宇宙空間から突如飛来した隕石が札幌に落下。中から怪獣が現われ町を破壊し始めた!

……こんな唐突なオープニングで始まる怪獣映画が『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』だ。ギララですよギララ! そんな怪獣、オタク方面でも知っている人少ないんじゃないかと思うのでちょっと説明。

ギララの初登場は約40年前の1967年。当時は怪獣ブームで、テレビではちょうど『ウルトラセブン』が本放送されたころだ。そして怪獣映画といえば東宝の『ゴジラ』シリーズ、大映の「ガメラ」シリーズで決まりだった。これを指をくわえて見ていられなかったのが残る邦画2社=日活と松竹だ。相次いで怪獣映画に参戦し、日活は『大巨獣ガッパ』、そして松竹が作ったのが『宇宙大怪獣ギララ』だった。ぶっ飛んだ怪獣デザインに凝ったSF設定、けっこうがんばった特撮、そして松竹らしくエンディングテーマを倍賞千恵子が歌ったりと、いろいろ盛り込んだ意欲作だったけど、何しろ相手はゴジラとガメラ、結果は皆さんご存じの通り、「ギララ」は見事にマイナー作品となってしまった。

このいい具合なチープっぷりがたまらんのです

ギララ40年ぶりの復活を企てたのは監督/脚本の河崎実。最近では『日本以外全部沈没』、『ヅラ刑事』なんかで知られるバカ映画一筋な人だが、雑誌や本ではアイドル、特撮、怪獣への愛ある発言多数の「骨の髄からのオタク」でもある。そんな監督が満を持して作った怪獣映画がこの『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』というわけ。もちろん基本はバカ映画なんだけど、ギララが暴れるシーンなんかは思ったよりちゃんと撮ってるし、何より怪獣特撮ファンなら思わずニヤリとするネタが山ほど仕込んである。オイラなんか、最初から最後までニヤニヤしっぱなしだったよ。

出演者もある意味豪華だ。主役の新聞記者役は加藤夏希。怪獣映画は初だけど、特撮モノへの出演経験は豊富で、バカ演技にもイヤな顔せずつきあってくれてるんじゃないかな。その相棒のカメラマン役には仮面ライダーシリーズで特撮経験者の加藤和樹。ギララに立ち向かう地球防衛軍極東支部の首脳陣を、東宝系の怪獣映画に多数出演の夏木陽介、ご存じウルトラマンのハヤタ=黒部進、そしてウルトラマンの"中の人"だった古谷敏(ウルトラセブンのアマギ隊員のほうが有名か?)が演じている。さらにオリジナル「宇宙大怪獣ギララ」で主役を演じた和崎俊也(オイラ的には「ミラーマン」の隊長だ)も顔を揃え、イイ味出してる。

加藤夏希に加藤和樹。美男美女の加藤コンビがおバカ映画にノリノリで出演してるっていうのもなんだかほっこりするなァ

ここまでが比較的"マジメチーム"で、残りはお笑い担当だ。ギララが出現した札幌のそばで開催されている洞爺湖サミットがそのまま怪獣対策本部になり、そこから間抜け作戦が次々と指令されるのだが、サミットの日本代表がなぜか福田ではなく安倍首相……劇中では"イベ"首相で、すぐトイレ駆け込む下のユルイお方。この頼りない首相をサポートするのが元首相の小泉……じゃなくて大泉純三郎。演じるは首相ネタのコントでおなじみ「ザ・ニュースペーパー」の面々。劇中でもいつもどおりのネタをやってくれてる。

いかにも頼れそうにない伊部三蔵首相(福本ヒデ)

とりあえず胡散臭い大泉純三郎元首相(松下アキラ)

あれ? たしか福田首相の人もいたはず…と思ってたら、全然違う役で出てた(笑)。ほかのG8首脳を演じる外タレの皆さんも似たようなもんで、とくにフランスの"ソルコジ"大統領のエロオヤジぶりが笑える。こんな扱いしていいのかね?

G8の面々。とりあえずみんな、スーツが安っぽいぜ! 奥から3人目のソルコジにつく通訳を森下悠里が演じているのだが、なんと●●●シーンがあるとかないとかゲフンゲフン

そして忘れちゃいけないのが、ひと言出演ながらこの映画が最後の出演となってしまった水野晴郎先生。最後が「ギララ」で良かった!?

懐かしや水野先生……。「シベ超」トレーナー着てるとか、もうどんだけサービス精神旺盛なの…(涙)

キャスト紹介だけでレビューが終わりそうなので、とりあえずストーリーは置いといて(笑)、さっきも書いたけど、この映画のポイントは、おもに60年代怪獣モノのお約束を押さえたところ。まずこの手の怪獣映画につきものなのが、夢でうなされそうな歌声に乗って繰り広げられる原住民の踊りだ。この映画ではギララに対抗する「タケ魔神」を呼び出す村の儀式として登場する。「加藤夏希にコマネチポーズさせたいだけとちゃうんかい!」というツッコミはさておき、加藤夏希もこの踊りに積極参加している。映画全体のBGMも「怪獣総進撃マーチ」をベースにウルトラマン風味を加えたようなサウンドで、なつかし度倍増です。

それから、怪獣出現の一報がサミット会場に入り、会場が怪獣対策本部になるシーンで、いきなり小学生が現れ「あの怪獣はギララだ」と叫んでつまみ出されるシーンには笑った。そうそう、怪獣の名前は唐突に子供がつけるもんだ。このほか、黒部進が全軍に指令を出すときに、おもむろに懐から取り出したマイクはどこかの変身アイテムそっくりだったり、後半登場する某国のミサイル発射シーケンスのコールが「4th gate open」だったり、さりげなくオリジナルギララの主役メカ「AABガンマー号」が登場したりと、小ネタ探しに一瞬たりとも気が抜けないよー! あ、意味わからない人はスルーしてください。オタクの独り言です。

地球防衛軍のお三方。左から高峰参謀(古谷敏)、鳴海長官(夏木陽介)、木村参謀(黒部進)

念のため言っておくと、小ネタは怪獣関係だけじゃない。強烈すぎる政治風刺やパロディも山盛りで、怪獣に詳しくない人も十分笑えます。もうあちこちでバレているの書いてしまうけど、最後は村人の祈りにより「タケ魔神」が降臨し、ギララと死闘を演じる。この「タケ魔神」のモチーフはもちろんビートたけし。さすがに本人は着ぐるみの中に入ってないようだが、声はタケちゃんマンだった。この魔神のデザインも強烈で、背中にしょってるのが雨傘と消火器(笑)。これヤバすぎじゃないの?!

このギララと戦うタケ魔神のあまりといえばあまりのヤバさは劇場で思うさま体感してくれい

『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』は7月26日ロードショー

(C)2008 ギララ製作委員会