直近のIDCやGartnerといった調査会社のデータを見る限り、PC市場シェアで快進撃を続ける米Appleだが、そのアキレス腱ともいえる存在の今後が、投資家やアナリストらの間で話題になっている。

既報の通り、米Appleは21日に同社会計年度で2008年第3四半期(4-6月期)決算を発表。その結果は純利益ベースで前年同期比約31%増と大幅アップで、主力製品のMac出荷台数は同四半期に250万台目前と、こうした外部の結果を裏付ける好調なものとなっている。

だが一方で、利益率の指標となるグロスマージンは1年前の36.9%から34.8%と減少しており、さらに来年度は30%近くに落ち込むことが予想されると同社では報告している。新製品開発に伴うコスト高が原因と同社はコメントしているが、同時に競争激化や経済情勢の悪化を受ける可能性も憂慮し、21日の時間外取引で同社株価は一挙に10%超の大幅下落となる水準まで売り込まれた。

21日の決算発表における報道陣やアナリストらとの電話会議では、前述のグロスマージン問題のほか、来四半期以降に登場するという新製品の話題に質問が集中した。新製品の話題について同社からの直接的な言及はなかったものの、「競争を勝ち抜くための強力な製品の準備を進めており、今後の製品計画は確固たるものだ」とのコメントを残しており、しばらくメジャーアップデートの止まっていたMac関連新製品の間もなくの登場が近いことをほのめかせている。

またこうしたグロスマージンや新製品に話題が集中する一方で、ある質問者が興味深い質問を持ち出した――「プライベートな質問で恐縮だが、最近ニューヨーク界隈を賑わせている話題で、(米Apple CEOの)Steve Jobs氏の健康問題が持ち上がっている。これについてAppleとしてのコメントは?」というものだ。記者のこの質問について、Apple側は「プライベートな問題なので答えられない」と回答を断った。何気ないやり取りだが、これこそが多くの人々が最も関心を寄せる話題なのかもしれない。

記者の質問にもあるように、最近ニューヨークの金融街ではJobs氏の健康問題についての噂がよく持ち上がっている。2004年には癌で手術を受けたJobs氏だが、後に復帰し、現在では通常業務に戻っている。一方で体力の衰弱や癌の再発を懸念する声も依然高く、MacWorldやWWDCなど、公の場に顔を出した際には毎回といっていいほど健康に関する話題が持ち上がるほど。10年前には現在の20分の1近い株価で低迷し、何度か身売り説も飛び出したAppleだが、iTunes、iPod、Intel Mac、iPhoneと数々のヒット商品を世に送り出し、奇跡の復活を果たしたのは、1997年にAppleへと復帰したJobs氏のリーダーシップに依る部分が大きいと考えられている。それだけに、Jobs氏が同社を去った後の業績や株価の行方を投資家やアナリストらが気にするのは当然だろう。

先ほどの質問は、今週になりNew York Postが報じた「Jobs氏の健康状態があまり良くない」という関係者の声を紹介した記事に端を発するもの。Appleは製品計画の達成だけではなく、Jobs氏の健康問題というアキレス腱も抱えている。業績と株価維持において、Jobs氏脱却を進められるかがAppleにとって最大の試練となりそうだ。