた部分のシャッターが自動的に閉まる紙パックを採用しているミーレジャパンののクリーナーや、接続部分にシールがついていて、取り外すと自動的に密閉される日立製作所の「GP-200FS」「GP-130FS」といた紙パックも登場している。ただし、サイクロン式でも、フィルター前にティッシュを装着できるモデルでは、ごみの舞い上がりは比較的抑えられる。

また、一般的にサイクロン式のクリーナーは、集塵容量が少なく、ごみを捨てる回数が紙パック式よりも多くなる。ダイソンのキャニスタータイプ「DC12」「DC22」で0.7L。一方、紙パック式の場合、1.5L前後の集塵容量を持つものが多い。ただし、これは手間ではあるが、清潔面からすればデメリットと言い切るわけにはいかないだろう。

サイクロン式は、吸い込んだ空気とごみを遠心分離するという構造だ。ダイソンが開発した方式であり、同社が使用する方式は、それ自体が特許技術となっている。同社によると、一般にサイクロン式と呼ばれているクリーナーでも、実際には回転力が不足していて十分に空気とごみとを遠心分離できない機種が多いという。また、国産のサイクロン式のクリーナーでは、サイクロン機構の前にもフィルターが設けられるケースが多い。これが目詰まりを起こすと、やはり吸引力が低下する。それに対して、ダイソンのクリーナーではプレモーターフィルターは、あくまでもモーターを保護するためのもので、空気とごみの分離は、そのほとんどがサイクロン部分で行われるという。

ただし、最近のミドルクラス以上の国産サイクロン式クリーナーでは、フィルターの自動クリーニング機構を搭載した製品も少なくない。これらの製品では、10~15年間(この期間は、単純にそれだけの間フィルターをクリーニングしなくても性能を持続できるというものではなく、クリーナーの製品寿命がそのぐらいだからということらしい。つまり、必ずしも、15年間メンテナンスフリーとされている製品のほうが、10年間メンテナンスフリーとされている機種よりも高性能というわけではないようだ)、フィルターのメンテナンスフリーをうたっている製品もある。

一方、紙パック式は、一種のフィルターでもある紙パックによって、空気とごみとを分離する構造だ。ただし、紙パック式のクリーナーでも、紙パックだけで、完全には空気とごみとを分離することはできないため、プレモーターフィルターと排気フィルターが装備される。

ダイソンのサイクロン方式と、国産サイクロンクリーナーの採用している方式、そして紙パック方式のどれが優れているのかは、筆者の判断するところではない。各メーカー、あるいは第3者期間による検証などが発表されているケースもあるが、それぞれの発表している数値には、かなり隔たりがあり、それを追試することは、個人ではさすがに困難だ。